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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)1976号 判決 1968年12月23日

控訴人

京栄陸運株式会社

代理人

木村健次

控訴人

小川武一郎

代理人

高橋秀三

被控訴人

八木町農業協同組合

代理人

田辺哲崖

田辺照雄

主文

本件各控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同趣旨の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の提出・援用・認否は、控訴人小川において当審における同控訴人本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は被控訴人の控訴人らに対する本訴請求をいずれも正当として認容すべきものとするが、その理由は、次のとおり附加訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一原判決五枚目表四行目以下同八行目までの部分を一ところで商法第二六五条は、取締役個人の利害と会社のそれとが衝突する場合において、取締役が会社の不利益すなわち犠牲において自己または第三者の利益を図ることを防止せんとした法意にほかならないから、取締役のなした取引のうち、実質上会社に不利益を及ぼす虞れのない場合は、同条の適用を受けないものと解するのが相当である。そして前掲甲第一号証の一(借用金証書)によれば、証書上、訴外西村健一が訴外丹波運輸株式会社の代表者として、西村個人の主債務につき、その債権者である旧八木町農業協同組合との間に連帯保証契約を締結した事実が認められるのであつて、右のように連帯保証契約を締結することは、一般的に、取締役である西村個人(主債務者)には利益であるが、同会社(連帯保証人)には不利益を及ぼす行為であり、同会社の不利益すなわち犠牲において西村個人の利益を図る虞れがないものとはいえない。しかし本件においては後記認定のように、丹波運輸株式会社が自己の会社運営資金にあてるため、旧八木町農業協同組合から本訴金員を借受けようとしたが、同組合の組合員でないため借主たる資格を欠き、そのため借主を組合員である西村個人名義、その連帯保証人を同会社名義とする方策を執ることによつて金融の目的を達したものであり(なお原審証人西村健一の証言ならびに弁論の全趣旨に徴すると、同会社の帳簿上にも、本訴金員につき、同会社の旧八木町農業協同組合よりの借入金として記載されていることが認められないこともない)、したがつて西村が同会社に資金の融通を得させる方策として自らが主債務者となり、かつ同会社の代表者として連帯保証契約を締結したとしても、これにより、同会社は事実上金融を受けうる利益があるとしても、同会社を借主名義として金融を受ける場合と比較し、些かの不利益も存しないものというべく、それ故西村が代表者としてなした連帯保証契約につき商法第二六五条を準用もしくは類推適用しえないものといわなければならない。」と訂正する。

二原判決五枚目裏一〇行目以下同一二行目までの部分を「控訴人小川においてその成立を認める甲第一号証の三、原審証人石田稔、同福島弥三の各証言を綜合すると、控訴人小川は昭和三八年一二月一八日西村の本件主債務につき連帯保証したことが認められ、当審における控訴人小川本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信しがたく、そのほかに右認定を覆えする足りる証拠はない。」と訂正する。

よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第九三条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。(三谷武司 鈴木辰 行西内辰樹)

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