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大阪高等裁判所 昭和49年(ラ)261号 決定 1975年1月28日

抗告人(本案原告) 畑中恒一

右代理人弁護士 谷口稔

相手方(本案被告) 陸野研二

主文

原決定を取消す。

本件を大阪地方裁判所堺支部に差戻す。

理由

一  抗告の趣旨および理由

別紙記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

本件記録によれば、原告・抗告人と被告・相手方間の交通事故による損害賠償請求事件(大阪地方裁判所堺支部昭和四七年(ワ)第三七七号)において、抗告人が民事訴訟法による訴訟費用中、訴訟書類に貼付の印紙額の納付について訴訟上の救助を付与されたこと、右事件は、昭和四九年六月二七日の和解期日において、「(一)被告は原告に対し金一八〇万円の支払義務あることを認め、これを分割し毎月二万円あて昭和四九年九月二五日から毎月二五日限り原告代理人方に持参又は送金して支払う。(二)被告に於いて右分割金の支払を引き続き三回遅滞したときは即時に期限及び分割弁済の利益を失い残額を一時に支払わなければならない。」「(五)訴訟費用は各自弁とする。」という内容の和解が成立し、これにより同事件は終了したこと、同裁判所は昭和四九年九月五日本件訴訟上の救助を取消したことが認められる。

ところで、訴訟完結後救助の取消をなしうるかについては異説がないではないが、単に訴訟費用の猶予にすぎないものであり、訴訟費用の支払の免除の効力を有しない関係上、訴訟終結後も取消事由を生じる限り訴訟救助の取消をなしうるものと解するのが相当である。しかし、交通事故訴訟において訴訟救助を受けた被害者が裁判上の和解で訴訟を終了させ、「訴訟費用は各自弁とする。」旨を合意した場合、右和解条項をもって、特段の事情のない限り、被害者が救助された訴訟費用を支払う資力のあることを自認したものと理解するのは相当でなく、加害者が金員支払を約した和解条項が履行されない限り、無資力の状態は継続しているのであるから、和解成立のみを救助の取消事由とすることは相当でない。もっとも、実際問題としては、和解当事者のいずれからか和解条項の履行状況について報告がない限り、裁判所としては履行の有無の把握が困難であるとはいえ、現実に和解条項に従って、支払の大部分がなされるまでは救助の取消は相当でないというべきである。したがって、相手方の本件和解条項の履行状況について審理することなく、本件訴訟救助を取消した原決定は不当であるといわなければならない。

よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取消し、本件を大阪地方裁判所堺支部に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 増田幸次郎 裁判官 三井喜彦 裁判官 福永政彦)

<以下省略>

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