大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)1842号 判決
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〔判決理由〕右控訴人ら四名は前記認定の如く、直接被控訴人から異議なく解雇予告手当及び退職金を受領し、又は、何らの留保もすることなく、被控訴人のした解雇予告手当の供託金の還付を受け、直接被控訴人から異議なく退職金を受領したものであるから、特段の事情のない本件では、自己の使用者たる被控訴人に対する本件解雇予告手当及び退職金の請求権の存在を認めたものであり、したがって、その前提となる本件解雇の効力を承認し、解雇の効力を争わない意思を表明したものと解するのが相当である。同控訴人らは生活難のため右金員を受領しただけであつて、解雇承認の意思はなかつたと主張するが、仮にそうであつたとしても、被控訴人がこれを知り又は知り得べき状況にあつたと認めるに足りる的確な証拠はないから右効力を否定することはできないといわなければならない。被控訴人は右控訴人らの解雇予告手当及び退職金の受領により同控訴人らと被控訴人との間の雇傭関係につき明示又は黙示の合意解除が成立したと主張するけれども、本件の場合、被控訴人のした一方的解雇の意思表示を被控訴人の合意解除の申込とし、右控訴人らの解雇予告手当及び退職金の受領による解雇の承認をこれに対する承諾とみることは適当でないので、被控訴人の右主張は採用できない。
前記控訴人ら四名は解雇予告手当及び退職金を異議なく受領することにより本件解雇の効力を争わない意思を表明したものであるのみならず、その後弁論の全趣旨により認められる如く本件訴訟提起まで約七年余の長きにわたり何ら本件解雇について異議を述べなかつたものであるから、禁反言の法理の趣旨からも信義則上からも、いまさら被控訴人に対し本件解雇の無効を理由に雇傭関係の存在を主張し、雇傭契約上の権利を行使することは許されないものと解するのが相当である。この点につき同控訴人らの主張する貧困、社会的圧力等の諸事情は、右判断の支障となるものではない。もつとも、弁論の全趣旨によれば、同控訴人らから被控訴人に対し再雇傭のための復職運動がなされたことは認められるが、同控訴人らが被控訴人に対し本件解雇の無効を主張して復職を要求したと認めるべき的確な証拠はなく、また、同控訴人らが本件解雇後約七年余の間訴訟提起の手段にも及ばなかつたのは、同控訴人らが主張するように被控訴人側が同控訴人らの復職を確約していたがためであると認めるべき証拠もないから、右判断を動かすに足りない。なお、同控訴人らは本来無効な本件解雇がその承認により有効となることはないと主張するけれども、同控訴人らがいまさら本件解雇の無効を主張し得ない理由は前説示のとおりであるから、右主張は採用できない。(金田佐夫 輪湖公寛 中川臣朗)