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大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)1214号 判決 1976年8月06日

控訴人

是枝巧

右訴訟代理人

蝶野喜代松

外一名

被控訴人

石川澄

外二名

右三名訴訟代理人

中村正治郎

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所の判断は、次に訂正するほか原判決理由記載のとおりである。

原判決八枚目表七行目の「第一・二回」を「原審第一・二回、当審」と、同八行目の「多津子」を「多津子(原当審)」と、同裏七行目の「メモに基づき原稿を作り」を「遺言者是枝近有以外の第三者作成のメモ(作成者の第三者が誰であるかは、メモ持参者も公証人も確認しておらず、不明である)に基づき、公正書作成の準備として、その筆記を作成し」と、九枚目表二行目の「メモ」から四行目の「述べ」までを、「メモを是枝近有に示したところ、同人は、このメモに書いてあるとおり、財産を孫の石川澄にやりたいと述べ」と、同四行目の「人生」を「人生観」と、同六行目の「第一条」を「第一条前半」と、同九行目の「メモ」から一一行目の「答えた」までを、「前記書記を少しずつ区切つて読み聞かせたところ、是枝近有は、その都度、そのとおりと答えた」と、一〇枚目表三行目の「証人山口」を「原当審証人山口」と、一一枚目表三行目から七行目までを「原審証人岡吉成の証言、控訴人の原当審供述中前認定に反する部分は前掲各証拠と対比して措信できない。」と、同一二行目の「前示」から同裏四行目までを次のとおり、各改める。

本件のように、公証人が、遺言公正証書を作成するにあたり、まず、遺言者以外の第三者作成の遺言の趣旨を記載したメモ(メモの作成者の第三者が誰であるかは不明)の交付を受け、右メモに基づき、公正証書作成の準備として、その書記を作成しておき(大審院昭和九年七月一〇日判決、民集一三巻一三四一頁の事案は、公証人が遺言者作成の遺言の趣旨を記載した書面に基づき筆記を作成しておいた事案であり、本件と異なる)、次に、遺言者に面接して右メモを遺言者に示し、遺言者から、メモに書いてあるとおり、財産を孫の石川澄(被控訴人)にやりたいとの陳述を聞き(右大審院判決の事案は、公証人が、遺言者から、筆記の正確なることの承認以外、遺言の趣旨はさきに交付しておいた書面のとおりとの一言のみを聞いた事案であり、本件と異なる)、更に、前記筆記を読み聞かせ、遺言者がそのとおりと陳述し、右筆記に署名押印した場合、民法九六九条二号所定の遺言者の口援があつたと認めるのが相当である。けだし、右の場合、公証人が筆記の基礎としたメモは遺言者作成のものではないが、遺言者は遺言の骨子を公証人に陳述しているからである。なお、本件のように、民法九六九条二号の行為と三号の行為とが前後しても、公正証書による遺言の方式に違反しない(最高裁判所昭和四三年一二月二〇日第二小法廷判決、民集二二巻一三号二〇一七参照)。

二従つて、原判決は正当で、本件控訴は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民訴法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 和田功)

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