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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)1143号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第一、(当事者間に争のない事実)

(一) 被控訴人が第五二〇〇七一号登録実用新案権者であること。

(二) 右実用新案権は「カーテン」の構造に関するものであつて、その要件は次の四点であること。

(イ) 合成樹脂又は木竹材の剛体による扁平条杆を縦長位置に並列してあること。

(ロ) 別に適当幅員の軟質合成樹脂材による可撓性編綴テープを前記条杆に対し横方向に並列してあること。

(ハ) 且つ右各テープを相互に密接させてそれぞれ前記条杆と表裏挿通を反覆してあること。

(ニ) 右カーテン主体の上下および両側等に可撓性縁片を附設してあること。

(三) 被控訴人が、控訴人との間に昭和三五年一二月一〇日右実用新案権の実施許諾ならびに使用料支払契約を締結し、控訴人において右権利を使用したカーテンの販売先が、(1)G・カンパニー(U・R・カンパニー経由)の場合は販売価格の三パーセント、(2)P商会、M株式会社S貿易株式会社、R通商株式会社の場合は販売価格の一〇パーセントを被控訴人に支払うべきことと定めたこと。

(四) 右契約締結後控訴人において製作販売したカーテンの一部に原判決末尾添付第一図面に示す構造のもの(検甲第四号証と同様のもの、以下第一図面の製品と称する)。があつたこと。

(五) 第一図面の製品は、前記本件実用新案権の要件のうち(イ)(ロ)(ハ)の三要件を具備しているが、唯(ニ)の要件のみが第一図面の製品にあつては「カーテン主体の両側にビニール渕を、同主体の上部には金具をそれぞれ附設し、且つ上端および下端に糸を編組している」点において構造上の差異があるにすぎないこと。

第二 本件の第一の争点は、前記附設部分における構造上の差異によつて第一図面の製品が本件実用新案権の実施外品となるかどうかである。よつてまずこの点について判断する。本件実用新案公報によると本件実用新案の作用、効果として、

従来の布帛製カーテン又は竹簾式カーテン等と異り、合成樹脂材、木竹等の素材を用いた所要幅員、厚さの扁平条杆を多数並列してカーテン所要の大いさとし、これに軟質合成樹脂材の如き可撓性編綴テープをそのテープ群が何れも上下辺を密着するようにしてこれを条杆側と表裏交互に挿通編綴して一体化した故、

(1) カーテン主体として開展した場合、その条杆の相互の縦方向間隙は何れも相並ぶテープが挿通して密閉し、又テープ相互も上下両辺が次位のものと相接しているため、ここに条杆間の間隙は全て密閉遮断されて外部からの透視が不能であり、しかも他のカーテンと異り、条杆自体の堅固さにより恰も一体の壁の如く堅確で風等によつて不用意に煽られることも全くなく、重厚安定した遮閉が期せられ、更に隙間風の侵入や塵埃の内部侵入も防止されること。

(2) カーテンを片寄せ折畳むさいには各条杆はそのテープの可撓性によつて相互に折畳み重合し得る故、布帛カーテン又は簾式カーテンと同様に折畳み、片寄せが迅速であること。

(3) 汚染したさいの清掃が著しく簡単で取扱上も至便であること。

(4) 着色模様柄の構成も行なえ和洋室を問わず使用し得ること。

が挙げられているが、附設部分の可撓性縁片については一部切欠平面図に、上辺と左辺に帯状の縁片が図示され、説明欄に、右縁片は主体の上部又は上下部並びに側辺に添着された可撓性縁片であり、上部縁片には適宜位置に吊金具等を附設してカーテンレール乃至索条側に吊架自在とすることは在来のカーテンと同様であると記載されているのみで他に何らの説明もなされていない。

しかし、右公報に記載の本件実用新案の説明、添付図面ならびに登録請求の範囲の全体から判断すると、主体の上下部ならびに両側等に可撓性縁片を附設する目的が、前記カーテン主体の作用、効果(1)(特に条杆の連結)を補強し、かつ縁片の可撓性によつて同(2)の作用、効果を妨げずして所謂「縁取り」の役目を果させ、兼ねて上部縁片に吊金具等を附設しうる便宜を供するためであることを推認するに難くない。

被控訴人は附設部分の構造は本件実用新案権における副次的要件にすぎない旨主張するけれども、<証拠>によれば、他の要件と同様本件実用新案権の不可欠、必須要件であつて、その間に軽重の差はないものと認められる。

一方第一図面の製品において主体の上端、下端に糸を編組した目的は、<証拠>によると、各条杆に編綴されているビニールテープが寒暖の差によつて伸び縮みし、そのためテープが緩んで条杆がズリ落ちるのを防ぎより堅牢なものにしようということが主であるが、その他に縁片を添着する場合よりも製作工程の手間が若干省けること、幅が狭く折畳みができること等の点をも考慮して考案されたものであることを認めることができるけれども、テープの緩みによる条杆の不整列、ズリ下りは可撓性縁片の附設によつても相当程度これを防ぎ得るものと認められ、縁片の附設に代え、上、下端に糸を編組することによつて縁片の附設によつては達せられないような顕著な効果を挙げ得るものとも認められない。そうすると結局カーテン主体の作用、効果(弁論の全趣旨によれば本件実用新案のそれと第一図面の製品のそれとは同様であると認められる)を補強するという目的達成の手段としては、可撓性縁片の附設と糸の編組とは大同小異で、その間に本質的な差異があるものとは認め難く、その他の前掲効果も右結論を左右するに足る程顕著なものとは認められない。しかして可撓性縁片の附設に代えるに糸の編組をもつてすることは、古来簾において糸で扁平条杆を編組し来つた公知の事実から、当該技術の分野において通常の知識を有する者において客易に考案し得たものと認められるから、第一図面の製品における上端、下端の糸の編組は、本件実用新案における上部、下部の可撓性縁片の附設と法律上同等の価値(法的均等性)を有するものと認めるのが相当で、これに反する控訴人の主張は採用し得ない。

控訴人は、第一図面の製品において上部に金具が附設されていることをもつて、前示上、下端における糸の編組と相俟つて右製品が本件実用新案の実施品にあたらない理由として挙げるけれども、右金具は要するにカーテンを吊架する便宜のために取付けられた附加物にすぎないことが第一図面に示されたカーテンの構造からして明らかで、これによりカーテン自体の構造に差異を来すものとも認められず、また本件実用新案においても上部縁片に吊金具を附設することが予定されていること前述のとおりであるから、カーテン主体と一体をなし格別の作用、効果を有するものであることの主張立証のない金具の附設をもつて第一図面の製品が本件実用新案権の実施外品であると認める理由となすに足りない。

なお控訴会社代表者Fが第五七〇五四一号登録実用新案権を有し、右権利の要件が控訴人主張のとおりであることは<証拠>によつて明らかであるけれども、第一図面の製品が右権利の実施にかかるものと認め得ないことは原判決理由に説示するとおりであるからこれを引用する。

よつて第一図面の製品は本件実用新案権の要件を悉く具備するその実施品と認める。

第三 そこで進んで控訴人が販売した第一図面の製品の販売先および販売数量・価格について検討するに、<証拠>によると、控訴人は昭和三六年八月頃から同三八年二月頃までの間に原判決末尾添付第一目録(販売明細表―省略)のとおり、神戸市の貿易業U・Rに対し第一図面の製品を代金合計金七四九、四〇〇円で販売し、アメリカ国のLに対し同製品を代金合計金九、二五二、七二〇円で販売したことが認められ、……。

しかしてU・Rに販売する場合の本件実用新案権の使用料は販売価格の三パーセントの約であつたこと前示のとおりであるから、控訴人は被控訴人に対し同社に販売した右販売価格の三パーセントにあたる金二二、四八二円の使用料を支払うべき義務がある。

第四 最後に控訴人のLに対する前記製品の販売が契約違反であるとして、被控訴人のなす損害賠償請求について判断する。

<証拠>によると、昭和三五年一二月一〇日被控訴人と控訴人との間に締結せられた前掲本件実用新案権の実施許諾ならびに使用料支払契約において、控訴人において右権利を使用した製品を販売する場合の販売先を、U・R、P商会、M株式会社、S貿易株式会社、R通商株式会社の五社に限定し、控訴人はこれに違背しないことを約したことが認められるから、控訴人が右限定外のLに対し前示の如く本件実用新案権の実施品を販売した行為は右契約に違反するものというべく、控訴人はこれによつて被控訴人に生ぜしめた損害につき賠償義務があるものといわなければならない。控訴人はLに対する販売は無契約の無権限行為であるから、不法行為を構成するは格別、契約違反の責を負うべきいわれはない旨主張するけれども、控訴人は全くの無権限者ではなく、本件実用新案権の実施権を与えられ、唯契約上その実施品の販売先についてのみ制限せられていたものにすぎないから、別に不法行為をも構成するかどうかはさておき、契約違反ともなることは多言を要しない。そこで損害額について考えるに、控訴人が前記限定された五社に販売する場合の使用料はU・Rに対し販売する場合は販売価格の三パーセントであり、その他の四社に対し販売する場合は販売価格の一〇パーセントであること前示のとおりであるが、<証拠>によると、U・Rに対しては控訴人がカーテンを大量に販売する予定であつたため、使用料を特別に低額にし、一般的にはつまりその他に販売するときは使用料を販売価格の一〇パーセントとする趣旨で使用料についての契約がなされたことが認められる。すると別段の事情がない限り被控訴人は控訴人のLに対する販売により一般の使用料(販売価格の一〇パーセント)に相当する得べかりし利益を失つたものと認めるのが相当であるから、控訴人は被控訴人に対し前示リンズレに対する販売価格九、二五二、七二〇円の一〇パーセントにあたる金九二五、二七二円を損害賠償として支払うべき義務がある。

被控訴人は、従来右同金額を使用料として請求し、原審において認容せられたが、当審において訴を変更し、契約違反による損害賠償請求に改めたので、Lに対する販売関係については旧訴の取下と新訴の提起があつたこととなる。

しかして右旧訴と新訴とは請求の基礎が同一であることが明らかであるから、右訴の交換的変更は適法として許容すべきものであり、控訴人は新訴に異議なく応訴しているから旧訴の取下について暗黙の同意をしたものと解する。

第五 よつて被控訴人の本訴請求は旧訴(取下部分を除く)、新訴とも正当として認容すべきものと認め、旧訴については控訴を棄却し、新訴については前認定の金額の支払を命ずる。(岡垣久晃 島崎三郎 新居康志)

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