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大阪高等裁判所 昭和43年(ツ)81号 判決 1968年11月28日

上告人

松山亀夫

被上告人

岡本又四郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人松山亀夫の上告理由第一点について。

宅地建物取引業者の依頼者に対する報酬請求権は、業者と依頼者との間に特約がないかぎり、業者の媒介により当事者間に売買等の契約が有効に成立することにより発生するもので、その契約が履行されたか否かは問うところでなく、業者はその旨の契約書を作成して当事者に交付したときは報酬を請求できると解するのが相当である。

しからば、原判決が、宅地建物取引業者である被控訴人の媒介により上告人と佐古福市間に上告人所有の宅地および建物の売買契約が成立し、即日被上告人はその旨の契約書を作成して上告人に交付した事実を確定したうえ、右と同旨の判示理由により上告人の所論抗弁を排斥し、被上告人の本件報酬請求を認容したのは、正当であつて、原審の右判断になんら所論の違法はない。

所論慣習の存在は上告人が原審で主張しなかつたものであり、所論は、ひつきよう独自の見解にたつて原判決を論難するものであつて採用できない。

同第二点について。

被上告人が買主佐古福市と共謀のうえ上告人に損害を与えた旨の所論主張は、上告人が原審で主張しなかつたところであり、原審がその説示した理由により上告人主張の損害賠債請求権による相殺の抗弁を排斥した判断は正当である。論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い主文のとおり判決する。」(関根小郷 平峯隆 斎藤平伍)

上告人の上告理由

一、原判決ではその理由として仲介業者の義務履行は業者がその契約書を作成しこれを当事者に交付することにより発生するものとして商法第五五〇条第一項の規定を適用し判示してあるが宅地建物取引業界の実情というか慣習というかこれによれば取引を業者が成立させて始めてその報酬規定に基く報酬を請求受領しているのが現状の慣習というべく本件の如く被上告人は契約はせしめたがその取引は上告人が売買残代金請求の訴を以つて取引が完了したのであり被上告人は取引を完成させたものとはちがい宅地建物取引員の業界に於ける慣習法からして被上告人の請求は失当と言わねばならないよつて上告人は本件報酬金請求の基礎となるべき取引の実態が裁判の結果成立したるときは被上告人の努力に依り右売買が成立完了したものでないから被上告人は何等上告人に対してその報酬請求権は発生しないもので此の点に於て原判決は法令違反引いては憲法違反あるものである。

二、<省略>

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