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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)1762号 判決 1968年12月24日

理由

当裁判所は控訴人の本訴請求を失当とし、したがつて本件控訴を理由がないものと認める。その理由は次の(一)ないし(三)の判断を付加するほか、すべて原判決の理由と同一である。

(一)  訴外柚木弘が本件各手形の偽造につき訴外西沢俊郎と共犯関係にあつたと認定するに足る証拠はないので、同人は単に右各手形の悪意の取得者にすぎないものと認定すべきである。

(二)  当審における各証拠調の結果によるも原判決の各事実認定を動かすに足りない。

(三)  当裁判所も民法一一〇条を手形行為に適用するについては、同条にいわゆる第三者を当該手形行為の直接の相手方に限られるものと解する。その理由は、右法条にいわゆる正当の事由があるか否かは、本来権限を越えた代理人が代理行為をなす際の具体的事情によつて決すべきものであつて、手形債務者が将来の手形取得者に対しても債務を負担するに至ることが予定されているにしても、そのため民法一一〇条の適用上の本来のあり方に変動を生ぜしめるものと解するほどの根拠を見出しがたいからである。況んや、本件のごとく手形行為の代理の形式がいわゆる記名捺印の代行の方式で行なわれ、代行者たる西沢の氏名が手形上に表示されていないため、控訴人においては、右記名捺印が代行者によつてなされたことさえ知つていたことを認定できないのであるから、控訴人が右代行者の権限を信じたというごとき事情は問題となる余地がないのであつて、この点より考えても法律上保護に値しないのである。

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