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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)615号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(三) 控訴人の抗弁(三)については、右のように昭和三七年一月分ないし五月分の賃料の弁済供託は争いがないのであるから、被控訴人が昭和三九年三月八日到達の書面で昭和三七年一月一日以降の延滞賃料を催告したのは、右供託にかかる五か月分の賃料に関するかぎりは、過大催告といわざるをえない。しかしながら、右催告は、合計二七か月分の賃料を請求しているのであるから、過大催告といつても、二七か月分中の五か月分にすぎず、過大の程度はそれほど著しいものということができないのみならず、請求額全部の提供がなければ絶対に受領しないという意思を認めるべき証拠もない。したがつて、過大催告のゆえをもつて右催告を無効とすることはできない。なお、控訴人は被控訴人が陳謝するまでは賃料を支払わないという約定であるから右催告は無効であると主張するけれども、前記(一)で説示したように、右約定自体を認めることができない。以上要するに、抗弁(三)も採用のかぎりでない。

(四) 控訴人は、抗弁(四)において、賃料の催告および条件付賃貸借解除の内容証明郵便に接したのち、被控訴人の代理人である南政雄弁護士に電話をした結果、期限の猶予その他の合意が成立した、と主張する。そして、<証拠>によると、控訴人は、その友人で南弁護士を知つている伊東修とともに、同弁護士に電話したところ、同弁護士が「滞つている家賃をもつてくればなんとか話をしてやろう」といつてくれたので、伊東や控訴人のほうでは、内容証明郵便が撤回されあるいは従前どおり賃借できるものと受け取つたことを認めることができる。しかし、いやしくも弁護士であり、内容証明という手続までとつて催告や条件付解除をしているのに、その効力を失わせる趣旨の意思表示を電話だけですませることなどおよそ考えられないところであるから、南弁護士の意思表示を右の趣旨に解することはできないし、右に認定したような電話があつたからといつて内容証明郵便の撤回があつたなどと控訴人が考えたことは、軽率のそしりを免れない。したがつて、右電話による応接があつただけでは、いまだ控訴人主張の(四)の抗弁事実を認めることはできず、ほかには、右事実を認めるに足りる証拠はない。

(五) 控訴人は、抗弁(五)について、南弁護士との間で、ある程度の話合いができた以上、催告手続の効果を主張しないと思いやすくわずか三日の期間しかおかない催告は失効していると主張する。そして、控訴人のほうでは、南弁護士が電話でいつたことを自己に有利に解釈して内容証明郵便の撤回があつたとか従前どおり賃借できると考えていたことは、右(四)で認定したところである。しかし、そのように考えること自体ははなはだ軽率であることも、同じく右(四)で説示したとおりであるのみならず、一両日の遅れはあつても延滞賃料の全額を不及的すみやかに提供して南弁護士と交渉しているならともかく、これを認めるべき証拠もない。そうすると、被控訴人から催告および条件付契約解除の効果を主張されてもやむをえないものというべきであり、抗弁(五)も採用することができない。

二 以上のとおりで、昭和三七年一月分ないし五月分の賃料の弁済供託を除外すれば、控訴人の抗弁はいずれも採用できない。したがつて、被控訴人の本訴請求中、賃貸借の終了を理由とする本件家屋の明渡しおよび昭和三七年六月一日以降賃貸借終了までは賃料として終了後右明渡しがすむまでは賃料相当の損害金として一か月四、五〇〇円の割合による金員の支払を求める部分は、理由がある。

(井関照夫 藪田康雄 賀集唱)

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