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大阪高等裁判所 昭和44年(ネ)634号 判決 1974年2月15日

控訴人

万崎一策

右訴訟代理人

前田嘉道

被控訴人

小林毅一

外二名

右訴訟代理人

竹西輝雄

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一請求原因について

本件土地が控訴人らの所有に属すること、控訴人が右土地上に本件建物を所有し、その敷地(その面積は当審鑑定の結果によれば約48.30平方メートルであることが認められる。)を占有していることは当事者間に争なく、<証拠>によれば、平井勇が被控訴人らから建物所有の目的で賃借している本件土地の隣の44.16平方メートルの土地の賃料月額は昭和四二年一一月一、五〇〇円、四五年以降二、三〇〇円であることが認められ、この事実によれば昭和四三年一二月四日当時の本件土地の相当賃料月額が一、七〇〇円であるとの被控訴人らの主張は首肯しうる。控訴人は本件土地につき地代家賃統制令の適用があると主張するが、同令適用の基礎となる事実関係につき主張立証を欠くから、右主張は採用できない。

二控訴人の抗弁について

佐野利尚が本件土地を賃借し、その上に本件建物を所有していたこと、控訴人が本件建物につき昭和三八年二月一日佐野から所有権移転登記を受けたことは当事者間に争なく、<証拠>によれば、右移転登記は、控訴人が昭和三七年一二月末頃佐野から本件建物の所有権と本件土地の賃借権とを買受けた事実に基づき、これを登記原因としてなされたものであることが認られる。しかし他方、<証拠>によれば、本件土地はもと本多道明の所有に属し、佐野がこれを賃借してその上に本件建物を所有していたが、同人は右賃借権とともに右建物を安部万一に譲渡したこと、小林健夫は昭和二七年頃本多から本件土地を買受け、その直後佐野から安部への右賃借権譲渡を承諾し、昭和二八年一月一日安部との間であらためて本件土地の賃貸借契約を締結したことがそれぞれ認められる。

(一)  甲から甲所有の土地を建物所有の目的で賃借した乙が、賃借土地上の建物の所有権を敷地賃借権とともに丙に譲渡した場合(乙から丙への建物所有権移転登記未経由)、甲が、乙から丙への敷地賃借権譲渡を承諾した後、乙が、右建物所有権を敷地賃借権とともに丁に譲渡し、乙から丁への建物所有権移転登記が経由されたとき、丁は借地法一〇条による建物買取請求権を取得しないと解するのが相当である。けだし、乙から丁への建物所有権移転登記以前に、甲が乙から丙への敷地賃借権譲渡を承諾したことにより甲乙間の敷地賃貸借は消滅しているからである。

(二)  右設例の場合、甲が、乙から丙への敷地賃貸借権譲渡を承諾する前に、乙が、右建物所有権を敷地賃借権とともに丁に譲渡し、かつ、乙から丁への建物所有権移転登記が経由されたとき、丁は借地法一〇条による建物買取請求権を取得すると解するのが相当である。けだし、甲乙間の敷地賃貸借は、乙から丙への敷地賃借権譲渡により直ちに消滅するものではないからである。

本件は右(一)の場合に該当するから、控訴人は借地法一〇条による建物買取請求権を取得しない。

二上記認定によれば、控訴人は権原によらないで本件土地を占有し、被控訴人らに対し、一月一、七〇〇円の額の賃料相当の損害を与えているものというべきであるから、所有権に基づき本件建物を収去して本件土地の明渡及び訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四三年一二月四日以降右明渡すみまで一月金一、七〇〇円の割合による賃料相当損害金の支払を求める被控訴人らの本訴請求は理由がある。したがつて右請求を認容した原判決は正当で本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 大久保敏雄)

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