大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)465号 判決 1970年3月26日
主文
一、本件控訴を棄却する。
二、附帯控訴に基き、原判決中被控訴人(附帯控訴人)ら敗訴部分を取消す。
三、附帯被控訴人は附帯控訴人ら各自に昭和四〇年四月四日以降別紙目録記載の建物明渡済みに至るまで一ケ月三万七三〇円の割合による金員を支払え。
四、訴訟費用は第一審並びに第二審の控訴および附帯控訴を通じ、全部控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。
五、この判決の主文第三項は仮りにこれを執行することができる。
事実
控訴人(附帯被控訴人―以下控訴人という)は「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする」との判決と附帯控訴につき附帯控訴棄却の判決を求め、被控訴人(附帯控訴人―以下被控訴人という)らは「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決並びに附帯控訴により「附帯被控訴人は附帯控訴人らそれぞれに対し全体として昭和四〇年四月四日以降別紙目録記載の建物明渡済みに至るまで毎月三万七三〇円の割合による金員を支払え。附帯控訴費用は附帯被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、
被控訴人らにおいて、(一)別紙目録記載の建物(以下本件建物という)の昭和四〇年四月四日当時における適正賃料額は一ケ月三万七三〇円であつて、被控訴人らは控訴人の明渡義務不履行により右賃料相当額の損害を被つている。よつて、被控訴人らは本件控訴に附帯して控訴人に対してさらにこれが支払を求める。(二)更生会社三善工業株式会社(以下更生会社という)の管財人は従来松田良治・酒井泰平の両名であつたが、昭和四二年一一月四日金沢地方裁判所の決定により柴田利雄が管財人に追加選任せられたと述べ、当審における鑑定人佃順太郎の鑑定の結果を援用し、
控訴人において、被控訴人ら主張の右(二)の事実を認めると述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。
理由
当裁判所は、本件建物は更生会社が控訴人を訴外日善実業株式会社(以下訴外会社という)の専務取締役として招請するに際して、社宅として提供する目的で買取り、昭和三九年九月二日ごろ控訴人に対しこれを無償で貸渡したもので、該使用貸借は更生会社が昭和四〇年四月三日控訴人に対し、控訴人が同年二月二六日任期満了により訴外会社の取締役たる地位を喪失したことを理由としてなした契約解除の意思表示によつて終了するに至つたものと認定し、その結果控訴人は被控訴人らのと判断するのであつて、その理由は次のとおり附加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これをここに引用する三名に対し本件建物を明渡し、かつ、右解除後明渡済に至るまで一ケ月三万七三〇円の割合による損害金の支払義務あるも
一、更生会社の管財人は当初は松田良治酒井泰平の両名であつたが、昭和四二年一一月四日金沢地方裁判所の決定により柴田利雄が新たに管財人として追加選任されたことは記録に編綴の三善工業株式会社の登記簿の抄本によつて明かである。
二、本件建物およびその敷地の売買契約締結に際し控訴人が手附金五〇万円を支払つたことは、さきに引用した原判決の理由説示に明かなところであつて、特段の事情が認められない本件においては、右の五〇万円は一応控訴人が自己の負担において支出したものと認めるのが相当であるけれども、原審証人河辺光雄の証言によれば、昭和四〇年一〇月末更生会社の倒産に際し、右手附金五〇万円は訴外会社において控訴人に返還支払うこととし、当時訴外会社が控訴人に対して有していた約一、五〇〇万円に達する仮払金(実質は貸付金)債権と対当額による相殺をして決済している事実が認められるから、控訴人が前記手付金五〇万円を支出した一事をもつては、いまだ前段認定を左右するに足らない。
三、控訴人は被控訴人らに対し、本件建物の明渡義務不履行によりこれが使用収益を妨げ、これが賃料額に相当する損害を被らしているものというべきところ、本件建物の昭和四〇年四月四日当時における適正賃料額が一ケ月三万七三〇円であることは、当審における鑑定人佃順太郎の鑑定の結果によつて肯認されるので、控訴人は被控訴人ら各自に右同日以降本件建物明渡済みまで前記割合による賃料相当損害金を支払う義務あるものというべきである。
よつて、本件控訴を理由なしとして棄却し、被控訴人らの附帯控訴にかかる請求を認容することとし、民事訴訟法第八九条第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。
別紙
目録
大阪府豊中市大字走井三二八番地の九地上
家屋番号同所三八〇番
一、木造瓦葺二階建居宅 一棟
床面積 一階 八九・五二平方メートル(二七坪〇合八勺)
二階 四四・〇六平方メートル(一三坪三合三勺)