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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)1879号 判決 1968年4月26日

控訴人 新谷シヅ

右訴訟代理人弁護士 柴田耕次

被控訴人 久次マスエ

右訴訟代理人弁護士 大月伸

主文

原判決を取り消す。

被控訴人の控訴人に対する、高槻市富田町五丁目二、三六一番地の一、宅地一一四、一一平方米につき、昭和三二年六月一六日の相続を原因として被控訴人の持分を三分の二、控訴人の持分を三分の一とする共有の所有権取得登記手続を求める訴は、昭和四一年一二月一日の被控訴人の訴の取下げによって終了した。

当審における訴訟費用は被控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠関係は、控訴人の次の主張を付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する。

原審において被控訴人は、当初控訴人が昭和三八年三月二八日、高槻市富田町五丁目二、三六一番地の一宅地一一四、一一平方米(以下本件土地という。)につき、(1)同三二年六月一六日の亡新谷大蔵の死亡による相続を原因としてなした所有権取得登記の抹消登記と(2)これを同じ相続を原因として被控訴人が三分の二、控訴人が三分の一とする共有の所有権取得登記をせよとの各手続を求めていたが、その後昭和四一年六月二〇日付の書面でこれを訂正し、相続による所有権取得登記手続は、相続人全員が申請すれば保存行為としてなし得るからという理由で請求の趣旨(2)を減縮し、(1)の抹消登記手続のみを求める請求とした。しかるに、原審は、この減縮した分について判決しているので、これは、民訴法一八六条に違反している。

理由

職権を以て調査するに、本件記録によれば、被控訴人は、当初訴状において、本件土地の前主新谷大蔵は、昭和三二年六月一六日死亡して相続が開始され、相続人としては妻の控訴人と直系卑属たる被控訴人と訴外新谷芳子の三名があるところ、控訴人は、被訴控人を無視し、かつ新谷芳子は被相続人の生前に相続分を超過する贈与を受けたという理由で控訴人に全部相続権があるとして単独の所有権取得登記をした。しかし、これは被控訴人の相続分を侵すものであるという理由で、被控訴人は、控訴人の単独相続による所有権取得登記を抹消し、これを被控訴人が三分の二、控訴人が三分の一の共有持分を有する旨の所有権取得登記とせよとの判決を求めていたが、その後昭和四一年八月三一日控訴人に送達された請求の趣旨訂正申立と題する書面を以て、相続に因る所有権取得登記手続は相続人全員が申請する場合は保存行為としてなし得るからという理由でこの請求を減縮し、控訴人もこれに対しその後三ヶ月以内にこれに異議を述べた形跡のないことが明らかであり、当審においてもこれについて異議のないことを述べている。従って、この被控訴人が共有持分による登記を求めている請求は、控訴人が被控訴人の前記取下げ書が送達された昭和四一年八月三一日より三ヶ月以内に異議を申立てなかったので、同年一〇月三一日の経過とともに取下げに同意したものと看做され、これによりこの請求は終了したというべきである。

しかるに、原審はこの部分について被控訴人の請求を容れ、却って請求が依然残っている控訴人を単独所有権者とする登記の抹消請求については何らの裁判をなしていないことが原判決によって明らかであるから、その措置は民訴法一八六条に違反し、失当というほかない。

よって、訴の下げによって終了した請求についてなした原判決を取り消し、それが既に終了していることを明らかにするため、終了宣言をすることとする。尚、原審が判断していない被控訴人の前記請求は、依然原審に係属しているのであるから、原審は、口頭弁論期日を指定して、この部分について判決すべきものである。よって、訴訟費用の負担につき、民訴法九五条、九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡野幸之助 裁判官 宮本勝美 菊地博)

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