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大阪高等裁判所 昭和42年(う)853号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(一) 論旨は先ず、竹網貞男が登録している商標の指定商品は、『(旧)第一七類、他類に属しない機械器具及びその各部並びに各種の調帯「ホース」及び「パッキング」』に限定された物であるが、被告人が右と同一の商標を付した電動送風機は、「(旧)第九類、電気機械器具及び其の各部並びに電気絶縁材料」に属する物であるから、右竹網の登録商標の指定商品の範囲に属さない物であつて、同人の商標権の効力は及ばない。しかも、旧法下において公知の審査基準であつた材料主義の観点からみても、また特許庁の定める商標の類似商品例集の第一七類の送風機欄に「渦気送風機、通風機、扇風機(電気に依るものを除く)」と記載されていること及び電気関係の機械器具はすべて一企業で製造される場合が多いので、これをまとめたものが(旧)第六九類、現行第一一類であることによつても、本件電動送風機が(旧)第一七類の送風機に類似するものでないことは明らかである。従つて、被告人が竹網貞男の商標権を侵害した事実はない、というのである。

よつて案ずるに、原判示各証拠によると、竹網貞男は本件商標を昭和三二年一月一一日出願し、同年一〇月一四日登録を受けたことが認められる。ところで商標法施行法三条一項によると、旧法による商標権であつて新法施行(昭和三五年四月一日)の際現に存するものは新法施行の日において新法による商標権となつたものとみなされることとされているのであるから、右竹網の登録した商標権は新法による商標権とみなされる。しかしながら、商標法(現行。以下、改正前の商標法のみ旧商標法と称する)二五条によると、商標権者に指定商品について登録商標の使用権を専有することとされ、同法二七条二項は、指定商品の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならないものと規定している。しかして、原判決挙示の各証拠によると、竹網貞男は旧商標法施行規則(大正一〇年一二月一七日農商務省令三六号、同一一年一月一一日施行)一五条一七類、『他類に属せざる機械器具及び其の各部並びに各種の調帯、「ホース」及び「パッキング」』を指定商品として、本件商標を出願し登録を受けたことが認められる。ところで、被告人が、原判示株式会社成興電機製作所の専務取締役であり、昭和三八年八月上旬頃、同会社内において、竹網貞男が登録している本件商標(商標登録第五〇八七四四号)と同一の商標を表示した銘板を、同会社が製作した電動送風機二六台の機体に付し、右登録商標と同一の商標を使用したことは原判示各証拠によつて明らかである。そこで先ず、右電動送風機二六台が竹網貞男の登録商標の指定商品の範囲内の物か否かについて検討しなければならないところ、竹網貞男の登録商標の指定商品は旧商標法施行規則一五条一七類の『他類に属せざる機械器具及び其の各部並びに各種の調帯、「ホース」及び「パッキング」』であることはすでに認定したとおりであって、右電動送風機が機械器具であることは間違いないところであるが、それが右一七類以外の他類に属する機械器具ではないかどうかを考察する必要がある。そこで、問題になるのは、右電動送風機が旧商標法施行規則一五条六九類の「電気機械器具及び其の各部並びに電気絶縁材料」の電気機械器具に該当しないかということである。およそ、電気機械器具とは電気の作用がその機械器具にとつて本質的な役割を果しているものをいうと解せられるが、これを六九類にまとめたのは、そのような機械器具は多く同種の材料が用いられるとともに、すべて一企業で製造される場合が多いからであろう。しかしながら、同じく電気の作用を利用した機械器具であつても、電気の作用が単に補助的な役割をなすに過ぎないもの、従つて、電気関係の部分が機械器具の一部に過ぎず、電気関係以外の部分が重要な機能を営み、その部分に材料も多く使われまた特に工夫が加えられなければならず、その部分にその物の特徴が存するような物の中には、六九類の電気機械器具から除外されている物が多いと考えられる。けだし、このような物は、電気機械器具とは材料の多くを異にし、その生産者も専門化して、一般電気機械器具の生産者と異なることが多いからである。ところで、峰尾正康作成の商標の類似商品例集、意匠の物品類別取扱例の写(記録九〇丁以下)及び弁理士会発行の右同例集、同取扱例の写(記録一〇九丁以下)によれば、特許庁が定めていた旧商標法施行規則のもとにおける商標の類似商品例集によると、第一七類の中に「送風機」が記載され、その細目として「渦気送風機、通風機、扇風機(電気に依るものを除く)、煽風機」と記載されている。一方、第六九類の中に「電気機械」が記載され、その細目の中に「扇風機」の記載はあるが、「渦気送風機」及び「通風機」の記載はない。そうすると、右第一七類の「扇風機」の下の(電気に依るものを除く)という記載は「扇風機」のみにかかるとみるのが相当である。もっとも、第六九類の「電気機械」の細目の中に「通風用電気機」とか「電動機風車」等の記載があるけれども、「通風用電気機」というのは、電気に依る「通風機」という意味ではなく、その字句からもうかがえるように、通風用に使用される電気機械であり、従つて、完成機械ないし全体機械ともいうべき「通風機」の部品となりうるに過ぎない物であると解せられ、「電動機風車」も同様、未だ電動の送風機ではなく、「送風機」等の部品となりうるに過ぎない物であると解すべきである。従つて、仮りに電動機ないし電動機風車をその一部とするものであつても、その他の部分が重要な機能を営み、材料も多く使用され、全体的に見て完成された送風機としての独自性を有するものであるかぎり、旧商標法施行規則一五条第六九類の電気機械ではなく、同条第一七類の「他類に属しない機械器具」に該当するものと解するのが相当である。そこで、本件電動送風機が果して送風機としての独自性を具有するかどうかについて検討するに、原判決挙示の各証拠によると、竹網貞男は昭和三二年頃電動送風機に加熱槽を取り付けた熱風発生機(乾燥機)を考案して特許権の設定登録を受け、加熱槽については、実用新案登録を、電動送風機には意匠登録を受けているのであるが、右電動送風機は電動機風車を金属製の外装の中に納め、外装はフアンケース、モーターケース、モーター軸受、風吸込口、風排出口、風圧量調整窓等からなるが、電動機風車以外の部分が重要な機能を営み、従つて、風圧量調整窓の形状、冷却部の装備の有無、外装の形状等、種々着想を働かせる余地があること、及び原判示株式会社成興電機製作所が製作し、被告人が本件商標を表示した銘板を付した電動送風機二六台も始んど右と同様のものであることが認められるので、右電動送風機二六台は全体的に完成された送風機としての独自性を有するものと認めるのが相当である。してみれば、右電動送風機二六台は旧商標法施行規則一五条一七類の「他類に属しない機械器具」に該当し、竹網貞男の登録商標の指定商品の範囲に含まれるものであって、被告人は竹網貞男の商標権を侵害したものといわなければならない。ただ、原判決は被告人が竹網貞男の登録商標の指定商品に類似する商品である電動送風機二六台の機体に登録商標と同一の商標を表示した銘板を付した旨認定しているのであるが、前記のごとく、右電動送風機二六台は指定商品に類似する商品ではなく、指定商品そのものであると認めうるのであるから、原判決はこの点において法令の解釈を誤り、事実を誤認したものというべきであるが、原判決も結局被告人が竹網貞男の商標権を侵害した事実を認定しているのであるから、右事実の誤認は判決に影響を及ぼすものではなく、原判決破棄の理由にはならない。論旨は理由がない。(奥戸新三 中田勝三 佐古田英郎)

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