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大阪高等裁判所 昭和48年(行コ)25号 判決 1976年4月02日

控訴人 福知山労働基準監督署長

訴訟代理人 宝金敏明 山口修弘 永松徳喜 ほか二名

被控訴人 佐原一徹

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

当裁判所も、控訴人が被控訴人に対し昭和四〇年七月一六日付でした、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を行わない旨の処分は違法であつて取消しを免れないものと考える。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の説示するところと同じであるから、その理由記載を引用する。

一  <訂正関係省略>

二  椎間板変性は退行性変化であつて、それ自体は労働の種類と余り関連性がないことは、<証拠省略>からうかがえるところである。しかし、<証拠省略>によると、椎間板ヘルニアは、椎間板変性→椎間板損傷(線維輪の裂隙)→椎間板ヘルニア(髄核の脱出)というメカニズムで発症し、椎間板変性のうえに不断の背柱の過重負荷や腰に対する不自然な負荷(特に前屈姿勢のままで重量のかかる動作や腰部の捻転)が加わることが椎間板ヘルニアに発展し、その発症の起因になることが認められるところ、被控訴人は本件腰痛によつて舞鶴共済病院に入院するまでの間約七年にわたつてモーターグレーダーの運転業務とその附随業務である刃の取替作業に従事し(うち五年間はこれに専従)、右運転業務従事中は終始中腰の不自然な姿勢でモーターグレーダーの甚だ強度の振動を直接身体にうけていたもので(右の際に被控訴人の腰部に加えられた負担の程度は日常生活における一般的な諸動作による負担の域をはるかに超える。)また刃の取替作業は総重量四一キログラムの重量物の運搬をともなうから、これによつて腰部に高度の負担が加えられたこと、しかも被控訴人は右業務に従事するようになつてから慢性的に腰痛を覚えるようになり、昭和三九年三月二日の刃の取替作業時にその腰痛を悪化させたが、その後も、職場の事情から引き続き約四カ月間右業務に従事し、このことも腰部疾患をさらに増悪させる原因になつたことは、いずれも原判決の説示するとおりであるから、このような被控訴人の業務(労働)が椎間板ヘルニアの発症する起因になつたものと認めるのが相当である。そして、以上の認定に反する<証拠省略>はにわかに採用しがたく、また<証拠省略>も、右に説示した被控訴人の業務内容(作業状況)を前提とするかぎり、右業務と椎間板ヘルニアの発症との間の因果関係の認定を必ずしも妨げるに足るものとは解されない。

そうすると、本件処分の取消を求める被控訴人の請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。よつて、民訴法三八四条、八九条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 前田治一郎 荻田健治郎 尾方滋)

【参考】第一審判決(京都地裁昭和四二年(行ウ)第一五号 昭和四八年九月二一日判決)

主文

被告が原告に対し、昭和四〇年七月一六日付でした、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を行わない旨の処分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一 原告主張の請求原因第一項中、原告が昭和三九年三月二日の本件作業動作時に訴えた腰痛の程度と家庭での治療状況に関する主張事実を除くその余の事実、同第二項中、原告がその主張の日から綾部土木工営所上林出張所に勤務し、当初ブルドーザー、普通自動車、次いで昭和三四年以降モーターグレーダーの各運転業務に従事していた事実、原告は、前記本件作業動作時以前にも、しばしば腰痛を訴えていた事実、および、同第四項の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二 ところで、労働者に生じた傷病が、労災保険法一条にいう業務上の事由による傷病として労災補償の対象となりうるためには、その傷病が、業務の遂行中に生じ(業務遂行性)、その業務との間に相当因果関係が認められることが必要である(業務起因性)と解するのが相当である。

そこで、原告の本件腰痛について、この二要件を具備しているかどうかを判断するに先立ち、その判断に必要な事実を認定する。

前記争いのない事実、<証拠省略>を総合すると、次の事実が認められ、この認定に反する<証拠省略>は採用しないし、ほかにこの認定の妨げになる証拠はない。

(一) 原告は、京都府職員に採用され(当時二二歳)てのち、モーターグレーダーの運転業務に従事するようになつたのは、昭和三二年以降のことであるが、当時は一台のモーターグレーダーを綾部、舞鶴両土木工営所で共用していた関係上、原告の乗車勤務時間は、平均して月間八日、一日四時間位であつた。その後昭和三四年に綾部土木工営所に専用のモーターグレーダー一台が配置され、原告がその専属運転手になつた。その際他に運転交替要員の配置がなかつたため、原告の乗車勤務時間は、それ以後、平均月間一五日前後、一日五時間前後(回送時間を含む)に増えた。

(二) 原告の作業内容は、モーターグレーダーを運転操作して綾部土木工営所管内の道路補修工事に従事するほか冬期には除雪作業も行い、またこれに付随して月間四ないし五回モーターグレーダーの刃(ブレード)の取替作業を行うものであつた。

モーターグレーダー(DG三〇型)は、車体の中央やや後部寄りに設けられた運転台の前方下部に二枚の刃からなるブレードが備え付けられ、これを運転台から操作することによつて路面の切削を行うものであるが、その構造上運転中の振動騒音が激しく、普通乗用自動車に比し、上下動が四倍強、左右動が約八倍、前後動が約一〇倍に達し、騒音は約八五ホンであつた。モーターグレーダーによる路面切削作業中、作業員である運転者は、スプリングの設けられていない運転台にあつて、振動と騒音を直接身体に受け、かつプレードの刃先と路面の状態をみる必要上、中腰で上半身を左右に乗り出した不自然な姿勢をとることを余儀なくされた。

また、原告は、モーターグレーダーの刃の取替作業に際しては、倉庫内に保管されている新しい刃二枚(重さ二〇・五キログラム、長さ一・六メートル、幅O・一三メートルの刃を二枚一組にして番線(針金)で結わえたもの)をモーターグレーダーの傍らまで両手で持ち運んだうえ、古い刃との交換作業をしていた。

このようにして、モーターグレーダーの運転およびこれに付随する刃の取替業務は、その従事者の腰部に高度の負担をおよぼす性質のものであり、かねてより、原告と同様の業務に従事する京都府職員中腰痛や胃部の不調などを訴える者が少なくなかつた。

(三) 原告は、モーターグレーダーの専属運転手となつてから、それまで患つたことのなかつた腰部や胃部に痛みを覚えるようになり、近くの診療所で注射、投薬を受けたり、売薬を買つて服用したりしていた。原告は、昭和三九年頃その腰痛が小康状態にあつたが、同隼三月二日、前記のとおりモーターグレーダーの刃の取替作業中、二枚の刃を一度に持ち上げようとしてその瞬間、右腰部に疼痛を覚えた。そこで、右取替作業の手伝いにきていた志馬辰夫、福井義美両工手に残りの作業の大部分を手伝つてもらい、昼過ぎ頃まで上林出張所の事務室内で休憩して腰痛の和らぐのを待つたあと、モーターグレーダーを運転して同日の勤務をすませた。

原告は、翌日以降もほぼ平常通りモーターグレーダーの運転業務に従事していたが、その腰痛が治つたわけではなく、ことに中腰になつたときなどに腰部に疼痛があり、右事故後上司の綾部土木工営所庶務課長に運転業務の交替を申し出たものの、他に交替要員がなかつたので、酢とメリケン粉をねり合わせたものを患部にあてて痛みを和らげながら勤務を続けていた。そのうち、原告は、腰痛に加えて胃の痛みも覚えるようになつたので、同年七月一八日、舞鶴共済病院で診察を受け、背痛症、右根性坐骨神経痛と診断されて同月二一日から同年八月一一日まで同病院に入院してその治療を受け、引き続き同病院内科に転科して十二指腸炎、慢性腸炎などの治療を受けた。なお、原告は、腰痛に関して、昭和四〇年五月一二日、舞鶴共済病院でミエログラフイー検査を受けたほか、昭和四三年一〇月三一日、待鳳診療所で診察を受けた。

(四) 原告は、舞鶴共済病院での受診に際し、腰痛、背痛、上腹部胃痛を訴えたが、他覚的には、両躯幹筋と両下臀神経の圧痛、右下肢の軽度知覚鈍麻が認められた。同病院の竹田剛夫医師は、原告の腰痛が右根性坐骨神経痛によるものと診断し、入院後鎮痛剤の注射、神経栄養剤の投与、牽引療法を施しながら症状経過を観察した。そして、ミエログラフイー検査の結果により、第三ないし第五腰椎間に外側から脊髄腔を圧迫する陰影を認めたことから、原告の根性坐骨神経痛の原因は、椎間板ヘルニアである可能性が強いと考えた。

京都大学附属病院整形外科の土居秀郎医師は、昭和四〇年六月三〇日、原告の臨床症状や、諸検査の結果を総合し、原告の根性坐骨神経痛の原因を、椎間板ヘルニアであると判断した(<証拠省略>)。

一方、待鳳診療所の姫野純也医師は、昭和四三年一〇月の診察時、原告が腰部の鈍痛を訴え、右臀部から右大腿後側にかけての牽引痛、腸骨部分両側の圧痛、ラセグ徴候などが認められたことから、根性坐骨神経痛と診断した。そして、レントゲン検査の結果認められた第四、第五腰椎間の陰影については、同医師は、変形症ないしは辷り症的な変化によるものとしながらも、原告の根性坐骨神経痛の原因が、椎間板ヘルニアによることも十分あると考えた。しかし、姫野医師が診察したのは、昭和四三年一〇月のことであり、しかも、一回だけであるから、原告の本件腰痛の原因を正確に診断できる立場にはなかつた。

三 以上認定の事実からすると、原告の本件腰痛が、原告の業務遂行中に生じたことは明白である。

四 そこで、原告の本件腰痛が、労働基準法施行規則三五条一号(以下一号という)にいう負傷に起因する疾病といえるかどうかについて検討する。

腰痛は、業務と無関係な内的、外的素因を原因として発症する場合が多いことに鑑み、労災実務での業務上外の認定基準を明らかにするため、昭和四三年二月二一日付基発第七三号「腰痛の業務上外等の取り扱いについて」と題する通達(<証拠省略>・以下新通達という)が労働省労働基準局長から都道府県労働基準局長宛に発せられているが、これによると、業務上の負傷に起因して腰痛が発症した場合には、一号に該当する業務上の疾病となるが、その認定要件として、(1)負傷または通常の動作と異質の突発的なできことが発症の原因として明らかなものであること(災害性)、(2)局所(病疾の発生部位)に作用した力が発症の原因として医学常識上納得しうる程度のものと認められることが必要で、当該疾病が、通常の作業動作中において何らかの明確な原因によらず、たまたま発生した場合には、一号に該当する疾病とは認められないことになる。

新通達の発せられる以前には、昭和三四年四月一一日付三三基収四、一五四号の二「腰部捻挫に伴う疾病の業務上外の認定について」と題する通達(<証拠省略>・以下旧通達という)があつたが、災害性の腰痛についての取扱いについては、新通達と同様の要件を必要としていた。

ところで、原告の本件腰痛は、前記認定のとおり、モーターグレーダーの刃二枚を両手で一度に持ち上げようとした作業動作に起因するものであるが、右作業動作は、従前から原告がその業務のひとつとしてほぼ定期的に行つてきたものであり、その刃の重量やこれを待ち上げる作業動作も従前のそれと格別の差異はなかつたのであり、そのうえ、その際、原告の腰部に異常な力が加わるような突発的なできごとが発生した形跡は証拠上認められない。

そうすると、結局、原告の本件腰痛は、災害性の要件を欠くものというほかはなく、原告の本件腰痛は、一号に該当する疾病であると認めることはできない。

五 次に、原告の本件腰痛が労働基準法施行規則三五条三八号(以下三八号という)にいうその他業務に起因することの明らかな疾病といえるかどうかについて検討する。

<証拠省略>によると、腰痛症ないし坐骨神経痛はいわゆる症状名であつて、その原因疾患として種々のものが考えられているが、一見明らかに外傷性と認められないものについても、日常的継続的な動作がもたらす腰部や脊椎の刺戟、負担が内臓臓器や骨の病変ないし退行変性を促進助長する素因として働き、或いは日常的諸動作によつて生じる極く軽微な外傷の積み重ねが腰痛症発症の誘因となつていることが少なくないこと、したがつて、重量物の運搬、中腰などの不自然な姿勢の持続によつて腰部に加えられる継続的な過重負担が弱点になり、これが腰痛症発症の有力な誘因として考えられ、統計的にもこのような重作業に従事する労働者に慢性的な腰痛症が多くみられること、椎間板ヘルニアは、椎間板を組成する線維輪に断裂が生じ、そこから髄核が椎間板の外に脱出することによつて発症するものであるが、線維輪の断裂は、二〇才頃からはじまる椎間板の退行変性と日常生活における諸動作がもたらす極く軽微な外傷の積み重ねがからみ合つて生じるものであり、したがつて肉体労働に従事することと関係なく、日常の慣行的諸動作中にもその発症の契機が潜んでいること、しかし椎間板ヘルニアも、その発症の可能性が日常腰部に加えられる負担の強さに対応し、統計的にも重作業従事者にその発症が多くみられること、この点では椎間板ヘルニアも、一般の腰痛症と同様であることが認められ、この認定に反する証拠はない。

このように、腰痛が多くの場合年齢的、日常的な素因やその他の要因が複雑にからみ合つて発症し、これについて業務上外の認定をすることが一般に困難であることから、新通達は、災害性の原因によらない腰痛についてもその認定基準を示しているが、これによると、重量物を取り扱う業務など腰部に過度の負担のかかる業務に従事する労働者に腰痛が発症し、それが当該業務に起因することが明らかである場合には、三八号に該当する業務上の疾病として業務上の認定をすることにし、その認定要件として、作業の内容、当該労働者の身体的条件および作業の従事期間などからみて、当該疾病の発症と業務との因果関係が医学的に明らかにしうるものであることを挙げ、椎間板ヘルニアについては、災害性の原因によることが明らかでない限り補償の対象とはならないとしている。

このように椎間板ヘルニアを除外した理由は、椎間板ヘルニアの中には業務との関連性に一般に乏しい、いわゆるギツクリ腰といわれるものなどがあることにある(<証拠省略>参照)。

ところで、旧通達は、災害性の原因によらない腰痛については、なんら触れていなかつたことになるが、そうだからといつて、災害性の原因によらない腰痛は、すべて三八号に該当しないとするわけにはいかない。

当裁判所は、原告の本件腰痛の原因を、椎間板ヘルニアによると考えるから、以下のことを前提にして判断を進める。

椎間板ヘルニアの多くが、椎間板の退行変性を下地とし、これに日常的な諸動作による負担の積重ねが加わつて椎間板の組織が徐々に損傷されることにより、遂にその発症をみるものであることは、さきに認定したとおりであり、一般にその原因について、業務との関連性を正確に把握することが極めて困難であるため、業務起因性を積極的に認定できない場合がむしろ通例であることは、否定できない。しかし、椎間板ヘルニアの発症の可能性が、日常腰部に加えられる負担の強さに対応し、統計的にも重作業従事者に椎間板ヘルニアの発症が多くみられ、その作業内容が日常の諸動作に比し腰部に著しく過度の負担をおよぼす性質のもので、しかも、その作業従事期間が長期間にわたる場合には、当該業務の影響が、日常生活での諸動作やその他の原因にもまして椎間板ヘルニア発症の主要な原因となつているものと推認するのが最も合理的である。従つて、このような場合には、さきに認定した椎間板ヘルニア発症の病理経過からして、その発症と業務との間の因果関係が医学的にも明らかであるとして、これに業務起因性を肯認するのが至当であるといわなければならない。新通達が、このような場合をも含めて椎間板ヘルニアを原因とする腰痛について、三八号の適用を全く否定するものであるとすれば、前記三五条一号ないし三七号において業務上疾病の範囲を例示したことによつて生じる適用上の不都合を、三八号をもつて補おうとした立法の趣旨に沿わないことになる。したがつて、新通達の認定基準のうち椎間板ヘルニアに関するものは、その発症原因の多様性、ことにそれが一般に業務と無関係に生じうるものであることに鑑み、特に椎間板ヘルニアを例外的に取り扱うことによつて、その業務起因性の認定について厳格な態度を要求したもので、災害性の原因によらない椎間板ヘルニアを原因疾患とする腰痛の業務起因性を、全面的に一率に否定しようとする趣旨までも示したものではなく、このことは、このような認定基準を設けていない旧通達下での三八号の解釈にも妥当すると解するのが相当である。

そこで、この視点に立つて本件をみると、原告は、本件腰痛によつて舞鶴共済病院に入院するまでの間約七年にわたつて、モーターグレーダーの運転業務とその附随業務である刃の取替作業に従事し、うち五年間はこれに専従していたもので、右運転業務従事中は終始中腰の不自然な姿勢でモーターグレーダーの振動と騒音を直接身体に受けていたものである。そして、この振動と騒音は甚だ強度のものであり、その際の不自然な姿勢とあいまつて、右運転業務中に原告の腰部に加えられた負担の程度は、日常生活における一般的な諸動作による負担の域をはるかに超えるものとしなければならない。原告は、この業務に継続的に従事することによつて、通常の日常生活を営む限りでは生じえないような高度の腰部の変性ないし損傷をもたらされたことが推認でき、また、右運転業務に附随するモーターグレーダーの刃の取替作業も、総重量四一キログラムの重量物の運搬を伴うものであるから、これによつて腰部に加えられる負担も、通常の日常生活を営む際の負担より高度のものであると推認できる。しかも、原告は、右業務に従事するようになつてから、慢性的に腰痛を覚えるようになつたものであり、昭和三九年三月二日の刃の取替作業時にその腰痛を悪化させたが、その後も、職場の事情から引き続き約四か月間右業務に従事しており、このこともまた、原告の腰部疾患をさらに増悪させる原因となつた。そして、原告の日常生活その他において、一般的な年齢的、日常的素因以外に、本件腰痛の原因となるような特段の事情の存在したことが認められる証拠は全くない。

以上のような原告の業務内容とその従事期間、腰痛の発症時期とその症状経過、椎間板ヘルニアの発症についての病理経過を併せ考えると、原告の本件腰痛の発症とその業務との間に相当因果関係を肯認することができ、その因果関係は、医学的にも十分説明できるものである。

なお、被告は、原告の本件腰痛の業務起因性を判断する際、原告の業務内容の特殊性には余り考慮を払つていない(<証拠省略>によつて認める)が、この特殊性を抜きにして本件腰痛の業務起因性を判断することは不可能であることに、被告は想到すべきであつた。

六 そうすると、原告の本件腰痛は、三八号に該当する疾病であつて、労災保険法一二条一号による療養補償給付の対象となるものといわなければならず、原告の本件腰痛が業務上の事由によるものと認められないことを前提にした本件処分は違法であつて取消しを免れない。

そこで、本件処分の取消しを求める原告の本件請求を認容し、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 古崎慶長 谷村允裕 松本信弘)

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