大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和44年(ラ)555号 決定 1970年2月26日

理由

本件抗告の趣旨及びその理由は別紙に記載したとおりである。

(当裁判所の判断)

しかしながら、建物の競売手続においては、その建物の敷地の使用権原の有無とは無関係に建物だけを競売するものであつて、敷地の使用権原は競売手続外において別途に処理されるべきものである。したがつてまた、建物の最低競売価額算定の基準となる鑑定人の鑑定評価も借地権の存否とは無関係に建物のみについてなされるものであつて、本件競売不動産の鑑定書には建物自体の価額のほか場所的価値の価額が加えられているけれども、右は当該建物の評価をなすに当つて、その建物の所在する場所的利益を参酌してその価額を算定したことを示すにとどまり、これをもつて借地権価額を含めたものということはできないので、抗告人がその結果借地権が存するものと誤信して競買の申出でをしたとしても、それはいわゆる縁由の錯誤にすぎないものというべく、これがため競買の申出でを無効ならしめるものではない。また、賃貸借取調べにおいても、当該建物についての賃借権の有無および賃借条件等調査すれば足り、その建物の敷地についての権利関係までを調査する必要はないのであるから、これを取調べなかつたことについても何らの違法はない。したがつて抗告人の主張はすべて採用できない。

そのほか、一件記録を調べてみても、競売法三二条二項で準用する民訴法六八一条二項三項六七二条各号に該当する事由があるとは認められず、そのほか、原決定にはこれを取り消すに足る違法の点はみあたらない。

よつて、本件抗告を棄却

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例