大阪高等裁判所 昭和49年(行コ)35号 判決 1975年6月13日
大阪市城東区野江中之町三丁目二一番地
控訴人
株式会社帝国実業社
右代表者代表取締役
池田照夫
右訴訟代理人弁護士
坂本秀之
同
伊藤寿朗
大阪市城東区野江東之町一丁目四八番地
被控訴人
城東税務署長
多田正友
右指定代理人
岡崎真喜次
同
河口進
同
江里口隆司
同
塩崎寿弥
同
山本喜文
同
岡本至功
右当事者間の課税処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四五年四月一日付でした控訴人の昭和四二年の事業年度(事業年度は毎年一月一日から一二月三一日まで。以下各年の事業年度を単に昭和〇〇年度という)の法人税について所得金額を金一、二一二、六六九円とする決定および無申告加算税を金三三、九〇〇円とする賦課決定、昭和四三年度の法人税について所得金額を金一、四〇二、六六八円とする決定および無申告加算税を金三九、二〇〇円とする賦課決定ならびに昭和四四年度の法人税について所得金額を金二、七一八、一三二円とする決定および無申告加算税を金七九、三〇〇円とする賦課決定をいずれも取消す。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張および証拠関係は、控訴代理人において「仮に確定した決算がなくても、本来被控訴人は独自に戦権調査を行い正当な所得および税額を算定し得るものであつて、法人税法が確定した決算を要求する所以は申告の正当性を確保するためにすぎないので、必ずしも確定した決算の存在が減価償却を認めるための要件ではない。」と述べたほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
理由
当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものとする。その理由は、次のとおり補足するほか、原判決理由説示と同一であるからこれを引用する。
そもそも、法人税法三一条が減価償却費の損金算入について法人自らの決算においてこれを経費として処理していることを必要とするのは、租税法上の所得計算において、対外的に実現した事実については、企業の決算にかかわらず、その実現の結果に基づき真実に従つて税務計算が行われることを要求するに反し、対外的な実現をみないが、企業の内部の計算で会計上収益又は費用として計上されて然るべき損益については、その額を第三者たる課税権者が認定することは適当ではないし、また可能でもないから、一定の限界を定め、その範囲内において企業の行つた会計処理を最終のものとし、それ以外の計算はこれを認めないという原則に基づいている。したがつて、控訴人の確定した決算がなくても減価償却費を認定すべきであるとの主張は、独自の見解であつて採用できない。
そうすると、本件控訴は理由がないこととなるのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長判事 鈴木敏夫 判事 三好徳郎 判事 鍾尾彰文)