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大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)1906号 判決 1972年2月07日

控訴人 弘容信用組合

理由

当裁判所も控訴人の請求は理由がないと判断するが、その理由はつぎに訂正、附加するほかは、原判決五枚目裏九行目から同七枚目表末行まで記載の判断説示と同一であるから、これを引用する。

<訂正部分省略>

そこで被控訴人らの時効消滅の抗弁について判断する。

《証拠》によれば、訴外組合は、本件手形について、いずれも不渡直後、被控訴人会社に対して各不渡手形の買戻請求をしていることが認められ、ほかにこの認定を覆えすに足る証拠はない。

そして、本件各手形が不渡となつたことは当事者間に争いがなく、本件各手形が支払呈示期間内に呈示されたことは、被控訴人らが明らかに争つていないので自白したものとみなす。

本件手形買戻請求権行使の結果生ずる買戻代金債権は、被控訴会社の前記取引約定により生じたものであるから商法の適用を受けるのであり(商法三条、四条、五〇三条)、その消滅時効の期間は、五年である。そうすると、時効の中断のない限り、おそくとも昭和四一年五月一日を経過することにより消滅するものである。

そして、一件記録によれば、本件訴提起が昭和四一年九月八日であることは明らかである。

そこでつぎに控訴人の債務の承認の主張について判断する。控訴人は被控訴人らが昭和三六年九月三〇日に承認をした旨主張するので、この点について判断する。

同日被控訴人会社が債務の承認をし本件各手形の延滞利息を支払つた旨の主張にそう《証拠》は、いずれも《証拠》および弁論の全趣旨に照らして採用し難く、ほかに控訴人の右主張事実を認めるに足る証拠がない。また、被控訴人片岡、同中村が控訴人主張の右日時頃債務承認をしたことを認めるに足る証拠はない。従つて控訴人の右主張は採用できない。

つぎに控訴人の被控訴人会社が昭和四〇年九月初旬に承認をした旨の主張について判断するにこの主張事実を認めるに足る証拠がないので、この主張も採用できない。

つぎに控訴人は昭和四一年六月一〇日付控訴人より被控訴人中村に対する催告が時効中断になるとの主張およびこれに対する昭和四一年六月二三日付被控訴人中村の回答書により、同被控訴人は本件債務の承認をしたとの主張をするが、これらの主張は前認定のとおりそれより前に既に時効が完成している以上、中断事由としてはその前提を欠き、理由がないが、ただ右主張中債務承認の主張は、控訴人の時効完成後の時効利益の放棄の主張の前提をなしているので、以下この点について判断する。

《証拠》によれば、同被控訴人は、控訴人から同被控訴人に対する昭和四一年六月一〇日付本件買戻代金についての連帯保証債務の履行についての催告書(同月一三日発信書留内容証明)に対して、同年同月二三日付同月二四日発信の甲第六号証の一の回答書を出しており、その頃右回答書は控訴人に到達したものと認められるが、右回答書で同被控訴人は右債務の承認をしたものとは認められず、ほかに右主張事実を認めるに足る証拠がないので、右控訴人の主張も採用できない。

その余の控訴人の主張は、いずれも被控訴人中村の右債務の承認がなされたことを前提としているので、これらの主張も採用できない。なお、控訴人主張の右時効利益の放棄が認められないのであるから、控訴人主張の仮差押と本訴の提起は時効完成後のことであり、時効の中断として何らの法律効果をも生じない。

以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却

(裁判長裁判官 増田幸次郎 裁判官 寺沢栄 道下徹)

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