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大阪高等裁判所 昭和48年(く)35号 決定 1973年7月26日

少年 U・Y(昭三五・八・二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は保護者N・N子作成の抗告書記載のとおりであり、要するに少年に対して在宅の処遇がなされるのが相当であるのに少年を教護院に送致した原決定の処分は著しく不当である、というのである。

よつて、少年保護事件記録及び少年調査記録を検討するに、本件非行は他の少年と共謀し、路上で拾得した現金三万円を横領し、家出中遊興費に窮し他家に侵入して現金一万二、〇〇〇円を窃取したほか昭和四七年九月八日から約八か月間余の間に前後四回にわたり、保護者の正当な監督に服さず犯罪性のある少年と交遊して各五日ないし二二日間家出し、その間友人宅及び空家内等においてシンナー吸引等を行なつたことを主たる事由とする虞犯の事案であつて、右非行ないし虞犯行為の態様及びすでに一〇歳時に窃盗の非行が発現し、以来再三児童相談所の保護的措置を受けながら本件に及んでいることを考えると、少年の非行性ないし虞犯性は相当深化しているものと認められる。そして、少年はかなり高い知的能力を持つているのであるが、実父が酒、覚せい剤に溺れ少年の九歳時に殺人罪で受刑中に病死し、その後実母が妻子のある年下の男と内縁関係をもち同棲をはじめたことに強く反発してきたことから、保護関係に恵まれないまま成長し、躾がほとんど行なわれておらず、情緒が著しく不安定で感受性がするどくことに強い知的劣等感を抱くと共に自己顕示性衝動的行動性が著しく他人の介人を拒否し反抗的態度に出るなどの相当偏倚した性格が形成されており、保護者の保護能力の不足と相まつて少年を不良交遊、非行、家出、不良行為に走らせ、本件に至つたものと認められる。以上少年の資質、性格、非行ないし、虞犯事由からみた虞犯性の程度、保護者の保護能力、及び少年は現在中学一年生であるけれども就学しておらず実質的には小学校二年生程度の学校教育を受けているに過ぎないことから考えると、現段階においては少年に対し施設において教育保護を施し、その不良傾向を除去するほかないものと認められ原決定の処分が所論のように著しく不当であるとは認められず、論旨は理由がない。

よつて少年法三三条一項により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 瓦谷末雄 裁判官 尾鼻輝次 小河巖)

参考二 抗告申立書(昭四八・五・二四付 法定代理人親権者母申立て)

一 本人の観護措置をとられた、五月四日(金曜日)の際、病院と同じようなところで、病気を治してもらつたらということで措置されました。そのつもりで、観護措置の終るのを心待ちしておりました。保護者としては騙し討ちにあつたような気持ちで遺憾に存じます。

二 このようなことから、二週間ぐらいで帰宅できるものと考え、西宮市教委M・S氏(小学校時代の先生)の言を信じ、本人にもそれをいいきかせて、自分から行くように説得し、摂丹児童相談所のO・K先生に頼んで措置してもらいました。

以上のような理由で、今回の処分が著しく不当である。

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