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大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)2508号 判決 1977年1月25日

控訴人

仁川学院中学高校父母の会

右代表者

鈴木嘉蔵

右訴訟代理人

俵正市

外一名

被控訴人

延原千恵子

共同訴訟参加人

篠原英子

右両名訴訟代理人

秋山英夫

主文

原判決を取消す。

被控訴人の訴を却下する。

昭和五〇年七月三日から一〇日間に亘つて開催の控訴人の昭和五〇年度定期総会の原判決添付別紙第一目録記載第三号議案会則改正案承認の件に関する決議(本件決議)は、無効であることを確認する。

控訴人・被控訴人間の訴訟費用は第一、二審とも各自の負担とする。

参加費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人及び参加人主張のうち、原判決事実摘示第二の一、二の各(一)、(二)、(三)、当審主張1の(一)、(四)の各事実は、当事者間に争がない。

二訴及び共同訴訟参加の適否

権利能力なき社団の構成員が、右社団に対し提起する、右社団の総会決議無効確認の訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には、許容される(最高裁昭和四七年一一月九日判決、民集二六巻九号一五一三頁参照)。

権利能力なき社団の構成員が、右社団に対し提起する、右社団の総会決議無効確認の訴が許容される場合、右の訴の請求認容の判決の効力は第三者に拡張されると解するのが相当である。けだし、これを肯定することが、原告の訴訟目的(紛争の抜本的解決)を達成するために必要であり(これを否定したのでは、原告の訴訟目的を達成できず、右の訴は無益の訴として訴の利益が否定されることになる)、社団を被告とすることによつて、通常、社団代表者によつて充実した訴訟追行がなされ、原告の請求を棄却することに利益を有する第三者の利益が確保されるからである(京都地裁昭和四七年三月二九日判決、判例時報六七一号七六頁、判例タイムズ二七九号二四一頁参照)。

本件決議の内容である会則改正の要点は、総会の規定を廃止し、代議員総会の規定を新設し、代議員総会は、役員(会長一名、副会長二名、会計二名、書記二名、会計監査二名)及び代議員をもつて構成し、代議員は委員(各クラス各二名)をもつてこれにあてる(会長及び副会長は学校長の委嘱による、会計及び書記は会長の委嘱による、会計監査は会長が指名し代議員総会の承認を得る、委員は学校長の推薦する者を各クラスの会員に提示してその意向を諮つた上で、学校長が委嘱する)というものである。

本件のような、私立学校の父母の会(権利能力なき社団)の会員が会に対し提起する、総会廃止及び代議員総会新設の会則改正の総会決議無効確認の訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合に該当するから、許容され、右の訴の請求認容の判決の効力は第三者に拡張される。

従つて、本訴訟の請求認容の判決の効力が、参加人と相手方との間にも及び、類似必要的共同訴訟となる場合であるから、参加人の共同訴訟参加は適法である。

しかし、被控訴人は、昭和五一年三月控訴人の会員でなくなり、本訴の原告適格を失い、被控訴人の本訴は不適法となつた。

三本件決議の効力

本件のように、権利能力なき社団の原会則(一〇条三項、一四条)が、総会の決議は、出席会員の賛否による旨規定している場合、会員出席による総会を開催しないで、本件のような書面回答方式によりなされた、総会廃止及び代議員総会新設の会則改正案承認の決議は、右総会廃止決議の重大性より考えて、無効であると解するのが相当である。控訴人の当審主張(二)の事実は、本件決議の場合、書面回答方式による総会の決議を有効とする理由とならない。

四追認決議の効力

控訴人当審主張(三)の事実は当事者間に争がない。追認決議の総会の招集通知書(乙第一号証)は、会則改正案承認の件とのみ記載され、改正案の要領の記載がない。

本件のように、権利能力なき社団の総会の議案として会則改正案承認の件とのみ記載され、改正案の要領の記載のない総会招集通知書に基づく総会においてなされた、総会廃止及び代議員総会新設の会則改正案承認の決議は、右総会廃止決議の重大性より考えて、無効であると解するのが相当である。

従つて、訴の利益は消滅しない。

五よつて、原判決を取消し、被控訴人の訴を却下し、参加人の本訴請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条九〇条八九条を適用し主文のとおり判決する。

(小西勝 林義雄 和田功)

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