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大阪高等裁判所 昭和45年(行コ)16号 判決 1971年1月28日

京都市東山区山科安朱馬場東町四五番地

控訴人

松岡卯三郎

大阪市東区大手前之町一番地

被控訴人

大阪国税局長

吉瀬維哉

右指定代理人

北谷健一

村川武征

古田邦保

中島国男

和泉勉

右当事者間の国税徴収令状一部取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴人の当審新訴を却下する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。東山税務署長が昭和四〇年七月三〇日になした、控訴人の昭和三五年分所得税の再更正決定および加算税賦課決定を取消す。」との判決を求めたほか、当審新訴として「園部税務署長が昭和三九年九月三〇日になした、控訴人の昭和三五年分所得税の決定および加算税賦課決定を取消す。」との判決を求め、被控訴代理人は主文一、三項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実に関する主張及び証拠の提出は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実摘示と同一(但し、原判決二枚目表四行目冒頭の「一、」の次に、「園部税務署長が昭和三九年九月三〇日控訴人に対してなした昭和三五年分所得税の決定、及び加算税賦課決定(納期限同年一〇月三一日)並びに」を、三枚目裏一〇行目に「本件各処分は」とある次に「園部税務署長または」を、同一二行目末尾に「また、園部税務署長の決定は東山税務署長の再更正に吸収されているので、後者についてのみ取消を求めるべきである。」を各付加し、四枚目表一行目の「本件各処分は」から二行目の「なされているから、」までを消除)であるから、これを引用する。

一、控訴人の主張

(一)  本件山林譲渡の必要経費の主張を次のとおり改める。

1. 本件山林の前所有者(控訴人に対する売主)西はなに支払つた売買代金八三〇万七、八〇八円。

2. 西はな・控訴人間の本件山林売買の仲介人南良太郎に支払つた仲介手数料五一万円。

3. 所有権移転登記費用中、控訴人が負担した分担金三万五、〇〇〇円。

4. 山林買受資金として東京都世田谷区玉川町二の二六玉川電機株式会社から借受けた九〇〇万円に対する五六箇月分の利息一五三万二、〇〇〇円。

5. 控訴人からの買主日本セメント株式会社との契約にもとづき、入山に必要な道路、橋を設置した工事費三五八万九、〇四〇円。

6. 控訴人が本件山林買受のため、昭和三二年二月から昭和三五年七月まで、亀岡市の当時の控訴人宅より高概市の西はな宅へ四〇箇月間通つた経費一五〇万円(以上合計一、五四七万三、八四八円)

(二)  従つて、控訴人が本件山林の譲渡によつて得た所得は、日本セメント株式会社から売買代金として現実に受領した一、六〇〇万円から前記必要経費(合計一、五四七万三、四八四円)を差引いた五二万六、一五二円にすぎないから、これと異る園部税務署長の決定処分、東山税務署長の再更正処分は違法である。

(三)  当審では、東山税務署長のした再更正処分及び加算税賦課処分のほか、園部税務署長のした決定処分及び加算税賦課処分についても、その取消を求める。

なお、東山税務署長は本件の処理一切を被控訴人に委ね、被控訴人はこれを引受けて、控訴人を協議団まで出向かせたり、さらには強制徴収までしておきながら、本訴において東山税務署長に責任をこじつけるのは不当であり、控訴人は被控訴人を相手方として本件各課税処分の取消を求める。

二、被控訴代理人の主張

被控訴人が昭和四一年七月二九日にした控訴人に対する二箇の裁決は、いずれも遅くとも同月末日までに控訴人に裁決書(謄本)を控訴人に送達して告知した。

理由

処分取消の訴は、行政事件訴訟法第一一条第一項により、処分をした行政庁を被告として提起しなければならないものと定められており、このことは、処分庁の上級庁(本件では大阪国税局長)が審査庁として関与したり、後続処分(例えば課税処分に対する徴収処分)をしたとしても、変りがない。ところが控訴人は、昭和三九年九月三〇日になされた決定処分及び加算税賦課処分の処分庁である園部税務署長、昭和四〇年七月三〇日になされた再更正処分及び加算税賦課処分の処分庁である東山税務署長を被告とせず、大阪国税局長を被告として右各処分の取消を求めるのであるから、本訴は、いずれも被告を誤つた不適法な訴として却下を免れない。

さらに、園部税務署長のなした右処分については、東山税務署長(処分庁が異るのは、その間に控訴人が転居したためと思われる)により再更正がなされたというのであるから、もはや当初の決定及び加算税賦課処分を独立の対象としてその取消を求める利益はないものというべきであるし、国税通則法第八七条第一項により、異議申立、審査請求の各手続を経てからでなければ、処分取消の訴を提起することができないものとされているのに、これらの手続を経たことの主張、立証もないから、園部税務署長のなした決定及び加算税賦課処分の取消を求める訴は、これらの点においても不適法であるといわなければならない。

また、東山税務署長のなした再更正処分及び加算税賦課処分については、その方式及び趣旨により真正に成立した公文書と推認できる乙第一、二号証及び弁論の全趣旨によると、控訴人は昭和四〇年八月一七日東山税務署長に対して異議の申立をし、その後右申立は被控訴人に対する審査請求とみなされたが、昭和四一年七月二九日この審査請求を棄却する旨の裁決があり、その頃その裁決書の謄本が控訴人に送達されたことが認められ、反証はない。そして、行政事件訴訟法第一四条第一項、第三項、第四項によると、処分取消の訴は、処分につき審査請求をした場合には、裁決のあつたことを知つた日から三箇月以内に提起しなければならず、かつ裁決の日から一年を経過したときは、正当な理由がない限り、これを提起することができないものと定められているのに、本件記録によると、控訴人が東山税務署長のなした右各処分の取消を求める本訴を提起したのは、これらの期間を過ぎたのちの昭和四四年七月一七日であつたことが明らかであり、右訴はこの点においても不適法として却下するほかはない。

すると、東山税務署長のなした再更正処分及び加算金賦課処分の取消を求める控訴人の訴を不適法として却下した原判決は正当で、本件控訴は失当であるからこれを棄却すべく、園部税務署長のなした決定処分及び加算税賦課処分の取消を求める控訴人の当審新訴は不適法としてこれを却下すべきものとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮川種一郎 裁判官 中村三郎 裁判官 平田浩)

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