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大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)1196号 判決 1968年5月24日

昭和四一年(ネ)一二〇六号事件控訴人

(以下単に第一審原告という)

松田健治

松田登貴美

昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件控訴人

昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件被控訴人

(以下単に第一審原告という)

松田一二

みぎ第一審原告ら訴訟代理人

岩橋清

昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件控訴人

昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件被控訴人

(以下単に第一審被告という)

崎山元三郎

みぎ第一審被告訴訟代理人

丸山郁三

主文

一、昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件について

第一審被告の控訴を棄却する。

二、昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件について

(一)原判決を次のとおり変更する。

第一審原告松田登貴美の第一審被告に対する昭和三三年四月一四日付第一審抵当権設定金銭借用契約に基づく金額金六〇万円、弁済期同年五月一四日、利息年一割八分支払期間中一括後払、遅延損害金日歩金九銭八厘六毛の債務、および第一審原告松田健治の第一審被告に対するみぎ債務についての保証債務は、元金四五万五、〇六四円および金五〇万円に対する利息と損害金の限度で存在しないことを確認する。

(二)第一審原告らのその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は第一、二審を通じて六分し、その四を第一審原告松田健治同松田登貴美の、その一を同松田一二の、その一を第一審被告の各負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件について。

一、第一審原告ら代理人

(一)原判決中第一審原告ら敗訴部分を取り消す。

(二)第一審被告は第一審原告松田健治に対し原判決添付第一目録記載の土地(以下第一物件と略称)について、(イ)大阪法務局北出張所昭和三三年八月七日受付第一七、五〇〇号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ロ)同出張所同日受付第一七、五〇一号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ハ)同出張所同年一一月二八日受付第二六、九三七号でされた所有権移転登記手続をせよ。

(三)第一審原告松田健治が、第一審被告に対し、左記(四)の第一審原告松田登貴美の債務についての保証債務を負担していないことを確認する。

(四)第一審原告松田登貴美が、第一審被告に対し、昭和三三年四月一四日第一番抵当権設定金銭借用契約に基づく金六〇万円、弁済期日同年五月一四日、利息年一割八分、支払期間中一括後払、遅延損害金日歩金九銭八厘六毛という債務のうち元金三一万一、四四二円六〇銭およびこれに対する利息損害金の限度で存在しないことを確認する。

(五)第一審被告は第一審原告松田登貴美に対し、原判決添付第三目録記載の建物(以下第三物件と略称)について(ワ)同出張所昭和三三年五月二日受付第九、二三一号でされた抵当権設定登記(カ)同出張所同日受付第九、二三二号でされた所有権移転請求権保全仮登記の各抹消登記手続をせよ。

(六)第一審被告の第一審原告松田一二に対する原判決添付第四目録記載の建物の収去を求める請求を棄却する。

(七)訴訟費有は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

(予備請求の趣旨)

第一審原告松田健治の予備的請求の趣旨

第一審被告は、同第一審原告に対し、第一物件について、(イ)大阪法務局北出張所昭和三三年八月七日受付第一七、五〇〇号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ロ)同出張所同日受付第一七、五〇一号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ハ)同出張所同年一一月二八日受付第二六、九三七号でされた所有権移転登記(ニ)同出張所昭和三一年九月一八日受付第一九、一二〇号でされた抵当権設定登記(ホ)同出張所同日受付第一九、一二二号でされた停止条件付賃借権設定請求権保全仮登記の各抹消登記手続をせよ。

二、第一審被告代理人

(一)第一審原告らの控訴を棄却する。

(二)控訴費用は控訴人の負担とする。昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件について。

一、第一審被告代理人

(一)原判決中第一審被告敗訴部分を取り消す。

(二)第一審原告松田一二の請求を棄却する。

(三)訴訟費用は第一、二審とも第一審原告松田一二の負担とする。

二、第一審原告松田一二代理人

(一)第一審被告の控訴を棄却する。

(二)控訴費用は第一審被告の負担とする。

第二、当事者の事実上の主張、証拠の提出、援用、認容。

次に記載するほかは、原判決の事実適示と同一であるから、ここに引用する。

(事実関係)

一、第一審原告ら代理人

(一)甲第四号証(鑑定書)によると、第一物件の昭和三一年当時の更地価格は金五七八万八、〇〇〇円であるが、地上に建物があるからその半額である金二八九万四、〇〇〇円がその時価であるとしているが、第一物件上にある第一審原告松田一二所有の原判決添付第二目録記載の建物(以下第二物件と略称)と第一審原告松田登貴美所有の第三物件は、いずれも第一物件上に事実上建在するものにすぎず、その所有者である第一審原告松田健治からの賃借地上に建在するものではない。したがつて、第一物件の取得者(第一審被告)は、第一物件を容易に更地にできるわけで、このような場合には、第一物件の時価は更地価格によるべく、適法な借地権のあることを考慮してこれを半額に評価する場合に当らない。

この更地価格を基準に昭和三一年九月当時及び昭和三三年八月当時の本件の金六〇万円、金九〇万円あるいは金一五〇万円の元本と対比したとき、原判決八枚目表掲記の一覧表どおりとなり、第一審被告のした代物弁済予約は暴利行為であるといわなければならない。

(二)第一審原告松田健治が、第一審被告からの本件二口の借金のため第一物件について、代物弁済の予約をしたが、これは窮迫浅慮無経験によるものである。第一審原告松田健治は、ただ金融を受けるには担保が必要であることは判つていたが、代物弁済予約の意味を理解せず、債権者のいうままに登記に必要な書類に押印したもので、本件より以前である昭和二七年に訴外株式会社近畿相互銀行から金二〇〇万円の金融を受けたとき、第一物件に代物弁済予約の仮登記手続をしたが、そのときもそうであつた。本件でも、第一審原告松田健治は、経済的に行きづまり、これから逃れるため、浅慮にも第一物件に代物弁済予約を締結したものである。

(三)第三件について第一審被告のため抵当権設定代物弁済予約が締結されているが、これは、第一審原告松田登貴美の不知の間に、第一審原告松田健治が印鑑を冒用してしたもので、第一審原告松田登貴美が同松田健治に代理権を与えた事実は全然ない。これに使用された印鑑も、第一審原告松田健治が勝手に作成してこれを区役所に届出でたもので、この印鑑を利用し、第一審原告松田健治は、以前にもみぎ相互銀行や訴外田中義郎から金借し、これを担保するために第三物件に抵当権設定登記や代物弁済予約の仮登記をしたのであつて、みぎ相互銀行や田中義郎に対し、みぎのような登記がなされていることからして、本件でも、第一審原告松田登貴美がこれを承知し第一審原告松田健治に代理権を与えたものといえないことは明らかである。

本件即日和解に、第一審原告松田登貴美の代理人として、弁護士田中貞蔵が出頭して和解をしたことになつているが、第一審原告松田登貴美が同人にそのような代理権を与えたことはない。

(四)第一審原告松田健治は、訴外大柴某から金三五〇万円を借りたうえ、昭和三三年一〇月八日ごろ、第一審被告方を訪れ、約束の金二五八万円を受領するよう懇願したが、第一審被告はこれを拒んだ。そこで、同第一審原告は同年一〇月二四日金一一万五、〇〇〇円を支払つて、買戻金支払期日を、同年一二年一五日まで猶予して貰つた。同第一審原告は、訴外渕上正治から同年一一月一〇日再び金三五〇万円の融通を受け、おそくとも同月一五日ごろまでに、第一審被告方を訪れ、支払いの準備ができたから大阪市北区神明町三の司法書士中井敏夫方で支払うから受領するよう懇請したが、第一審被告はこの受領を拒絶した。同第一審原告は、仕方なく渕上正治にみぎ借受金を返したが、同月二〇日ごろ、もう一度同人から同額の金員を借り受け、第一審被告に、その受領を促したが拒絶された。そこで、同第一審原告は、そのころ、渕上正治にみぎ借受金を返済したうえ、このように渕上正治から金借して準備したことの証拠を残すため渕上正治との間で作成された不動産買戻条件付売買契約書(甲第二号証)に確定日付(同月二七日付)をえたものである。このように同第一審原告は、猶予期間内に金二五八万円を第一審被告に支払うべく履行の提供をしたが、第一審被告は、これを受領拒絶したもので、第一審被告にこの責があるといわなければならない。

(五)第一審原告松田登貴美の仮定的抗弁

第一審被告の第一物件第二物件に対する代物弁済予約完結の意思表示が有効であるとするなら、これによつて、第一審原告松田登貴美の金六〇万円の債務のうち金五〇万円の債務は、本件の六〇万円の貸金の利息を準消費貸借にしたものであるから、この金五〇万円は、消滅したわけである。もつとも、第一審被告は、第一物件第二物件の引渡しまで必要であると主張しているが、代物弁済予約完結の意思表示があり、その旨の登記手続をすませれば、それによつて、債務は終局的に消滅すると解すべきである。第一物件について、昭和三三年一一月二八日第二物件について、昭和三四年一月七日それぞれ第一審被告のため所有権移転登記手続をへている。

二、第一審被告代理人

(一)原判決添付別紙一の一の最終欄中「期間三三年五月一四日から三三年六月一五日まで(一ケ月と二日)第一審原告松田健治が支払つた利息損害金(月五分)三二、〇〇〇円」の金額と同別表二の一の最終欄中「期間三三年五月一四日から三三年六月一五日まで(一ケ月と二日)同第一審原告が支払つた利息損害金(月五分)四八、〇〇〇円」の金額は、第一審被告としては、金一万円しか受け取つていないから争う。第一審被告は、昭和三三年七月一四日、本件の六〇万円の貸金の昭和三三年五月一六日から同年六月一五日までの損害金三万円、本件の九〇万円の貸金のみぎ期間の損害金四万五、〇〇〇円第一審原告松田健治に対する別途貸金一〇万円(第一審原告松田登貴美が引き受けた貸金以外の分)の貸金の同期間の損害金五、〇〇〇円合計金八万円の一部としてみぎ金一万円を受け取つた。

(二)(1) 第一審原告松田一二は、第一審原告松田健治の本件六〇万円と九〇万円の債務の連帯債務者となつたものはなく、第一審原告両名が本件六〇万円と九〇万円の債務の連帯債務者である。第一審原告松田一二のこの債務について、第二物件に代物弁済予約を締結することは、親子間に利益相反とはならないし、第一審原告松田健治の債務のため、同松田一二の第二物件が代物弁済に供されることを理由に、第二物件に代物弁済予約をすることを目して親子間の利益相反行為であるとするのは間違いである。第一審原告松田一二の債務が代物弁済によつて消滅すれば、第一審原告松田健治の債務も消滅することは当然のことであつて、この場合第一審原告松田一二の代物弁済が、同松田健治の債務の代物弁済となつたわけではないし、同松田健治の債務が履行された場合、同松田一二の債務も消滅し、代物弁済の問題は生じないのは勿論のこと、松田健治の債務が不履行の場合、松田一二の債務が履行されれば、代物弁済の問題は生じない。同松田一二の債務が不履行であつても、同松田健治の債務が履行されれば、この場合も代物弁済の問題は生じない。とすると、同松田健治と同松田一二の利害が相反することはありえない。

(2) 本件即決和解で、もし訴訟上の和解として無効であつても私法上の和解として有効で、みぎ第一審原告らは、第一、第二の各物件が第一審被告により代物弁済によつて取得されたことを確認しているのであるから、第一審原告松田一二に特別代理人を必要としない場合に当る。

(3) 大阪家庭裁判所は、昭和三一年一二月一三日第一審原告松田健治が第一審被告から金一五〇万円を借り入れるについて、第一審原告松田一二所有の第二物件に抵当権を設定するため訴外林義久を特別代理人に選任した。そしで、林義久が、本件の九〇万円の貸金について、第一審原告松田一二の代理人として第一審被告と契約したが、同林義久は本件の六〇万円の貸金についても、第二物件に抵当権を設定する代理権があるわけで、この家庭裁判所の特別代理人選任許可によつて、親子利益相反行為による瑕疵は治療された。

(4) 第一審原告松田健治同松田登貴美同松田一二と第一審被告間に即決和解および私法上の和解が成立した以上、民法六九六条の適用によつて、同第一審原告らは、和解当時の本件債権額や、代物弁済予約の目的物件の所有権が第一審被告に帰属したことを争うことはできない。

(三)第一審被告は、昭和三三年八月一日到達した書面で、第一審原告松田登貴美に対し第三物件について代物弁済予約完結の意思表示をした。第一審被告は、これにより第三物件の所有権を取得したと思つたが、第一審被告に優先する先順位権利者が所有権を取得したため、みぎ代物弁済予約完結の意思表示は無効に帰し、結局第一審被告は、第一審原告松田登貴美に対し昭和三三年四月一四日付第一番抵当権設定金銭借用契約に基づく元金六〇万円の債権がそのまま存在している。

もつとも、元金六〇万円のうち金五〇万円は、本件六〇万円と九〇万円の貸金の利息(昭和三二年九月二五日から昭和三三年四月一三日までの月五分の利息)を第一審原告松田登貴美の債務にしたものである。本件六〇万円と九〇万円の貸金について、第一物件について代物弁済の予約がなされていたところ、第一審被告は、昭和三三年八月一日第一審原告らに到達した書面で代物弁済予約完結の意思表示をし、第一物件と第二物件について本件六〇万円と九〇万円の貸金の担保のためされた請求権保全仮登記の本登記手続をすませた。したがつて、みぎ代物弁済予約完結の意思表示が有効なかぎり、第一審原告松田登貴美の債務も、これによつて消滅したとするのが妥当であろう。しかし、第一審被告は、代物弁済によつて、債務が消滅する時期は、みぎのような登記があるだけでは足らず、第一物件と第二物件の引渡しまで必要であると考える。

したがつて、第一審原告松田健治同松田一二が、第一物件と第二物件を引き渡したとき、同松田登貴美の債務のうち金五〇万円は、みぎ代物弁済によつて消滅するわけである。しかし、第一審原告松田健治と同松田一二は、その引渡しを拒否している。

(四)本件の六〇万円と九〇万円の貸金について前記代物弁済の予約と、そのための仮登記手続がとられたが、この予約は、債務者が弁済期日までに元利金の支払いをしなかつたときは、第一審被告の方で、一方的に元利金の弁済に代え、これらの物件を代物弁済として取得できる完結権のあるものであつた。

(訂正)<省略>

(証拠関係)<省略>

理由

(本訴の主たる請求について)

一、第一審原告松田健治の抹消登記手続請求について、

(一)  第一審被告は申立人を同被告とし、相手方を第一審原告ら三名として、昭和三三年九月一六日、大阪簡易裁判所で、同被告が同年八月九日代物弁済により第一ないし第三物件の所有を取得したことを確認する旨の和解が成立したことにより、第一審原告松田健治は、本件代物弁済の効力を争うことはできないと主張するので、まずこの点について判断する。

(1) 第一物件がもと第一審原告松田健治、第二物件がもと第一審原告松田一二の各所有であつたこと、第一物件に(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)、第二物件に(ト)(チ)(リ)(ヌ)(ル)(ヲ)の各登記があること、および、第一審被告主張の和解が当事者間に成立したことは争いがない。

(2) 第一審原告松田健治は、みぎ和解をするについて要素の錯誤があつたから、和解は無効であると主張するけれども、みぎ主張にそう原審における同原告本人尋問の結果(第一回)はたやすく借信し難く、却つて争いのない乙第二八号証によれば、みぎ和解の際、係裁判官から和解条項の読聞けをうけ、同原告はこれに異議のなかつたことが認められるし、また成立に争いがない乙第二四号証および弁論の全趣旨によると、代物弁済の効力が争いの対象となりこれについて和解の成立したことが認められるので、同原告に錯誤があつたとしてみぎ和解を無効とすることはできない。

(二)  つぎに、同原告は、本件代物弁済の予約およびみぎ予約完結の意思表示は、いずれも公序良俗に反し無効であるからみぎ和解も無効であり、代物弁済の効力を争いうるものであると主張するのでこの点について判断する。

(1) みぎ代物弁済予約および代物弁済成立の経緯はつぎのとおりである。

第一審被告が同原告との間で、同被告を貸主として(イ)昭和三一年九月一七日元金六〇万円、弁済期同年一二月一六日、利息、損害金ともに月五分とする消費貸借契約、(ロ)同年一二月二二日元金九〇万円、弁済期昭和三二年二月一五日、利息、損害金ともにみぎと同率とする消費貸借契約を締結したことは当事者間に争いがない。

<証拠>を総合すると、第一審被告は、昭和三一年九月一七日、扇屋の商号で金融業を営んでいた訴外辻本久太郎の仲介により、第一審原告松田健治に対し、同松田一二を連帯債務者として、金六〇万円を弁済期同年一二月一六日、利息月五分、利息支払期毎月末日、遅延損害金月五分の約定で貸与し、その際、利息の前払いとして金三万円を天引きし、第一、第二物件について抵当権設定契約、みぎ債務の不履行を停止条件とする賃貸借設定契約を締結しその旨の登記手続をとることを司法書士に依頼したところ、第一物件に対する所有権移転請求権保全仮登記の登記原因を代物弁済予約とすべきところを、司法書士の過誤によつて売買予約としてみぎ仮登記を経由したほかは、みぎ契約どおり(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(ル)の各登記を経由し、続いて昭和三一年一二月二二日、第一審原告松田健治に対し、同松田一二を連帯債務者としたうえ、金九〇万円を弁済期昭和三二年二月一五日としたほかは、前記貸金と同一内容の約定のもとに貸与し、その際、利息の前払いとして金四万五、〇〇〇円を天引きし、第一、第二物件について抵当権設定契約、代物弁済の予約を締結し、(ヘ)(ヲ)(リ)(ヌ)の各登記を経由したこと、爾来、第一審原告松田健治は、月五分の割合により昭和三三年五月一三日までの間に、金六〇万円口に対し金三九万八、〇〇〇円、金九〇万円口に対し金四五万六、〇〇〇円、同年六月一五日までに両口に対し金一万円の利息、損害金を支払つてきたが、同六月一六日以降は元金の弁済は勿論遅延損害金の支払いも滞らせていたこと、第一審被告は、第一物件に対する所有権移転請求権保全仮登記の登記原因について前記の誤りを発見し、第一審原告松田健治に対し登記原因を代物弁済予約とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由することについての了解を得、同登記手続をするのに必要な一切の書類の交付を受け、昭和三三年八月七日の登記をすると共に、さきに手続の過誤によつてされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続を併せてしたことが認められ、<中略>。そして第一審被告が第一審原告松田健治および同松田一二の親権者としての第一審原告松田健治、同松田登貴美に対し、昭和三三年七月三一日付翌八月一日到達の内容証明郵便によつて、郵便到達の日から七日以内に第一審原告松田健治および同松田一二が第一審被告に負担する貸金債務およびこれに対する利息、損害金の支払いをすることを求め、みぎ期間内に支払いのないことを停止条件として、みぎ第一審原告ら所有の第一、第二物件に対して代物弁済予約完結の意思表示をしたが、みぎ支払いをしなかつたことは当事者間に争いがない。

(2) そこでみぎ代物弁済予約の効力について検討する。

<証拠>によると、第一物件の昭和三一年九月ごろの価額の鑑定をした訴外下湯北木之助は、更地の場合は金五七八万八、〇〇〇円(坪八万円)、建物のある場合はその五〇%としており、また<証拠>によると、同様の鑑定をした訴外近藤威は、更地の場合は金四六三万〇、四〇〇円(坪六万四〇〇〇円)、適法な借地権に基づく建物のある場合はその五〇%としていること、当時第一物件上には、第一審原告松田一二所有の第二物件のほか、木造スレート葺平家建工場一棟建坪二九坪四七附属木造枌葺平屋建倉庫一棟建坪三坪木造枌葺平屋建下屋一坪建坪五坪一一と、第一審原告松田登貴美所有の第三物件があつたことが認められ、<中略>る。

さて、みぎ下湯北木之助の評価と近藤威の評価のいずれが正確であるかはにわかに判定し難いが、第一物件の更地価額が金五〇〇万円前後のものであつたことは間違いのないところであり、そして第一物件上に健在していたみぎ建物の敷地使用について、第一審原告松田健治が同松田登貴美と同松田一二に対し、賃借権を設定したのではなく事実上使用させているにすぎないことは第一審原告らの自認するところであるから、時価算定について、更地価額の五〇%との評価を直ちに採用することはできないが、これを二〇%減としても、第一物件は当時約四〇〇万円位の価値はあつたものである。

第一審被告は、昭和三一年九月一七日、第一審原告松田健治に対し、同松田一二を連帯債務者として、金六〇万円を弁済期同年一二月一六日利息、損害金とも月五分の約束で貸与したが、この元利金の支払いを担保するため、第一物件について(もつとも第二物件もともに代物弁済予約の目的としたものであるが、これに後に説明するように無権限者によつて締結された契約に基づくもので無効であるから、価額の均衡を考える上からは第二物件は除外して差支えない)代物弁済予約をしたもので、この予約は、借主がみぎ期日に弁済しないとき、第一審被告において一方的に予約完結の意思表示をすることにより、第一物件の完全な所有権を取得できる性質のものであることは、第一審被告の自認するところである。

そうしてみると第一審被告は、この予約により元利金六二万七、〇〇〇円(年一割八分の制限利息を計算)の支払いに代えて、時価約金四〇〇万円位の第一物件の所有権を代物弁済によつて取得することができるわけで、これは著しく均衡を失しているといつて妨げない。しかし、このように債権額に比し代物弁済に供せられる物件の価額が六倍以上になることから直ちに、暴利行為として公序良俗に違反し、みぎ代物弁済予約が無効になると結論づけることは早計であつて、「貸主が巨利を博すべくはじめからみぎ不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経験ないし軽卒に乗じこれを提供させたものと認め難いときは、」(最判昭和三五年六月二日民集一四巻一、一九二頁)みぎ代物弁済予約は公序良俗に反せず無効ではないと解するのが相当である。

更に第一審被告は、昭和三一年一二月二二日、第一審原告松田健治に対し同松田一二を連帯債務者として、金九〇万円を、利息、損害金前同率、弁済期昭和三二年二月一五日の約束で貸与し、この元利金の支払いを担保するため代物弁済予約をしたもので、この予約の性質も、前記金六〇万円の貸金の場合と同様であることは第一審被告の自認するところである。

そうしてみると、第一審被告は、この予約により元利金九四万円(年一割八分の制除利息を計算)の支払いに代えて、時価にして約金四〇〇万円位の第一物件の所有権を代物弁済によつて取得することができるわけで、これも著しく均衡を失しているといつて妨げない。しかしながら、この予約も前述した特別の事情の認め難い限り、公序良俗に反せず有効であるとの法理があてはまるとしなければならない。

そこで、本件においてみぎ特別の事情の有無を考究すると、第一審被告が、巨利を博する目的で第一審原告松田健治の窮迫、浅慮ないし無経験、軽卒に乗じ、みぎ各代物弁済予約を締結したことを認めるに足りる証拠がない。却つて<証拠>によると、第一審原告松田健治は粟おこし等食料品の製造販売を業とする商人であつて、昭和二七年六月一七日、訴外株式会社近畿相互銀行から金二〇〇万円の金融を受けるため、同銀行との間で、第一物件について債権極度額金二〇〇万円の根抵当権設定契約、および代物弁済予約を締結し、同銀行のため根抵当権設定登記および所有権移転請求権保全仮登記を経由したことがあること(この代物弁済予約が第一審原告松田健治において、債権者銀行のいうままに必要書類に捺印したことにより成立したことを認めるに足りる証拠はない)、昭和三一年九月ごろから同年一二月ごろまでの同原告の営業状態は、従業員の金員横領のため蹉跌をきたしていたが、なお三〇名程の従業員を雇傭して営業を続けていたもので、窮迫という程の程度には至つていなかつたこと、同原告は事業の経営状態を立て直そうとして第一審被告から金借したものであり、同被告がいわゆる町の隠れた高利金融業者であることを熟知していたのであつて、みぎ借受けに当つては、約定どおりの利息や元金の支払いができる見通しであつたことが認められ、事実、同原告は昭和三三年五月一三日までに、六〇万円口について金三九万八、〇〇〇円、九〇万円口について金四五万六、〇〇〇円計金八五万四、〇〇〇円もの金員を利息、遅延損害金名義で支払つたことは当事者間に争いがないから、以上の事実によると、みぎ各代物弁済の予約は到底同原告の窮迫、軽卒、無経験に乗じて締結されたものとすることはできない。しかも、第一審被告は六〇万円口の貸金の弁済期が経過しても、直ちに代物弁済の予約完結権を行使しないで、重ねて金九〇万円を貸与し、さらに後者の弁済期経過後も、同原告が一応遅延損害金を支払つている間は予約完結権を行使に当つても一週間の猶予期間をおいたことは前記のとおりであり、以上の点を考慮すると、第一審被告が月五分の利息、損害金を取得することによつて利息制限法に違反する不当の利益をむさぼる意図であつたことは疑いないけれども、貸借の当初から担保物を取得することによつて巨利を博する意図があつたものとはたやすく断じがたい。したがつてみぎ代物弁済予約を公序良俗に反する無効なものとすることはできない。もつとも、みぎ第一回目の代物弁済予約は、その債権額と物件価額との著しい不均衡により暴利行為として無効となる疑いがあるとしても、第二回目の代物弁済予約を同一物件についてした結果、元利金も金一五〇万円以上となり、この双方を併せて行使する場合には、みぎ不均衡は著しく緩和されるのであるから当初の瑕疵は治癒されて有効となつたものと解することができる。

また、債権が一部でも残存している以上、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由のない限り、代物弁済の予約完結権を行使することができるものであるところ(最判昭和四〇年一二月三日民集一九巻二、〇七一頁)、第一審原告松田健治は、予約完結権濫用の事由として僅少の債権額で不均衡の価値のある第一物件を取得する点を指摘する。なるほど残存貸金債権額と第一物件の価額との間に不均衡のあつたことは前記<証拠>によつて認められるが、これがために直ちに予約完結権の行使が権利の濫用として無効となるものとすることはできない。けだし、「代物弁済予約完結権を行使した債権者は、特段の事由のない限り、一部弁済として既に受領した金員を債務者に返す義務を負うものと解するのが相当である」(前掲昭和四〇年の最判)から、みぎ特段の事由がない限り、目的物件は、残存債権のため代物弁済されるのではなく、貸付日以後完結時までの元利損害金額について代物弁済されるのであるから、前記不均衡はこの点において緩和されるのである。ところで本件においてみぎ特段の事由は認められない。第一審原告松田健治は第一審被告が予約完結の意思表示をするにあたり、差額返還債務のないことを明示したと主張し、これを特段の事由とするようであるが、<証拠>によつてもそのような事実は認められないし、他に特段の事由として認められる点もない本件では、同原告が第一審被告に支払つた利息、損害金(元金の内入となつた部分を含む)は総て不当利得として返還さるべきものであることを併せ考えると、なおさら第一審被告のみぎ予約完結権行使は権利濫用となるものではない。そのうえ、一部弁済の場合、予約完結権を行使した債権者に生ずる弁済金返還義務は、予約完結によつて当然生じうるのであつて、予約完結権の行使にあたり、債務者にこれを返還する意思のあることを表示する必要もなく、本件では返還義務を負わないと表示したわけでもないから、予約完結権の行使が無効となるものでもない。

(三)  そうしてみると、みぎ代物弁済予約、予約完結による代物弁済の無効であることを前提として本件和解が無効である旨の第一審原告松田健治の主張は採用できず、したがつて、同原告は代物弁済や和解の効力をを争うことによつて、(ハ)の所有権移転登記手続を第一審被告に請求することはできない。

(四)  なお、念のため附言すると、本件の場合、代物弁済予約時において目的物件と債権者に著しい不均衡があり、そのうえ代物弁済予約のほか抵当権設定もされていて、当事者は債権担保を目的として代物弁済予約をしたものであることが明らかであるから、このような場合はいわゆる清算的代物弁済予約すなわち、債権者において目的物件の所有権をとりきりにするのではなく清算の必要な範囲でその所有権を取得するにすぎない(最判昭和四二年一一月一六日裁判所時報四八六号一頁)と解する余地がないわけではないが、本件において、第一審被告は完全な所有権を取得し清算不要と主張するのに対し、第一審原告松田健治は、代物弁済予約ないしその完結の無効を主張するのみで、清算を要する趣旨の代物弁済予約である旨の主張をしないばかりか、理由冒頭に説示したとおり、当事者は大阪簡易裁判所で和解し、第一審被告の主張するとおり、同被告が代物弁済完結により第一物件について完全な所有権を取得したことを、同原告が任意に認めてしまつたものであるからもはや清算を残す趣旨の主張はすることができないものと解する。

(五)  みぎに述べたとおり、本件代物弁済予約を無効であるということはできないから、(イ)(ロ)の各登記の抹消登記手続を求める同原告の請求は失当である。

二、第一審原告松田登貴美の抹消登記手続請求について、

(一)  第三物件がもと同原告の所有であつたこと、みぎ物件に(ワ)(カ)の各登記があることは当事者間に争いがない。

(二)  <証拠>を総合すると、第一審原告松田登貴美は同松田一二が昭和二七年六月一七日、株式会社近畿相互銀行との間でした債権極度額金二〇〇万円の給付金債務手形債務当座借越債務を担保するため、第一、第二物件とともに第一審原告松田登貴美所有の第三物件を共同担保として提供し、根抵当権設定登記、代物弁済予約による所有権移転請求権保全仮登記を経由しており、さらに昭和三二年一〇月二八日、第一審原告松田健治と連帯して訴外田中義郎から金四〇万円を借用し、その債務の担保として第三物件を担保に提供し、抵当権設定登記、代物弁済予約による所有権移転請求権保全仮登記を経由していること、さらに第一審原告松田登貴美は、同松田健治が昭和三一年九月一七日自己の親権に服する第一審原告松田一二と連帯して第一審被告から金六〇万円を借用するに際しては、同松田一二の親権者として同松田健治とともに同松田一二を代理して第一審被告との間に消費貸借契約、抵当権設定契約、代物弁済の予約を締結していることが認められる。

第一審原告松田登貴美は、同人不知の間に同松田健治が近畿相互銀行や田中義郎から金借して第三物件に抵当権設定登記や代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全仮登記をした旨主張しているが、本件の全証拠を仔細に検討してもそのような事実を認めることができる的確な証拠は見当らない。

みぎ認定事実と<証拠>によつて第一審原告松田登貴美名下の印影が同人の印章によるものと認められるから同人作成部分は真正に成立したものと推定すべく、その余の部分は<証拠>を総合すると、第一審原告松田登貴美は、同松田健治の妻であつて、同松田健治が事業資金調達の必要上同松田登貴美の代理人として同人の名義を使用し、第三物件に抵当権の設定、代物弁済の予約などをして他から金員を借用することを許諾していたので、同松田健治は、第一審被告から(イ)昭和三一年九月一七日借用の金六〇万円および同年一二月二二日借用の金九〇万円の元金に対する昭和三二年九月二五日から同三三年四月一三日までの月五分の遅延損害金五〇万円と(ロ)みぎ以外に事業資金として借用した金員の残金一〇万円の支払を求められたことから、昭和三三年四月一四日、第一審被告との間で、同松田登貴美を代理して、債務者を同松田登貴美とするみぎ(イ)(ロ)の合計金六〇万円を準消費貸借に改めその弁済期同月一四日、利息年一割八分、支払期間中一括後払い、遅延損害金日歩九銭八厘六毛とし、その担保として第三物件について抵当権設定代物弁済の予約をし、同松田健治が同債務の連帯保証をして、第一審被告からみぎ金員の支払猶予ををえたことが認められる。<中略>。

(三)  第一審原告松田登貴美はみぎ代物弁済予約が代理人である第一審原告松田健治の浅慮に乗じ締結された暴利行為であるから公序良俗に反し無効であると主張するが、<証拠>によると、みぎ予約締結当時すでに第三物件には田中義郎のため代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記がされていたのであつて、この点を考慮したうえでの第三物件の価額を明らかにする資料がない(甲第三号証が真正に成立したものであるとしても、佃順蔵が昭和三三年八月ごろの第三物件の時価を金一〇五万〇、二八〇円と評価するについてみぎの事情を加味したかどうか不明であるし、ほかにこの評価が適正かどうかを比較対照するものは何もない)から、それが債権額(準消費貸借の目的とした遅延損害金中利息制限を超過する部分については準消費貸借契約は無効であり、超過部分を控除した残額についてのみ有効である)と著しく均衡を失するものであるかどうか不明であり、しかも、代物弁済の予約が第一審原告松田健治の浅慮に乗じて締結されたことを認めるに足りる証拠もない。したがつてみぎ主張は採用しない。

(四)  そうしてみると(ワ)の抵当権設定登記(カ)の所有権移転請求権保全仮登記の各抹消登記手続を求める第一審原告松田登貴美の請求は理由がない。

三、第一審原告松田健治および同松田登貴美の債務不存在確認の請求について、

(一) 前記二において判断したとおり、昭和三三年四月一四日第一審被告に対し第一審原告松田登貴美は前記一において述べた元金六〇万円と九〇万円との二口の債務に対する遅延損害金五〇万円と他の貸金債務一〇万円を目的とし、金額六〇万円、弁済期同年五月一四日、利息年一割八分、支払期間中一括後払い、遅延損害金日歩九銭八厘六毛なる準消費貸借上の債務を負担し、第一審原告松田健治は同松田登貴美のみぎ債務を連帯保証した。

(二)  ところで遅延損害金債務を準消費貸借の目的としたときは、そのうち利息制限法所定の制限を超過する部分についてみぎ準消費貸借は無効であると解するべきところ、みぎ元金六〇万円と九〇万円の二口の債務について同松田健治が第一審被告に支払つた利息および損害金(ただし昭和三二年九月二四日まで)の額が、原判決末尾添付別表一、二記載のとおりであることは当事者間に争いがなく、そのうち利息制限法所定の制限超過部分を残存元本に充当し、みぎ準消費貸借の目的となつた遅延損害金算出の始期である昭和三二年九月二五日当時における残存元本に対する同日から同三三年四月一三日までの間のみぎ制限による遅延損害金の合計額が前同別表三、四記載のとおり金二一万二、四四二円六〇銭であることは計数上明かである。

(三)  第一審原告松田登貴美は仮定的抗弁として、第一審被告の第一、第二物件に対する代物弁済予約完結が有効にされたとすれば、これによつて、同原告の六〇万円の債務中五〇万円の債務は、元来本件六〇万円と九〇万円の二口の債務の遅延損害金を消費貸借に改められたものであるからその性質を帯有し消滅した筈である旨主張するので考究する。

(1) 第一審被告が第一、第二物件について代物弁済予約完結の意思表示をしたのは、昭和三三年八月一日第一審原吉松田健治、同松田一二に到達した書面によつてであり、第一物件については同年一一月二八日、第二物件については昭和三四年一月七日、第一審被告のため所有権移転本登記がされたことは当事者間に争いがない。ところで後に説示するとおり、第一審原告松田一二に対する代物弁済予約完結の意思表示は、代物弁済予約自体無効であると判断するから、第二物件については第一審被告において所有権を取得しておらないことに帰着する。そこで第二物件を除外し第一物件だけについて考察を進める。

第一物件について、代物弁済の予約、これを担保するための所有権移転請求権保全の仮登記、第一審被告のみぎ予約完結権の行使、みぎ仮登記の本登記はいずれも有効であることは前に前示したとおりである。

そうすると、これによつて、第一審原告松田健治の負担する債務すなわち本件六〇万円と九〇万円の二口の元本とこれに対する未払損害金債務は消滅し、第一審被告は既に同原告から受領した金員を不当利得として返還する法律関係にあるわけである。

(2) さて第一審原告松田登貴美のみぎ債務も、同原告の債務として準消費貸借にしなければ、第一審松田健治の遅延損害金債務として消滅したのに、たまたま同松田登貴美の債務としたため別個の債務として存続することは不衡平のそしりを免れない。

よつてもとの元本と遅延損害金のすべてが消滅する関係にあるときは、みぎのような遅延損害金を改めた準消費貸借上の債務も、これと異なる契約をするなど特段の事由のない限り、遅延損害金としての同一性を失なわず、みぎ代物弁済によつて消滅すると解するもので、このことは、本件のように遅延損害金の債務者と準消費貸借の債務者とが異なつていても、準消費貸借が引き受けられた遅延損害金債務を目的として成立した以上、変ることがないのは当然である。このように解しないと、債権者は準消費貸借という法理を利用していともたやすく不当な利益を収めることになり失当である。

本件において、そのような特段の事由のあることは窺知できないし、第一審原告松田登貴美の債務が代物弁済によつて消滅し、なお第一審被告の手もとに差額益の生じることは計算上明らかである。

(3) ところで不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合の債務消滅の効力は、所有権移転登記の時と解するのが相当である(最判昭和四〇年四月三〇日民集一九巻七六八頁)。そのわけは、単に所有権移転の意思表示をするだけで足りるとすると、債務者がその後第三者にこれを二重譲渡し、そちらへ移転登記をしてしまえば、債権者は第三者に対する対抗要件をそなえないのに代物弁済は有効として取り扱われ、債務が消滅してしまうという不利益を受けるからである。したがつて、所有権移転本登記手続(仮登記をもつて足りるとの見解もある)をすますと、そのような不利益を受けることはないから、その時点をとらえて代物弁済による債務消滅の効力が発生するとするのが最も妥当な解釈といえる。

第一審被告は、さらに不動産の場合に、引渡しをも必要とすると主張しているが、そのような引渡しまでをも要する必要は、みぎに説示したところから、ないものと解する(最判昭和三九年一一月二六日民集一八巻一、九八四頁は、「登記その他引渡行為を終了し」との文言を使用しているが、このことから第一審被告が主張するように引渡しをも必要とすると解するべきではなく、「不動産について登記、引渡行為が第三者対抗要件について引渡し」を必要とする趣旨に理解するべきである。したがつてこの判例は前記昭和四〇年の判例とていしよくしない)。

(4) そうしてみると、第一物件について第一審被告のため所有権移転登記を経ている以上、代物弁済によつて、第一審原告松田健治の元本と遅延損害金債務はすべて消滅に帰し、したがつてこれを目的とした第一審原告松田登貴美の前記金二一万二、四四二円六〇銭の準消費貸借債務も消滅したとしなければならない。

このようにして第一審原告松田登貴美の負担する債務はみぎ金二一万二、四四二円六〇銭について準消費貸借契約を締結した昭和三三年四月一四日から弁済期日である同年五月一四日まで年一割八分の割合による利息、同月一五日から第一物件の代物弁済により債務の消滅した同年一一月二八日まで日歩九銭八厘六毛の割合による遅延損害金の合計金四万四、九三六円(三、四六二円四万一、四七四円)と、これとは別に第一審原告松田健治が第一審被告に負担した金一〇万円の債務を第一審原告松田登貴美が準消費貸借により同人の債務にした金一〇万円との合計金一四万四、九三六円の債務を負担していることになる。

(5) なお、前述のとおり元本金二一万二、四四二円六〇銭の債務は、第一物件についての代物弁済によつて消滅したわけであるが、みぎ元本に対する前記金三、四六二円の利息と金四万一、四七四円の損害金の債務は、旧債務(第一審原告松田健治の第一審被告に対する本件二口の元本債務の損害金債務)ではなく、準消費貸借債務について発生したもので、準消費貸借債務を直接みぎ損害金債務を目的としたことにより損害金の帯有した属性を引き継ぐが、関接の関係になるその利息、損害金にまで旧債務の帯有した属性の承継を認めるべきではあるまい。

さらに本件におけるように、第一、第二物件が共同して六〇万円と九〇万円の二口の元利金債務の代物弁済に供せられ、第二物件についての代物弁済契約が無効で予約完結が発効しない場合、被担保債権の消滅は第一、第二物件の価額に按分され第一物件負担部分のみが消滅し、第二物件負担部分は消滅しないのではないかという疑いがある。しかしこのような考慮は、第一物件だけでは債権の元利金を満足するに足りない場合にこそ、必要となるのであつて債権者としては本来は債権の元利金の満足をうれば何も文句はない筈のものであり、本件で、第一物件の所有権を取得して元利金を満足し、なお差額益を残すことは前記のとおりであるから、このような場合にまでそのような考慮を払うう必要はないものと解する。

(四)  以上の次第で、第一審被告と第一審原告松田登貴美との間における準消費貸借契約、第一審原告松田健治との間の保証契約上の債務は、みぎ合計額金一四万四、九三六円の限度でのみ残存し、これを超える部分は消滅に帰したものである。

(五)  第三物件による代物弁済について、

(1) 第一審被告は第一審原告松田登責美が、その債務を弁済しないときは、弁済にかえて第三物件を取得することができる旨の契約が締結されたことは前記のとおりであり、第一審被告は、昭和三三年八月一日同原告に到達した書面で七日以内にみぎ債務を弁済のないときは代物弁済として第三物件を取得する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、みぎ期間内に弁済のあつたことが認められる証拠がないから、同年八月八日の経過ともにみぎ代物弁済の予約は完結されたことになる。

(2) ところで第一審被告は、このようにして第三物件について予約完結権を行使したが、これより先順位の仮登記権利者が、第一審被告に優先して権利を行使したため、第三物件についての第一審被告のみぎ完結権行使は無効に帰したと主張するに対し、第一審原告松田登貴美はこの主張事実を明らかに争わないから自白したもののみなす。そうすると、第一審被告に対する同松田登貴美の債務はみぎ代物弁済にもかかわらず存続しているわけである。

(3) 同原告は、第一審被告のみぎ予約完結権の行使が権利の濫用であつて無効であると主張しているが、前記のとおり第一審被告のした予約完結の意思表示は、法律上の効果を生じなかつたのであるから、それが権利の濫用であるかどうかを判断する必要はないとしなければならない。

(六)  第一審被告の民法六九六条に関する主張について、

(1) 第一審原告松田登貴美と第一審被告間で、昭和三三年九月一六日付で大阪簡易裁判所の即決和解調書が作成されている事実は当事者間に争いがない。

(2) この和解期日には同原告の代理人として弁護士田中貞蔵が出頭したことは<証拠>によつて認められる。しかし、本件の全証拠を精査しても、同原告が自らの意思によつて同弁護士にみぎ代理権を与えたことはもとより、第一審原告松田健治にみぎ代理人選任権を授権したことが認められる的確な証拠はなく<中略>却つて前記二において認定した事実や、<証拠>によると、第一審原告松田登貴美から、同松田健治の他より借り受ける事業資金債務を担保するため、第三物件について抵当権の設定、代物弁済の予約をすることの代理権を与えられていた同松田健治は、この権限を超えて同松田登貴美の承諾なしに、みぎ田中弁護士に本件即決和解についての同松田登貴美を代理すべき権限を授与し、同松田の登貴美の氏名を冒用し、印鑑を冒捺したうえそのための委任状を作成したことが認められるから、第一審原告松田登貴美が田中弁護士の無権代理行為を追認しない限り、本件和解は同松田登貴美に関する限り無効であるとしなければならない。

(3) 第一審被告は本件即決和解は無効でも、私法上の和解の効力を生ずるとも主張しているが、田中弁護士への代理権授与に瑕疵があり、その代理権限が認められない限り私法上の和解としての効力を生じる余地はないから、この主張も採用しない。

(4) したがつて第一審被告が主張する民法六九六条による効力を判断する必要はない。

四、第一審原告松田一二の請求について、

(一) 第一審被告は同原告に対しても第一審原告松田健治に対すると同様前記一(一)記載と同旨の主張をするので、、まずこの点について判断する。

第一審被告主張の和解が第一審原告松田一二のの間に成立したことは当事者間に争いがないところ、<証拠>を総合すると、第一審被告は第一審原告らが所有する第一ないし第三物件について第一審被告のためにされた代物弁済予約完結権を行使し、これによりみぎ各物件の所有権を取得したと主張し、第一審松田健治に対し第一物件の引渡し、同松田一二に対し第二物件、同松田登貴美に対し第三物件の各明渡しを求めたが、同原告らが応じないところから、同原告らを相手として、大阪簡易裁判所に土地引渡し明渡し等請求即決和解の申立てをし、昭和三三年九月一六日の和解期日に同松田健治本人と第一審原告ら三名の訴訟代理人として弁護士田中貞蔵が出頭のうえ、第一審被告の代理人弁護士丸山郁三との間において第一審被告主張のとおり第一、第二物件の所有権が同松田健治、同松田一二を連帯債務者とする前記金六〇万円および金九〇万円の二口の貸金の代物弁済として第一審被告に譲渡されたことを確認することなどを内容とする和解が成立したことが認められるけれども、みぎ即決和解の同松田一二関係部分は、同原告所有の第二物件を、同松田健治、同松田一二が連帯して負担するみぎ債務の弁済に代えて、第一審被告にその所有権を護渡したことを確認するものであつて、みぎ行為は親権者である同松田健治と子である同松田一二との利益が相反する行為といわなければならないのに、みぎ和解にあたり同松田一二の特別代理人が選任されなかつたことは弁論の全趣旨により明らかであるから、みぎ和解中第二物件がみぎ代物弁済により第一審被告に譲渡されたことの確認部分は私法上無効であり、したがつて訴訟上の和解としての効力を有しないものといわねばならない。

したがつて第一審被告のみぎ主張は理由がない。

(二)  第一審原告松田健治が昭和三一年九月一七日、第一審被告から金六〇万円を借り受けた際、第一審原告松田一二が連帯債務者となり、その担保のため同松田一二所有の第二物件について抵当権設定契約、代物弁済の予約、債務の不履行を停止条件とする賃貸借契約が締結され、これを原因として(ル)の抵当権設定登記、(ト)の所有権移転請求権保全仮登記、(チ)の停止条件付賃借権設定請求権保金仮登記を経由したこと、第一審原告松田健治が同年一二月二二日、第一審被告から金九〇万円を借り受けた際、同松田一二が連帯債務者となり、その担保のため第二物件について抵当権設定契約、代物弁済の予約が締結され、これを原因として(ヲ)の抵当権設定登記(リ)の所有権移転請求権保全仮登記を経由したこと、さらに(リ)の所有権移転請求権保全仮登記原因である代物弁済予約の完結による代物弁済を原因とする(ヌ)の所有権移転登記のあることは前記のとおりである。そして同松田一二はみぎ各登記のうち(ル)(ヲ)の各抵当権設定登記を除くその余の各登記の抹消登記手続を求めるものである。

(1) みぎ金六〇万円口の貸借についての連帯債務者第一審原告松田一二の消費貸借契約、代物弁済の予約、停止条件付賃貸借契約は、いずれも同原告の親権者である第一審原告松田健治、同松田登貴美が代理して第一審被告と締結したものであることも前記のとおりである。

ところで親権者が未成年の子を代理して自己の債務のため子を連帯債務者にする行為、自己の債務の担保として子の不動産に抵当権を設定する行為、自己の債務の弁済に代えて子の不動産を他へ譲渡することを予約する行為は親権者と子の利益が相反するものである。

第一審被告は、みぎ代物弁済の予約は第一審原告松田一二の債務債務の担保のためにされたものであるから、利益相反行為に当らないと主張するが、同原告の連帯債務の負担が有効である場合でも、本件代物弁済の予約は、同原告所有のみぎ物件が同原告の債務の弁済に代えて第一審被告に譲渡されることを予約すると同時に、第一審原告松田健治の債務の弁済に代えて譲渡されることを予約することにもなるのであるから、同松田健治と同松田一二の利益は相反するものというべきである。

第一審被告は、当審で、これが民法八二六条にいう親子間利益相反行為に当らないことをるる主張しているが、同松田健治と同松田一二の第一審被告に対する債務が連帯債務であるところから、同松田健治の第一審被告に対する債務のため、同松田一二所有の第二物件が代物弁済として譲渡されることを予約する点で同条にいう利益相反行為に当るとしなければならない(大判大正三年九月二八日民録二〇輯六九〇頁、なお最判昭和三七年一〇月二日民集一六巻二、〇五九頁は、親権者が法定代理人として未成年者の子とともに共同債務を負担し、未成年の子所有の不動産持分に抵当権を設定したが、未成年者の分担率はその持分率を超過している事案であつて、未成年者が親権者と連帯債務を負担した場合ではないからこの判例の結論をそのまま本件に持ち込むわけにはいかないばかりか、本件のように連帯債務の場合は利益相反行為になるとするのがこの判例の趣旨を生かすことになる。)から、この主張は採用できない。

またみぎ停止条件付賃貸借契約は、みぎ抵当権を実行する場合にいわゆる短期賃借権者を排除して抵当物件を有利に換価することを企図するものであることは弁論の全趣旨によつて明らかであつて、みぎ契約は抵当権設定契約と相合して第一審原告松田健治の債務の担保のためみぎ物件に負担を設定し、第一審原告松田一二に不利益を課すものというべきであるから、これも利益相反行為にあたる。

したがつて特別代理人によらないで、第一審原告松田健治、同松田登貴美が同松田一二を代理してした代物弁済の予約、停止条件付賃貸借はいずれも同松田一二に対しその効力を生じない。

(2) 昭和三一年一二月一三日大阪家庭裁判所において同松田健治が第一審被告から金一五〇万円を借り入れるについてその債務の担保としてみぎ第二物件に抵当権を設定するについての特別代理人に、訴外林義久が選任されたことは当事者間に争いがない。第一審被告はこれによつてみぎ代物弁済の予約について特別代理人を選任しないで親権者が締結した瑕疵は補正されたと主張するが、抵当権設定についての特別代理人の選任によつて当然に代物弁済の予約についての瑕疵が補正されると解すべき根拠はない。また第一審被告は特別代理人林が同松田健治のみぎ代物弁済予約についての無権代理行為を追認したと主張するが、これを認めるに足りる証拠がないばかりか、仮に追認したとしても、林には同松田一二を代理して抵当権を設定する権限しか与えられておらず、代物弁済予約および停止条件付賃貸借契約の締結権限は与えられていなかつたから、みぎ追認はなんらの効力もない。

(3) つぎに、金九〇万円口の貸借にあたつて、同松田一二を連帯債務者とする消費貸借契約、第二物件についての代物弁済予約が、同松田一二の親権者である第一審原告松田健治、同松田登貴美によつて締結されたのであるから前記と同一の理由により、みぎ契約は同松田一二に対しその効力を生じない。

(4) 第一審被告は抵当権の設定も代物弁済の予約も担保の供与という点で同一であるから、抵当権設定のために選任された特別代理人林には代物弁済予約締結の権限もあると主張するが、債務者が債務の履行をしないとき、抵当権設定(物上保証)の場合には担保物件が換価され、債務者に支払われた残余金が設定されるのに反し、代物弁済予約の場合にはその所有権が債権者に移転することになるのであつて、物件所有者にとつては一般に後者の方が不利であるから、前者の代理権を有するからといつて当然に後者の代理権をも有するものであるとはいえない。

(5) また第一審被告は、林が第二審原告松田一二に代り代物弁済の予約を締結する権限があると信じていたと主張するが、たとえそのように信じたとしてもそれについて正当の事由のあつたことを認めるに足りる証拠がないばかりか、<証拠>によると、特別代理人選任の審判書には抵当権設定について林を特別代理人に選任する旨明瞭に記載されているのであるから、金融業者である第一審被告が林に代物弁済締結の代理権があると信じたとしても、それは第一審被告の過失によるものであり、正当の事由があつたものということはできず、第一審被告の表見代理の主張は採用できない。

(6) また、第一審被告は、昭和三三年八月七日みぎ即決和解と同一内容の私法上の和解契約によつて第二物件の所有権を取得したものであると主張するけれども、前記と同様親権者と子の利益相反行為であるその和解契約の締結にあたり、第一審原告松田一二のために特別代理人が選任されていないことは弁論の全趣旨により明らかであるから、第一審被告主張の私法上の和解契約は代理権のないものがしたものとして無効であるといわなければならない。

(三)  したがつて第一審原告松田一二の本訴請求は正当である。

(第一審原告松田健治の予備的請求について)

前記即決和解において同原告は第一審被告から第一ないし第三物件を代金二五八万円で買受け、みぎ代金を昭和三三年一〇月一五日第一審被告方へ持参して支払うものとし、みぎ期日にその支払をしないときは、みぎ売買契約は催告などの手続を要しないで当然解除されるものと定めたことは当事者間に争いがなく、みぎ期日が同年一一月一五日に延期されたことは第一審被告の認めるところである。同原告はみぎ期日が同年一二月一五日に延期されたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

そして本件に顕われたすべての証拠によつても、同原告が同年一一月一五日までにみぎ売買代金を和解条項の約旨にしたがつて、第一審被告方で第一審被告に提供したことを認めることができない(同原告はおそくても、同年一一月一五日までに代金を提供した旨主張しながら、同年一二月一五日まで弁済期日まで弁済期の猶予をえたとも主張する。おそくとも一一月一五日までに提供しながら何故に猶予をえたのであろうか)。却つて、<証拠>によると、同原告は和解条項所定のとおり、第一審被告方に売買代金を持参したことはないのであつて、期限徒過後の同年一一月二七日になつてようやく訴外渕上正治から融資を受け、これを中井司法書士方に預けたうえ、第一審被告にその受領方を求めたが、第一審被告はこれを拒否したことが認められる(反証―排斥)

上記事実によると、みぎ売買契約は、昭和三三年一一月一五日の経過とともに当然解除されたものといわなければならないから、同原告の予備的請求は失当である。

(第一審被告の反訴請求について)

第一審被告が代物弁済により第一物件の所有権を取得したことは前記のとおりである。<証拠>を総合すると、第一物件の地上に原判決末尾添付目録第四物件が建築され、これを第一審原告松田一二が所有していることが認められ、みぎ認定に反する証拠はない。そして同原告は第一物件の土地を占有する権原についてなんらの主張立証をしない。したがつて第一審被告のみぎ建物収去の請求は正当である。

(むすび)

以上によれば、第一審原告松田健治、同松田登貴美の債務不存在確認請求は、主文掲記の範囲で正当であるから、これと異なる原判決はその限度で変更を免れないが、原判決のその余の判断すなわち同第一審原告らのその余の請求(予備的請求を含む)を失当とし、第一審原告松田一二の請求を認容し、第一審被告の第一審原告松田一二に対する請求を認容した部分はいずれも正当である。

そこで、民訴法三八六条、三八四条、九六条、八九条、九二条、九三条を適用し主文のとおり判決する。(宅間達彦 長瀬清澄 古崎慶長)

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