大阪高等裁判所 昭和42年(う)975号 判決
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〔判決理由〕所論は、原判決は原判示第二の暴行行為および原判示第三の恐喝未遂の行為につき、前者を暴力行為等処罰に関する法律違反罪とし、後者を恐喝未遂罪として擬律し、両者を併合罪として処断した。しかし暴行は恐喝罪の構成要素であるから、暴行により相手方を畏怖せしめた状態を利用して財物を喝取したときは全体を評価して一個の恐喝行為となすべきである。原判決が右のとおりこれを分割して各別に犯罪の成立を認めたのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令適用の誤であるから原判決は破棄さるべきである。そして本件訴因もまた原判決の右認定に対応する二個の犯罪として起訴されているのであるから、暴力行為等処罰に関する法律違反の点については公訴を棄却するか、また罪とならずとして無罪の言渡をなすべきであるというにある。
よつて調査するに、原判決挙示の関係証拠によると、被告人は原審相被告人中林進ほか数名と意思を通じ、原判示日時場所において板東都一郎、今村芳優に対し、交々原判示の暴行を加え、これにより両名が畏怖しているのに乗じ、金員喝取の犯意を起し、右両名に対し原判示の言辞を申向けかつさらに危害を加えるべき気勢を示して金員を要求したが、その目的を遂げなかつた事実を認めることができる。
案ずるに、刑法二四九条一項の恐喝罪は人を畏怖させて財物を交付させることにより成立し、畏怖の手段には言語による脅迫のみならず暴行その他身体の動作による威嚇等をも含むものと解すべきである。本件においては、被告人が当初暴行に際しては金員要求の意思をもつていなかつたが、被害者がその暴行により畏怖しているのに乗じ、金員を要求し、もしこれに応じないときは更に危害を加えかねない気勢を示して金員を喝取しようとしたのであるから、右暴行はこれが暴力行為等処罰に関する法律違反に該当する場合であつても、恐喝罪の構成要件を組成するものとして当然吸収せられ、別罪を構成するものでないと解するのが相当である。
しかるに原判決が本件につき原判示第三において恐喝未遂罪の成立を認めたほか、被告人の最初の暴行につき原判示第二において暴力行為等処罰に関する法律違反罪の成立を認め、これらを併合罪として処断したのは、法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認したものであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない。この点に関する論旨は理由がある。
しかしながら本来一個の犯罪である場合、検察官がこれを数個の犯罪と判断して起訴状に数個の訴因として記載しても、裁判所はこれに拘束されることはなくこれを一罪として認定することは勿論可能であり、またその全体につき実体的判決をした以上、一部につき公訴棄却または無罪の判決をなすべき余地はなく、この点に関する論旨は理由がない。(山田近之助 藤原啓一郎 岡本健)