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大阪高等裁判所 昭和41年(行コ)123号 判決 1969年12月25日

控訴人 喜多幡龍次郎

被控訴人 西淀川耕務署長

訴訟代理人 東隆一 外四名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対してなした昭和三〇年六月二三日付納税告知書に基づく、昭和二九年六・七月分の控訴人の物品税課税金七三七、五五〇円を納付すべき旨の告知処分が無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上・法律上の主張・証拠の提出・援用・認否は、控訴代理人において当審証人古閑春男の証言と当審における控訴本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

理由

一、被控訴人が控訴人に対し、昭和三〇年六月二三日付納税告知書をもつて、控訴人が昭和二九年六月に合計七八三キログラム、同年七月に合計一、六七五・五キログラム以上合計二、四五八・五キログラムのズルチンを製造移出したとの認定のもとに、これに対する物品税犯則課税金七三七、五五〇円を昭和三〇年六月三〇日までに納付すべき旨告知したことは当事者間に争いがない。

二、控訴人は、右告知処分(但しこれは弁論の全趣旨によれば旧物品税法一八条三項に基づき控訴人を同条一項一号の無申告製造者と認定してなした物品税徴収決定であると解せられ控訴人の訴旨もかかる決定処分を対象とするものと善解し得る)は、控訴人が製造者でないのにこれを製造者とした重大明白な瑕疵があつて無効であると主張するが、当裁判所も本件でズルチンの製造主体が控訴人ではないとは認められず、これを控訴人と認定してなした被控訴人の処分に、その点において重大明白の誤謬はないと判断するものであつて、その理由は、左に記載するほか、原判決がその理由二に詳述するところと同様であるからこれを引用する。

(一)  原判決の八枚目表五行目の「同第二二号証、」の次に「甲第一九号証(一部)、」と付加挿入する。

(二)  原判決の理由二の第七段落(九枚目裏一二行目から一〇枚目表八行目迄)の認定中、後記第四項の認定と低触する部分は後記第四項のように訂正する。

三、当番<証拠省略>中右原判決の認定に抵触する部分はその採用の証拠に照らしたやすく措信し難く、その余の部分によつても前判断を覆えすに足りない。

四、被控訴人において控訴人ら(控訴人と古閑春雄の共同での意味、以下同じ。)が製造したと認定した数量二、四五八・五キログラムのうち、七二・五キログラムは、控訴人らが本件無申告製造容疑で捜索をうけた昭和二九年七月二二日当時控訴人らの製造場に現在したことは当事者間に争いがない(原審第四一回口頭弁論期日における控訴人の陳述)。ところで控訴人はその余の二、三八六キログラムを他に販売(移出)したことは争わないが(前同)、原審における控訴人本人尋問(第一回)の結果にはすべては控訴人らが製造したものでなく、内二七八キログラムを除く二、一〇八キログラムは訴外川合化学の製造したものを製品で引きとつて他に転売したものである旨の供述部分があり、たしかに、右原審における控訴本人の供述によれば、前記控訴人らが製造したと認定された二、四五八・五キログラムのズルチンのうちには、そのいう様に訴外川合化学で製品化されたものを控訴人らが引き取つて来て他に販売していたものが幾分かは存するものと認めざるを得ず、右供述をたやすく排斥できる資料はない。尤も、それが右控訴本人の供述するように<証拠省略>に記載した二七八キログラムを除いたその余のすべてであるとも認め難く、その数量はこれをたやすく確定し難い。

しかし乍ら、右控訴本人の供述によると控訴人らと訴外川合化学との取引形態は控訴人らが他から仕入れたズルチンの主原料であるパラフエネチジンオイル(通称オイル)を訴外川合化学に引き渡し、これから製造されるべきズルチンをその同等量づつ引き渡しを受けることを反覆継続しており、且つ川合化学はその製造申告をしておらず、控訴人らが引き渡しを受ける際も法定の証紙の貼付もなくただ一〇ないし二〇キログラムの大量梱包されたものを引き取り、これを控訴人らのもとで販売に適当な量に小分けして証紙を貼つて他に移出していたことが認められ、他にこれに反する証拠はない。

ところで、物品税法が小売業者(第一種物品)、製造業者(第二、三種物品、本件は旧物品税法二条により第三種物品である。)に課税するゆえんものは、物品税は本来実質上の担税者は消費者であり(旧物品税法第三条ノ二参照)、消費者に転嫁することが予定されているため、その徴収技術上、容易に消費者に転嫁し得る立場にある者から徴収しようとの法意に基づくものであると考えられ、また旧物品税法六条四項には「第二種又ハ第三種ノ物品ノ販売ヲ業トスル者ニシテ原料・労務・資金等ヲ供給シテ第二種又ハ第三種ノ物品ノ製造ヲ委託スルモノハ之ヲ受託者ノ製造シタル物品ノ製造者ト看做シ当該物品ハ之ヲ委託者ノ製造シタルモノト看做ス」と規定されている。これらに鑑みれば、前記控訴人らが原材料と引換えに川合化学より引取つたズルチンにつきこれを旧物品税法の適用上は、控訴人らがその製造者であり納税義務者であると認定しても何ら過誤あるものとはなし得ず、結局前記二、四五八・五キログラム全部を控訴人の製造にかかるものとした本件処分に重大明白た瑕疵あるものというを得ない。

五、さらに本件決定は前記のとおり旧物品税法一八条三項による徴収決定処分であると解せられるから、未だ移出されていない在庫品である七二・五キログラムについても同条一項一号による無申告製造物品としてこれについても物品税を徴収すべきものと解すべきである。この点においても被控訴人の処分は瑕疵はない。

六、以上の次第であつて、控訴人が本件ズルチンの全部もしくは一部についての製造者でないことを前提とする控訴人の本訴請求は、理由がないのでこれを棄却すべきものである。よつてこれと同旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がないので、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 村上喜夫 賀集唱 潮久郎)

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