大阪高等裁判所 昭和44年(行コ)15号 判決 1970年4月06日
大阪府松原市一津屋町二二二番地の一一
控訴人
板東昭
右訴訟代理人弁護士
宮浦要
大阪府八尾市本町二丁目一一四番地
被控訴人
八尾税務署長
山戸久夫
右指定代理人検事
伴喬之輔
同法務事務官
西村省三
同大蔵事務官
坂元亮
同
徳修
右当事者間の更正決定取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人の昭和三九年度分の所得税につき昭和四〇年一〇月一四日附でした更正処分のうち、総所得金額五九五、四五〇円を超え二、三三二、二五〇円に達する迄の部分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実に関する陳述、証拠の提出援用認否は、控訴代理人において当審証人中西清之の証言を援用したほか、原判決事実摘示と同一(但し原判決末尾添附目録中、一行目の「八一番地上」を「八〇番地の一、同番地の二、同番地の三、八一番地の一、同番地の二、同番地の三地上」と、同二行目の家屋番号中、「八一番地の二」を、「八一番の二」と各訂正)であるから、これをここに引用する。
理由
一、 当裁判所は控訴人の本訴請求を失当とするものであつて、その理由は原判決理由が説示するとろと同一であるから、これをここに引用する。当審証人中西清之の証言中、本件建物は控訴人が鴻野あさ江から買受けた上、名神土地建物株式会社に売渡したかの如き趣旨の供述部分は、同証言の他の部分、即ち、本件鴻野あさ江所有土地建物の売買は、訴外安藤建設株式会社の依頼により、不動産売買周旋業を営む前記名神土地建物株式会社が右土地を更地として入手しようとしたことに端を発し、そのためには地上建物の賃借人からその賃借建物の明渡を受けてこれを取毀つ必要があつたので、その明渡の交渉は専ら買主である右会社においてその衝に当つたものであり、鴻野あさ江は単に精神的な協力だけはするが、金銭的な負担は一切しないとの約束でこれに干与せず、右会社は、転売先である前記安藤建設会社から入手する金員の内から、右明渡の交渉に伴う費用を支出する方針の下に交渉を行ない、それが纒つたもので、控訴人関係部分の本件建物についても、これに関する鴻野あさ江と右会社との売買契約書(乙第八号証の一)が作成された後である昭和三九年一〇月上旬になつて、鴻野あさ江から控訴人に対する本件建物の売渡証書(甲第四号)が作成されたもので、中西清之(右会社の代表取締約)は、決して鴻野の代理人となつて本件建物の売買契約をしておらず、本件建物を含む右地上建物は、右会社に対する所有権移転登記さえもしないで、右会社の手により取毀した旨の供述と対照すると、事の真相を述べたものとは受取ることができないから、右原判決認定事実を覆えすに足りず、他に右判断を左右するに足る証拠はない。
二、 してみると控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長判事 宮川種一郎 判事 竹内貞次 判事畑郁夫は転任のため署名押印することができない。裁判長判事 宮川種一郎)