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大阪高等裁判所 昭和46年(ネ)668号 判決 1972年9月08日

控訴人

加藤善朗

右訴訟代理人

秋山泰雄

外四名

被控訴人

右代表者

郡祐一

右指定代理人

藤浦照生

外七名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

当裁判所もまた原審と同様、西陣郵便局長が控訴人に対してなした本件配置転換命令は、国の行政機関である同局長がその有する任命権に基づき、国家公務員である控訴人に対してなした形成的な任命行為であり、行政事件訴訟法四四条にいう「公権力の行使に当たる行為」であると認め、このような行為についてその効力の停止を求める本件仮処分申請は不適法なものと判断するものであつて、その理由は次のとおり付加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これをここに引用する。

一、五現業国家公務員の勤務ないし労働関係の実態が、当該事業の性質からみれば、一般の私企業のそれとなんら異ならないとしても、そのことから直ちにこれら公務員の勤務関係の法的性格を私法上の労働契約関係であるとすべきものではなく、国家公務員法および人事院規則の規定が右勤務関係の実態をどのようにとらえて法的規制をしているかが検討されなければならないのであつて、現行実定法の下においては、原判決の理由説示に明らかなとおり、その身分は一般国家公務員と同一であり、また、その勤務関係は公法関係と解せざるをえない。現に公共企業体等労働関係法(以下公労法という)二条二項二号および国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(昭和二九年六月一日法律一四一号)二条二項は、これらの法律における「職員」の定義として「国の経営する企業に勤務する一般職の国家公務員」と規定し、五現業公務員が一般職に属する国家公務員であることを明確にしている。

二、もつとも郵政省職員を含む五現業公務員については、公労法八条が団体交渉事項の範囲を限定し、その限度におおいて、当事者自治の支配を認めているが、前記のとおり、公労法の適用を受ける国の経営する企業の職員は、その身分においては一般職に属する国家公務員であるから、一般職の国家公務員たる身分と不可分なものの適用は除外されていない(公労法四〇条一項二項参照)。すなわち、これら職員の勤務関係の基本をなす任免、分限、保障および服務の関係については、五現業公務員に対しても、国家公務員法および人事院規則の各規定がほとんど適用され、ただ同条三項により、五現業公務員に係る処分のうち、労働組合法七条各号に該当するものについては行政不服審査法による不服申立をすることができないとされているにすぎない。

また配置換と他の任用方法との関係についてみても、国家公務員法三五条は、職員の任用方法として、採用、昇任、降任、転任(配置換を含む)を定め、人事院規則八―一二の六条は、同じく任用方法として採用、昇任、転任、配置換、降任を定め、配換置の定義については、同規則五条四号において「分類官職に任用されている職員をその官職と同一の職級に属する他の分類官職で任命権者を同じくするものに任命すること」として、いずれも官職に対する任命行為としては、配置換を他の任用方法と同列に扱つており、手続面についても、他の任用方法の場合と同じく、一定の要式行為によつて行うこととしている(同規則七五条一号、八〇条)。要するに、これはいずれも職階制の基本原則である官職の分類を前提として、職種職級によつて縦横十文字に分けられている職階制の階段を上下左右に動くことであつて、配置換を他の任用方法と別個のものとする何らの根拠もない。

ところで、行政事件訴訟法四四条の規定の趣旨は民事訴訟法に規定する仮処分をもつて行政権の作用を阻止することを禁止しようとするにあるから、仮の処分により公権力の行使を阻止するについては、本案訴訟の性質および態様のいかんを問わず、すべて同法二五条に定める執行停止の方法によるべく、仮処分の規定によることを許さない趣旨と解すべきである。

三、なお、付言するに、すでに説示したところから明らかなとおり、現業国家公務員に対する不利益処分について、その処分手続違背、処分事由不存在あるいは裁量権の逸脱を理由とする場合と当該処分の不当労働行為該当を理由とする場合とでは、その救済手続が截然と区別されている。前者については人事院に対する審査請求が認められ、後者については、行政不服審査法による不服の申立をすることができないが(公労法四〇条三項)、公共企業体等労働委員会に対する救済申立が認められている(同法二五条の五、労働組合法二七条)。この場合、当該行政処分が不当労働行為に該当する場合、憲法二八条、労働組合法七条の法意に照して直接に、あるいは公序良俗の原則を介して間接に、その行政処分の効力が生じないものと解すべきであるとしても、そのことから、法は不当労働行為に該当する行政処分を対象とする抗告訴訟を予定していないところで、不当労働行為を理由として争う訴訟形式は当事者訴訟によるべきであるとはにわかに断定しがたいから、これを前提として、この場合には民事訴訟法の規定による仮処分が許されるとの見解にはたやすく左たんしがたい。

そのほか、控訴人の主張は独自の見解に基づき原判決の認定判断を攻撃するものであつて、当裁判所の採用しがたいところである。

右の次第であるから、控訴人の本件仮処分申請を却下した原判決は相当というべきである。

よつて、民事訴訟法三八四条により本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき同法九五条八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(浮田茂男 宮崎福二 館忠彦)

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