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大阪高等裁判所 昭和46年(ネ)1814号 判決 1974年5月29日

控訴人(本訴原告、参加被告)

豊田虎市

外一名

右両名訴訟代理人

加藤正次

外四名

被控訴人(本訴被告、参加被告)

田中嘉作

右訴訟代理人

豊蔵利忠

外一名

被控訴人(本訴被告、参加被告)

野口恒美

外一名

被控訴人(参加原告)

伊地知康明

右訴訟代理人

小林淑人

主文

一、本件控訴を棄却する。

二、被控訴人田中は、控訴人らに対し、金一、六〇〇万円とこれに対する昭和四七年八月二三日以降完済まで年五分の割合による金員とを支払え。

三、控訴費用中予備的請求により生じた分は被控訴人田中の負担とし、その余は控訴人らの負担とする。

四、本判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一(ヘ)の土地に関する控訴人らの請求について

原判決理由第一の一と同一であるから、ここにこれを引用する。

二(イ)ないし(ホ)の土地に関する控訴人らの請求について

<証拠>によれば、被控訴人田中が昭和三七年一月一八日控訴人ら及び関元、杉野正美に対し右各土地を代金を二、六〇〇万円とし、内三〇〇万円は即時支払い、残金は同年二月二一日支払う約で売渡したことを認め得る。しかし、<証拠>によれば、昭和四〇年五月一三日、田中と控訴人らとの契約(以下本件契約という。)により、右売買契約中控訴人らに関する部分が解除せられ、物件売却後、田中は被控訴人らに対しその出捐金の元利合計金一、六〇〇万円を支払う旨約したことを認め得る。右認定に反する<証拠>は措信しない。

控訴人らは右解除の事実を否認し、昭和四〇年五月一三日田中と控訴人らとの間で作成された契約書(甲第四号証、その記載内容は別紙記載のとおりである。)は(イ)ないし(ホ)の土地の所有権が控訴人らに存することを前提として、控訴人らと田中との間の権利関係を定めたものであるから、右契約書を以て契約解除の認定資料とすることはできないと主張する(当審昭和四七年六月二七日付準備書面)が、次の理由により右主張は採用し難い。

1  控訴人ら及び被控訴人田中の原当審各供述によれば、本件売買代金二、六〇〇万円の内一、三〇〇万円は控訴人ら及び杉野正美の負担、一、三〇〇万円は関元の負担とする約であり、控訴人らは自己負担部分の債務を履行したが関はこれを履行しなかつた。本件契約は右不履行に対する収拾策として締結せられたものであることが認められ、この認定は甲第四号証の「関元の売買契約不履行により」なる文言と符合する。

2  甲第四号証によれば、本件契約において、仮登記((イ)ないし(ホ)の土地につきなされた関元名義の所有権移転請求権保全の仮登記)はそのままとする旨の合意がなされたことを認めうるが、右契約によれば、右各土地は早急に他に売却することが予定せられているのであるから、右仮登記の抹消を右売却の段階まで留保したとしても何ら異とするに足らない。したがつて右合意の存在は契約解除の事実と矛盾しない。

3  甲第一〇号証、被控訴人田中の当審供述によれば、昭和四二年一〇月二一日田中が控訴人らに対し本件土地所有権が控訴人らに属することを承認した事実を認めうるが、田中の右行為は本訴提起後(記録によれば本訴提起は昭和四二年九月一日であることが認められる。)、その時点における利害打算に基づいてなされたものと考えられ、真実を伝えるものかどうかは疑わしいから、これを以て契約解除の事実を否定する根拠とすることはできない。

そうすると右契約解除のないことを前提とする控訴人らの所有権にもとづく請求はそのほかの争点につき判断するまでもなく失当である。

三被控訴人伊地知の請求について

当裁判所は、被控訴人伊地知のその余の被控訴人ら及び控訴人らに対する請求はいずれも理由があると判断するが、その理由は、次に附加するほか原判決理由第二と同一であるから、ここにこれを引用する。

原判決一二枚目表七行目の「参加被告」の前に「原当審」を、同八行目の「野口」の次に「当審被控訴人伊地知」を同一三枚目表四行目の「水本から」の次に「同人に対する一、六〇〇万円の債権の代物弁済として」を各挿入し、同じ行の「買受」を「譲受」とあらため、同五行目の「所有権移転登記」の次に「(登記原因は売買)」を挿入し、同一三枚目裏七行目から同一四枚目表一一行目までを次のようにあらためる。

Xが、YからY所有土地を譲受けたと主張して、Yに対する処分禁止の仮処分を得て、右仮処分登記がなされた後、Yが、Zへ右土地を譲渡し、その旨の所有権移転登記がなされた場合、XのYに対する所有権移転登記手続請求訴訟(右仮処分の本案訴訟)に、Zが、独立当事者参加し、X及びYに対し、右土地がZの所有であることの確認の請求をし、右訴訟において、Xの土地所有権を否定し、XのYに対する土地所有権移転登記手続請求を棄却するとき、ZのYに対する土地所有権確認請求を認容するのみならず、ZのXに対する土地所有権確認請求を認容すべきである。けだし、右仮処分の本案訴訟にZが独立当事者参加することにより発生した三面訴訟(合一確定訴訟)において、右仮処分の被保全権利否定の判断をする以上、右仮処分の存在は、右訴訟において、ZのXに対する土地所有権確認請求を認容するにつき、障害事由とならない、と解するのが相当であるからである。

右の法理により、被控訴人伊地知の控訴人らに対する本件土地所有権確認請求も理由がある。

四控訴人らの被控訴人田中に対する予備的請求について

上記確定した事実によれば、右請求は理由がある。手許不如意の主張は採用できない。

五よつて、控訴人らの主位的請求を棄却し、被控訴人伊地知の請求を認容すべきであり、これと同旨の原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴人らの当審予備的請求を認容し、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 大久保敏雄)

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