大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和44年(く)103号 決定 1970年1月20日

主文

原決定を取消す。

本件刑執行猶予の言渡取消請求を棄却する。

理由

本件即時抗告申立の理由は、別紙抗告申立書と題する書面のとおりである。

本件記録によれば、申立人は昭和四二年一二月五日神戸簡易裁判所において住居侵入罪により懲役六月、二年間刑執行猶予の判決の言渡を受けこれが同年一二月二〇日確定した後右猶予期間内の同四四年一〇月五日更に窃盗罪を犯しこれにより同年一一月一日神戸簡易裁判所において懲役七月、未決勾留日数一〇日算入の判決の言渡を受けこれが同年一二月一〇日確定したため、同月一二日神戸地方検察庁検察官より前記刑執行猶予の言渡の取消を請求し、これに基づき同月一五日原裁判所において刑法二六条一号により前記刑執行猶予の言渡が取消されたこと、申立人は同月一六日右取消決定の告知を受け翌一七日これに対し大阪高等裁判所に即時抗告を申立てたことが明らかである。

そこで考えるに、即時抗告についてはその提起期間内およびその申立があつたときはその申立に対する裁判のあるまで抗告の対象となつた裁判(原裁判)の執行は停止されるから(刑事訴訟法四二五条)、適法な即時抗告のあつた本件においては、原裁判所のした前記刑執行猶予言渡の取消決定にかかわらず、その猶予期間は進行し、既に昭和四四年一二月一九日の満了と同時に右猶予期間が経過し(ちなみに、当裁判所が本件記録を受理したのは右期間経過後の同月二〇日である)、今では前記執行を猶予された刑の言渡自体刑法二七条によりその効力を失い、もはや右刑を執行できないことは明らかである。してみると、右刑の執行猶予の言渡を取消した原決定をそのまま維持することは明らかに正義に反するものと認められるから、本件即時抗告は結局理由があることに帰する。

よつて、刑事訴訟法四二六条二項を適用し、主文のとおり決定する。(河村澄夫 吉川寛吾 村上保之助)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例