大阪高等裁判所 昭和49年(行コ)59号 判決 1977年4月20日
兵庫県尼崎市昭和南通四丁目五三番地
控訴人
東洋観光株式会社
右代表者代表取締役
大谷良治
右訴訟代理人弁護士
長池勇
同
上田潤二郎
兵庫県尼崎市西難波一丁目八番地
被控訴人
尼崎税務署長
森崎勝雄
右指定代理人検事
岡崎真喜次
同訟務専門職
三上耕一
同大蔵事務官
石川智
同
同 瀬戸章平
同
同 住永満
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一、求める裁判
(一) 控訴人
原判決を取消す。
被控訴人は控訴人に対し昭和四五年六月二六日付でした控訴人の昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を取消す。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
(二) 被控訴人
主文と同旨。
第二、当事者双方の陳述、証拠の関係は、次に記載する外、原判決の記載を引用。
(一) 控訴人の陳述
本件土地売買契約書及び移転立退契約書には、何ら補償金額の記入もなく、補償項目や項目毎の金額の記入もなかつた。
控訴人としては、本件土地の買替として取得した土地が当時三・三平方米当り三一〇万円の価格を有したので、本件土地一八九・九七平方米を全体として約一億八〇〇〇万円、建物移転費用補償金約一億円その他動産移転費用補償金等を加算すれば、右補償金の殆んどが対価補償金であると考えていた。
しかるに、大阪市は、昭和四四年四月一四日頃、控訴人に対し、不動産等の譲渡の対価の支払調書及び証明書を送付し、右書面の記載内容によつて、控訴人は始めて本件土地の買取価格や補償項目毎の金額を知つたのである。
控訴人は、本件土地売買関係について多額の支出をしているので、二億八二九八万八二一三円が本件土地買収に伴う控訴人の対価補償に相当する損失金であり、大阪市より受領した二億八九九三万〇一〇六円から右金員を控除した六九四万一八九三円のみが実質的収益補償金の性質を有するものと認めるべきである。
本件の事実関係からすると、大阪市から控訴人が受領した金員の内二億八〇〇三万二〇二三円が対価補償に相当する損失金であり、九八九万八〇八三円が実質的収益補償金の性質を有するものである。
乙第八号証からみて、昭和四四年三月一二日評定書により、本件買収土地の評価がなされ、この評価により個々の補償項目の金額が決定されたものと推認されるから、控訴人主張のとおり昭和四四年一月二〇日当時収用補償金の総額が決定されていただけであつて、個々の補償項目の金額は、その後、大阪市によつて一方的に決定されたことを裏付けるものである。
(二) 被控訴人の陳述
控訴人は、本件土地の売買契約並びに本件建物部分の立退契約締結後の支出金等の事情を述べている。その主張するところは、必ずしも明確ではないが、仮に、本件主張が代替資産の取得価額に関する主張であるとするならば、控訴人の右主張の取得価格は、対価補償金額(一億六六三六万八七〇六円)を超える場合であるので(措置法六四条一項)右主張が失当であるこというまでもない。
(三) 証拠
控訴人は、当審証人牧野安良の証言援用。
理由
次に記載する外、原判決の理由を引用する。
当審証人牧野安良の証言は、原審認定の資料に付加すべきものである。
控訴人の主張中原審の認定、判断に反するものはいずれも採用せず、被控訴人の主張は理由がある。
よつて、控訴人の本訴請求は失当であり、これを棄却した原判決は相当で、本件控訴はその理由がないから、これを棄却し、民訴法第八九条、第九五条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長瀬清澄 裁判官 岡部重信 裁判官藤浦照生は転任のため署名捺印できない。裁判長裁判官 長瀬清澄)