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大阪高等裁判所 昭和41年(ラ)255号 決定 1966年12月21日

抗告人 有限会社初山商店

主文

原命令はこれを取消す。

理由

抗告理由の要旨は、「抗告人は不動工業株式会社外三名を被告として、大阪地方裁判所に約束手形金請求訴訟を提起(同庁昭和四一年(手)第七九号事件)したが、右会社に対する訴状が送達不能となり、昭和四一年六月一六日訴状の補正命令があり、次いで同年八月二三日抗告人が右会社の住所を補正しなかつたとして訴状を却下する旨の命令がなされた。しかしながら、抗告人は同月二二日右会社の住所を補正上申し、同裁判所は上申とおりの住所に送達している(尤もこの送達も不能となつた)のであるから原命令は不当である」というにある。

案ずるに、記録によると、右会社に対する訴状は、最初登記簿上の会社本店所在地である大阪市港区桂町三丁目一七番地に特別送達による送付によりなされたところ送達不能となつたので昭和四一年六月二日、命令送達の日から一〇日以内に右会社の正当な住所を補正すべき旨の命令がなされ、右命令は同月一六日抗告人に送達せられた。そこで抗告人は同月二二日代表取締役山本義隆の住所である大阪市港区桂町二丁目七番地を正当な住所として上申し右住所に宛て特別送達の方法により訴状が送付されたが、再び送達不能となつたので、同年八月二三日抗告人が右会社の住所を補正しなかつたものとして訴状却下命令がなされたことが認められる。そして民訴法第二二八条は、原告が訴状送達のため補正命令を受けたのに懈怠により補正しなかつた場合、訴状を却下せしめる趣旨に外ならないから、本件の如く補正命令に従い住所を訂正したがこれに基く送達が不能となつたようなときは、それが再度に亘つた場合においても尚その旨を原告に通知し重ねて補正を為すべき機会を与えるのが相当であり、この機会を与えたに拘らず原告が重ねて住所を調査して補正するとか、その不能の場合は公示送達の申立を為す等適宜の方法を採らない場合はじめて訴状を却下するのが法の精神に副うものと解しなければならない。

すると、抗告人に対し右調査等の機会を与えずして、訴状を却下した原命令は失当であるからこれを取消すべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判官 乾久治 岡部重信 安井章)

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