大阪高等裁判所 昭和48年(ネ)1049号 判決 1974年12月11日
昭和四八年(ネ)第七四六号事件控訴人
神戸市
右代表者市長
宮崎辰雄
右訴訟代理人
安藤真一
外二名
昭和四八年(ネ)第一〇四九号事件控訴人
来栖義昭
右訴訟代理人
吉川覚
右両事件被控訴人
鵜木盛雄
右訴訟代理人
松岡清人
外一名
主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実《省略》
理由
一次に附加訂正するほか、原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。
原判決一一枚目裏二行目の「丙第一乃至第五号証、」の次に「第七号証」を、同五行目の「同柴山武司」の次に「当審証人井上都」を「原告」の前に「原当審」を、同六行目の「被告」の前に「原当審」を、各挿入し、同一三枚目裏六行目の「その旨の噂が高かつたこと」を「神戸市交通局労働組合石屋川支部長と被控訴人(同人の組合内における地位は後記認定のとおり)が労組役員の立場で石屋川自動車運輸事務所長に対し、控訴人来栖に注意してほしい旨の申入れをしたこともあること」と、同八行目の「昭和四四年春頃以来」を「昭和四四年四月三日」と各あらため、同一四枚目表六行目の「運転せよ。」の次に「これは組合役員の立場から注意するのだ。」を、同一五枚目表三行目の「原告及び被告」の前に「原当審」を、同一六枚目表三行目と四行目との間に後記二の(一)(二)を挿入し、同五行目の「甲第八号証の一乃至三」から同六行目の「第一〇号証の一乃至三」までを削除し、同七行目の「丙第六号証」の次に「第八号証の三(平均賃金算定内訳書)」を挿入し、同一六枚目裏一〇行目の「金二万四五三三円、合計金二二万七九七円」を「金二万三四七四円(前記平均賃金算定内訳書記載の特殊勤務手当と超過勤務手当の総計額を三で除した数額)を下らない額、合計金二一万一、二六六円」と、同一七枚目表一行目の「神戸市支部審査会と」を「神戸市支部審査会はそれに対する審査請求を、」と各あらため、同一行目の「同基金審査会は」の次に「それに対する再審査請求につき」を挿入し、同一八枚目表五行目から六行目にかけての「逸失手当金二二万七九七円、及び弁護士費用の内の着手金四万円、合計金三六万一七九七円」を「逸失手当金二一万一二六六円、合計金三一万二二六六円」と、同一一行目の「二八万円」を「二四万円」とあらため、同一二行目の「減額することにする。」の次に「当審における控訴人神戸市の主張が独自の見解であることは被控訴人主張のとおりであり、当審における控訴人来栖の主張はこれを認めるに足る証拠がない。控訴人らの右各主張は採用できない。」を挿入し、同一八枚目裏四行目の「二八万円」を二四万円」と、同四行目から五行目にかけての「弁護士費用の内の成功報酬金一〇万円」を「弁護士費用金一四万円」と各あらため、同五行目から六行目にかけての「右金二八万円と慰藉料金六〇万円との合計」を削除し、同六行目の「八八万円」の次に「(弁護士に対する成功報酬一〇万円を除いた残額)」を挿入する。
二(一)、本件のように、甲市交通局A運輸事務所所属の乗合自動車運転手乙は、勤務態勢中の午後七時頃右事務所において、同僚内から、「スターフ(運転指示票)どおり運転せよ」と、乙の職務上の義務である運転指示票遵守につき注意されたことから、丙と掴み合いとなり、監督が仲裁に入り一応納めたが、翌日午前六時頃右事務所に出勤した乙が、丙に対し、「昨日の続きだ」と叫び、丙に対し暴行を加えて負傷させた場合、これによつて丙の受けた損害は、民法七一五条一項所定の、甲の被用者乙が事実の執行につき加えた損害にあたるというべきである。けだし、丙の受けた損害は、乙が、甲の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によつて加えたものであるからである(最高裁判所第三小法廷昭和四四年一一月一八日判決、民集二三巻一一号二〇七九頁参照)。
(二)、控訴人神戸市は、(1)被控訴人の控訴人来栖に対するスターフ遵守に関する注意は、何ら職務上の権限もなく、誤つてなされたものである。(2)本件暴行は被控訴人、控訴人来栖間に存する対立憎悪の感情に起因するものである。したがつて、控訴人来栖の本件行為は事業の執行と無関係である、と主張する。しかし、仮に右(1)のとおりとしても、直ちに控訴人来栖の本件行為による控訴人神戸市の使用者責任を否定する理由とならない(のみならず、スターフ遵守は運転手の義務であるから、被控訴人は、指揮命令権の有無にかかわりなく、又組合役員としてであると否とにかかわりなく、同僚運転手に対し、スターフ遵守につき注意することができる)。(2)の点については、控訴人来栖がその職務上の義務であるスターフ遵守につき注意されたことが本件暴行の原因となつていることは前認定のとおりであるから、控訴人神戸市の右主張は理由がない。
三したがつて、控訴人ら各自に対し、九八万円と内金八八万円に対する昭和四五年八月二二日から完済まで年五分の割合による金員との支払を命じた原判決は正当で、本件各控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(小西勝 入江教夫 和田功)