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大阪高等裁判所 昭和47年(ラ)164号 決定 1973年3月08日

抗告人 嵯峨操

右代理人弁護士 大川真郎

同 福山孔一郎

同 須田政勝

同 戸谷茂樹

相手方 株式会社恵美須工具製作所

右代表者代表取締役 中村正男

右代理人弁護士 久世勝一

主文

原決定を次のとおり変更する。

相手方は、抗告人を相手方の従業員として仮に取扱え。

相手方は、抗告人に対し、金五二二、八二三円及び昭和四七年五月一五日から本決定が相手方に送達される日まで毎月末日限り一ヶ月金一九、七三五円の割合、本決定が相手方に送達された日の翌日から本案判決確定の日まで毎月末日限り一ヶ月金七七、二三五円の割合による金員を仮に支払え。

抗告人のその余の申請を却下する。

申請費用並びに抗告費用は、全部相手方の負担とする。

理由

抗告代理人は、「原決定を取り消す。相手方は抗告人をその従業員として仮に取扱え。相手方は、抗告人に対し、金二〇三、四七五円及び昭和四六年一一月一一日から毎月末日限り一ヶ月金六六、八四〇円の割合による金員を、同年一二月一日から毎月末日限り一ヶ月金六八、三四〇円の割合による金員を、昭和四七年四月一日から毎月末日限り一ヶ月金八一、三四〇円の割合による金員をそれぞれ支払え。申立費用は第一、二審とも相手方の負担とする。」との決定を求め、相手方代理人は、「本件抗告を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも抗告人の負担とする。」との決定を求めた。

抗告人の本件申請理由の要旨は、次のとおりである。

一  抗告人は、職業安定所を通じて、昭和四六年九月一三日相手方の従業員に採用された。採用時の条件は、工具仕上区で働くこと、雇用期間は定めず、試用期間を四ヶ月と二週間とすること、試用期間を修了すれば自動的に本雇に採用すること等であった。抗告人は、同日から相手方の工具仕上区で二日働いたあと、同月一五日に第三製造課輪削作業区に配転され、以来一日も休まず真面目に勤務してきた。

二  ところが、同年一一月六日相手方の山本製造部長が抗告人に対し、会社がひまになったのでやめてもらいたい旨申入れた。抗告人がこれを拒否し、その後相手方側の退職説得にも応じなかったところ、相手方は、同月九日付書面で抗告人に対し、相手方の業務の都合により抗告人を同月一〇日付で解雇する旨通告した。

三  抗告人が同月二〇日相手方から受け取った文書によると、抗告人を解雇した理由は、次のとおりであるという。

(イ)  抗告人を採用したのは、工具仕上作業区で退職者一名と長欠者一名がいたので、その補充をするためであったが、長欠者の復職が予想以上に早くなったので、暫定措置として抗告人を輪削作業区に配転した。ところが、同区の仕事量が減少したので、抗告人が余剰人員になった。

(ロ)  相手方は、多種少量生産方式で、すべて受註生産であるが、昭和四六年八月のいわゆるニクソン宣言以来の経済不況のため、相手方も受註不振に拍車をかけられることとなった。これに対処するため、相手方は、残業規制、配転などの対策で努力したが、臨時期間及び雇員の人を吸収できなかった。

(ハ)  昭和四七年春の学卒者の採用も必要最少限にすることに定めている。

四  しかしながら、本件解雇は、何ら合理的理由がなく、解雇権の濫用であって、無効である。すなわち、

(イ)  抗告人が採用されたのは、いわゆるニクソン宣言より一ヶ月後であり、すでにその当時から日本経済全体が不況に陥るおそれのあることはわかっていた。

(ロ)  長欠者の復帰は、抗告人採用時に予想できることであり、仮りに復帰が予想より早かったとしても、その相手方の見込違いを抗告人にしわ寄せして解雇理由にするのは、不当である。

(ハ)  抗告人解雇当時の残業制は、抗告人採用時と変らず、昭和四七年一月から残業を規制したのは、労働組合との協約に従い、時間短縮して労働密度を高めようとした相手方の合理化の一環としてなされたもので、受註減だけが理由ではない。その他の不況対策は、相手方のかけ声だけで、具体化されていない。抗告人解雇当時雇員は一二名であったが、その後退職したのは僅か三名(解雇ではない。)で、しかも、最初の一年間を更に三ヶ月延長したのち退職したものである。また、昭和四七年春には、学卒者を例年になく大量の一一名も採用している。

(ニ)  以上のような状況の中で、従業員一六六名を擁する相手方において、抗告人ただ一人を解雇したのが、不況対策であるというのは、全く理由にならない。そもそも、人員整理とは、会社の不況対策のなかで、とるべき最後の手段というべきものであって、あらゆる方法をもってしても企業の破綻を回避できず、かつその必要性が迫られている場合にのみ許されるものである。

五  抗告人は、満三一才で、妻と子供二人を抱え、資産を有せず、労働による賃金だけが唯一の収入である。したがって、仮処分により早急に救済を受ける必要がある。

抗告人の解雇直前の平均賃金は、一ヶ月六六、八四〇円であった。その後相手方において、昭和四六年一二月に平均一、五〇〇円の定期昇給をしたので、抗告人についても、そのまま勤務を続けておれば、同額の昇給がなされた筈である。更に昭和四七年四月一日から、平均一一、〇〇〇円の昇給と、家族手当の増額一、〇〇〇円、住宅手当の増額一、〇〇〇円がきめられた。したがって、同日以降の抗告人の平均賃金は、一ヶ月金八一、三四〇円になった筈である。そのほかに、抗告人は、昭和四六年冬期一時金四九、四七五円、昭和四七年夏期一時金一五四、〇〇〇円、合計二〇三、四七五円の支給を受けることができた。

よって、抗告の趣旨のとおりの決定を求める。

申請理由に対する相手方の主張は、次のとおりである。

一  申請理由一の事実は、試用期間を終了すれば自動的に本雇に採用するとの点及び真面目に勤務してきたとの点を除き、その余の点を認める。同二、三の事実は認める。

二  本件解雇は、不況に伴う人員整理の一環としてなされたものである。昭和四五年後半からの不況は、昭和四六年に至りますます深刻の度を加えてきたが、同年夏ころようやく景気回復の曙光が見えはじめた。しかるに、同年八月一五日のニクソン声明によるドルショックのため、景気回復の望みは絶たれ、秋ころから戦後最大の不況となった。

相手方も例外でなく、受註は減少の一路をたどり、一〇月、一一月の受註残は、前年同期の半分以下となる有様であった。そのため、相手方は、人員削減を含む緊縮政策をとらざるをえなくなり、(1)試用期間中の者はやめてもらう、(2)雇員については、雇用期間の短縮及び雇用期間到来による退職、(3)本雇の者については配転、残業規制、(4)新規採用の中止(ただし、技術要員は最少限確保)等の方針をたてて、実行に移した。

使用者が経営を合理化し、労働能率を維持向上させることは、使用者の権利である。使用者がこの権利により剰余労働力を企業外に排除するためには、妥当な整理基準に基き解雇者を選択しなければならないが、その際従業員の会社との結び付きの親疎労働能力等が重要な基準になることはいうまでもない。してみると、会社との結び付きの最も薄い試用期間中の者をまず解雇し、次いで雇員(定年退職後の再雇用者)を整理した相手方の措置は、正当なものである。加うるに、労働能力または適格性の点からも、抗告人が解雇の対象にされたことは正当というべきである。

抗告人解雇後も、相手方は人員削減の努力を重ね、抗告人解雇時一六八名であった従業員数は、翌春技術要員九名を新規採用したにもかかわらず、昭和四七年九月末日現在一六一名となった。

三  抗告人が満三一才で妻と子供二人がいること、本件解雇直前の抗告人の平均賃金が月額六六、八四〇円であったことは認めるが、抗告人は、相手方が供託した解雇予告手当六六、八四〇円をその後受領し、解雇後六ヶ月間は失業保険の支給を受け、昭和四七年五月からは、件外黒田鉄工所に期間の定めなく雇われ、相手方で支給されていた賃金月額六六、八四〇円を上廻る毎月金八万円の賃金を得て、現在に至っている。したがって、仮処分の必要性はない。

以上について、当裁判所は、次のとおり判断する。

抗告人が、職業安定所を通じて、昭和四六年九月一三日相手方の従業員として採用され、雇用期間を定めず、試用期間を四ヶ月と二週間とする約で、同日から二日間工具仕上区で働いたあと、同月一五日に第三製造課輪削作業区に配転され、以来一日も休まず勤務してきたこと、同年一一月六日相手方の山本製造部長が抗告人に対し、会社がひまになったのでやめてもらいたい旨申入れ、抗告人がこれを拒否したところ、相手方は、同月九日付書面で抗告人に対し、相手方の業務の都合により抗告人を同月一〇日付で解雇する旨通告したこと、その後相手方が抗告人に交付した文書に、抗告人を解雇した理由として、大要申請の理由三に記載の内容が記載されていたこと、以上の事実は、当事者間に争いがない。

そこでまず、本件解雇が相当の理由にもとづくものかどうかを検討する。

疎明資料を総合すると、次の事実を一応認めることができる。

相手方は、切削工具の製造販売を業とし、昭和四六年一一月当時従業員一六八名を擁する会社で、その業態は、すべて受註生産であった。昭和四六年八月のいわゆる「ニクソンショック」による日本経済界の不況から、相手方の受註量は漸減し、同年八月の受註残は、同年七月のそれを一〇〇としてその九四パーセント、同年九月のそれの七月比は、八八・七パーセント、同年一〇月のそれの七月比は八七・六一パーセントとなり、これは、前年九月の受註残の僅か四四・八パーセントに止どまる状態であった。そこへ、同年一〇月中頃から末にかけて、大口二社の発註が止ったため、一一月以降の業績の極端な落込みを避けられない見通しとなった。そこで、相手方役員らの間で対策を論議した末、同年一〇月末ころ、相手方の主張二に記載の(1)ないし(4)の方針を決定し、(1)の実行として、本件解雇に及んだ。当時試用期間中の者は抗告人しかいなかった。

残業規制については、労働組合と協議のうえ、昭和四七年一月二一日から原則として残業を廃止することとした。雇員については、本件解雇当時一二名が勤務しており、昭和四七年四月末までの間に、同年一月、三月、四月に各一名、計三名を解雇したが、昭和四六年一二月に契約期間の満了した雇員一名を、技術に熟練しているという理由で更に雇用期間を延長した例もあり、前記方針決定から一年を経過した昭和四七年一一月はじめに、なお雇員が七名勤務していて、右方針の(2)は必ずしも厳格に実行されていない。昭和四七年四月の新規採用は、例年一〇名前後採用していた一般作業職の採用を中止したが、反面、好況時には他他にとられて例年一名程度しか採用できなかった技術要員を、相手方の将来のために不況時に無理をしてでも採用しておかねばならないとして、大学卒及び工業高校卒の者合計一一名を採用した。

そのほか、相手方は、緊縮策として、電話の規制、休憩時の消灯、交際費の削減などの経費の節減に努力し、また、役員報酬をボーナス月二〇パーセント、その他の月一〇パーセント削減し、昭和四七年五月には、それまで七名だった役員のうち二名に退任してもらって、五名とした。

相手方の昭和四七年三月三一日現在でなされた昭和四六年度決算の結果は、当期利益金九、九三九、七三四円、別途積立金五〇〇万円を計上し、株主配当金に四三二万円(年一二パーセント)、役員賞与金に二五〇万円が当てられた。しかし、右利益金の額は、前年度のそれの二一パーセントに過ぎず、配当率も、前年度は一五パーセントであった。

以上の事実を一応認めることができる。この事実によれば、相手方は、昭和四六年八月のいわゆるドルショックによる不況のあおりを受けて、次第に業績が低下し、それに対処するための強力な緊縮政策をとらざるをえない状況に追い込まれていたことが認められる。

しかしながら、不況にともなう企業合理化のための人員整理としての解雇は、必ずしも厳密な意味での最後の手段である必要はないが、少なくとも、解雇された者をも含め一般従業員を納得させるに足りる客観的に相当な理由を要するものと解すべきである。相手方は、人員整理の基準として、まず会社との結び付きの薄い者を先にし、次第に結び付きの濃い者に及ぶのが合理的であるとして、試用期間中の者を第一順位とし、雇員を次順位としたと主張するのであるが、この順位付けは果して合理的であろうか。

なるほど、会社との結び付きの親疎からいえば、採用されて間のない試用期間中の者が、本雇の者及び定年退職後再雇用されている雇員よりも、仕事に対する習熟度も低く、会社との馴みの薄いものということができる。しかし、一般論としていえば、試用期間中の者は、その期間中に当該企業の仕事に対する能力ないし適格性を試験される地位にあるというだけで、その期間が満了すれば、就業規則または労働協約により、自動的に、あるいは右能力ないし適格性に関する詮衡を経て(≪証拠省略≫によると、相手方の場合は後者であることが認められる)、本雇に採用されるものであって、いわばその企業の将来を担うべき労働力というべきものである。してみると、人員整理の対象に先ず挙げられる者として、試用期間中の者が、定年退職して後一年の契約期間をもって再雇用されている雇員よりも先順位にあると考えることが、必ずしも一般的に合理性があるとはいえない。本件において、試用期間中であった抗告人が、唯一人真先に解雇されたことについては、それ相当の特段の事情を要するというべきである。

相手方は、抗告人の労働能力または適格性の点からも、抗告人が解雇の対象にされたことは正当であると主張し、≪証拠省略≫には、抗告人が相手方の業務に不向きであったとする部分があるが、≪証拠省略≫によれば、本件解雇の理由は、不況切抜け策にあるのであって、抗告人の不適格をも理由にしているものではないことが一応認められ、また、試用期間中の者は同時に与えられた仕事の見習中の者であって、未熟であることは当然であり、それ以上に抗告人が相手方の業務に不適格であることは、全疎明資料によるも認められない。また、抗告人が職業安定所を通じて採用された者であることも、抗告人を先ず解雇することを正当付ける特段の事由とはしがたい。

相手方は、人員整理の対象とされたのは雇員も含むのであって、抗告人だけではないことを強調するが、雇員は抗告人と同時に解雇されたのではなく、しかもその後雇員に対する当初の方針が貫かれていないことは、さきに認定したとおりである。また、相手方の昭和四六年度の決算の結果は、それが前年度の五分の一に落ち込んでいるとはいえ、更にそれが相手方の経費節減等による企業努力の結果であるとはいえ、一二パーセントの株式配当をすることができるだけの黒字を計上している。昭和四七年四月に相手方が、例年になく大量の技術要員の新規採用をしたことは、その理由についての相手方の主張は一応首肯できるとしても、相手方の余力を示すものであることは否定できない。更にまた、相手方は、抗告人解雇後も人員削減の努力を重ね、昭和四七年九月末日現在の従業員数は一六一名になったと主張するが、≪証拠省略≫によると、人員減の原因の多くは、自己退職や勧奨退職によるものであることが一応認められ、また≪証拠省略≫によれば、相手方においては、毎年一〇名以上自己退職者があることがうかがわれるのであるから、右人員減の事実は、本件解雇の合理性を裏付けるものとはしがたい。かえって、解雇以外の企業努力によって右のような人員減を図れるのであれば、何故抗告人一名の解雇を急いだかについて疑問を抱かせるものである。

以上の諸事実を総合すると、従業員一六八名中抗告人のみを解雇した本件解雇を相当とする特段の合理的理由の存在は極めて疑わしく、全疎明資料によるも、これを首肯するに足りる事実は認められない。

解雇を相当とする客観的事情を一応認めることのできないときは、その解雇は、解雇権の濫用による解雇であると事実上推定すべきものと解するのが相当である。よって、本件解雇は、解雇権の濫用によるものであって、無効であるといわざるをえず、抗告人は、依然として相手方の従業員たる地位を有するものというべきである。

抗告人が満三一才で、妻と子供二人がいること、本件解雇直前の抗告人の平均賃金が月額六六、八四〇円であったことは、当事者間に争いがなく、疎明資料によれば、抗告人は、資産を有せず、労働による賃金だけを生活の資としていた者であること、本件解雇後六ヶ月間は、失業保険を受領して生活し、昭和四七年五月中ごろからは、友人黒田晃生の経営する小規模の鉄工所で抗告審の裁判があるまでの約定で臨時に働いて、月額最も多い月で約八万円、最低五七、五八〇円の賃金を得ていること、以上の事実が一応認められる。これによれば、本件仮処分はその必要性が認められる。

そこで最後に、相手方に仮りに支払うことを命ずべき賃金の額を計算する。疎明資料によると、相手方においては、昭和四六年一二月二一日から、一人平均一、五〇〇円の定期昇給を行ない、抗告人が引続き勤務しておれば、これによって五〇〇円昇給した筈であること、昭和四七年四月二一日からのベースアップによって、抗告人の本給は更に九、八九五円昇給した筈であること、更に、昭和四六年冬期一時金として四九、四七五円、昭和四七年夏期一時金として一一九、九二〇円を受領することができた筈であること、抗告人は、昭和四七年五月二五日に、さきに相手方が解雇予告手当として供託していた金六六、八四〇円を昭和四六年一一月一一日から同年一二月一〇日までの賃金として受領したこと、以上の事実が一応認められる。

抗告人が解雇後六ヶ月間受領した失業保険金は、解雇が無効となれば返還しなければならないものであるから、これを仮払いを命ずべき賃金から控除するのは相当でないが、昭和四七年五月中ごろ、(計算上一五日を起点とすることとする。)以降黒田鉄工所に勤務して得た賃金中最低限度の月額五七、五〇〇円に相当する分は、相手方に仮払いを命ずる必要性を欠くものとして、本決定の相手方送達の日の分までこれを抗告人が相手方から受け得た筈の賃金月額から控除すべきである。本決定を相手方に送達した日の翌日からは、相手方は抗告人を相手方の従業員として扱わねばならず、抗告人も相手方職場で現実に勤務につく権利と義務を有することとなるから、同日以降は前記認定の月額賃金の全額の仮払いを命ずるのが相当である。

そうすると、相手方は抗告人に対し、昭和四六年一二月一一日から同月二〇日までの月額六六、八四〇円の割合による賃金二二、二八〇円、同月二一日から昭和四七年四月二〇日までの月額六七、三四〇円の割合による賃金二六九、三六〇円、同月二一日から同年五月一四日までの月額七七、二三五円の割合による賃金六一、七八八円、昭和四六年冬期一時金四九、四七五円、昭和四七年夏期一時金一一九、九二〇円、以上合計金五二二、八二三円と、同月一五日から本決定が相手方に送達される日まで七七、二三五円から五七、五〇〇円を控除した月額一九、七三五円の割合による金員並びに本決定が相手方に送達された日の翌日から本案判決確定の日まで月額七七、二三五円の割合による金員を仮りに支払うべきである。

よって、抗告人の本件仮処分申請は、相手方に対し、抗告人を相手方の従業員として仮に取扱うことと、右の各金員の仮払いを求める限度で理由があり、その余の申請部分は失当であって、以上の判断と異なる原決定部分は不相当として取消しを免れず、本件抗告は一部理由がある。

よって、原決定を主文のとおり変更することとし、申請費用及び抗告費用の負担につき民訴法九六条、九二条但し書を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岡野幸之助 裁判官 入江教夫 高橋欣一)

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