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大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)417号 判決 1975年11月13日

控訴人

下村清雄

右訴訟代理人

佐々木敬勝

外二名

被控訴人

株式会社但馬銀行

右代表者

倉橋豊

右訴訟代理人

北山六郎

外四名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

当裁判所の判断は、次に附加訂正するほか原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

原判決一二枚目裏七行目の「第二号証」を「第一号証」と、一三枚目表八行目の「右証人両名」を「原審証人谷角久、同木村春吉」と改める。

原判決一三枚目裏五行目から一二行目までを次のとおり改める。

(一)  <証拠>によれば、谷角は、昭和四一年五月から、同四四年二月被控訴銀行本店勤務になるまでの間、被控訴銀行鳥取支店長の地位にあつて、本件不動産につき被控訴銀行のため設定された抵当権の被担保債権の発生原因である金員貸付を行ない、その関係で、本件損害担保契約当時、被控訴銀行本店審査部付の調査役として、右債権の回収につき責任を持たされていたことが認められる。従つて、谷角は、右債権の回収につき被控訴銀行から委任を受けた商法第四三条第一項所定の商業使用人であると認められる。しかし、抵当債権の回収につき銀行から委任を受けた商業使用人は、抵当不動産の買主との間で売主(抵当債務者)の債務不履行により買主の受ける損害を担保する契約を締結する代理権限を当然には有しない。けだし、右損害担保契約締結は、商法第四三条の立法趣旨からみて、右委任事項の範囲に属しないと解するのが相当であるからである。控訴人は、「本件損害担保契約は、その実質は、被控訴銀行の抵当債権の一部の債務免除である。」と主張する。しかし、抵当不動産の買主との間の損害担保契約締結と抵当債権の一部の債務免除とを同一視することはできない。のみならず、抵当債権の回収につき銀行から委任を受けた商業使用人は、損害担保契約締結の場合と同じ理由により、抵当債権の一部の債務免除をする代理権限を当然には有しない。

原判決一四枚目裏八行目の「それ故、」の前に、「原審証人谷角久の証言、控訴人本人の当審供述によれば、谷角が、本件損害担保契約を締結するについて、被控訴銀行の上司に相談してその了解を得ていないことを、控訴人は知つていた事実を認めうる。」を加え、同裏一三行目の「講ずることなく」を「とることもなく(右手段をとつたことを認めうる証拠はない)」と、同一五枚目表一行目の「あれば」を「あるから」と、同一六枚目表三行目を、「仮に控訴人が右買受の結果損害を受けたとしても、谷角に本件損害担保の約定の代理権があるものと、控訴人が信じたことについて重大な過失があつたことは、前認定のとおりであるから、控訴人は民法第七一五条により被控訴人に対し損害の賠償を請求することができない。それ故、控訴人」と各改める。

従つて、控訴人の主位的請求及び予備的請求を棄却した原判決は正当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 和田功)

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