大阪高等裁判所 昭和50年(ラ)458号 決定 1976年9月06日
抗告人(原審相手方)
甲野春夫
(仮名)
昭和一八年○月○日生
相手方(原審申立人)
甲野夏子
(仮名)
昭和一五年○月○日生
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一抗告の趣旨と理由は別紙のとおりである。
二当裁判所の判断
当裁判所も相手方の本件婚姻費用分担申立は、原審判主文記載のとおり正当として認容すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正・付加するほか、原審判理由3、4記載の認定判断と同一であるから、これを引用する。
(訂正)
1 原審判二枚目表八行目から九行目にかけての「昭和50年5月頃まで」を「一時」に、同裏一四行目中の「期末手当」を「賞与」にそれぞれ変更する。
2 同三枚目表六行目中の「三万円位」を「五万円」に、同行中の「支払つた」を「支払い、同年2月に1万円、同年3月に1万5千円をそれぞれ送金した」に、同裏七行目中の「期末手当」を「賞与」にそれぞれ変更する。
(抗告人の当審における新たな主張に対する判断)
1 先ず、抗告人は、当事者に対する調停不成立の通知は審判移行の前提要件であるところ、原裁判所は抗告人に対する調停不成立の通知を怠つたから、原審判は違法である旨主張するけれども、家事審判規則一四一条による調停不成立による事件終了等の通知は、必ずしも通知書の送達をもつてする必要はなく、家裁庭判所が相当と認める方法をもつて告知すれば足りるものであるところ(家事審判法七条、非訟事件手続法一八条二項)、本件記録中の調停事件経過表によると、抗告人・相手方間の原裁判所昭和五〇年(家イ)第一四二六号婚姻費用分担申立調停事件は、昭和五〇年六月一八日午前一〇時の第一回調停期日において、調停不成立による事件終了の通知が、出頭した当事者双方に対し、家事審判官から調停委員を通じて口頭告知されたことが認められるから、抗告人の右主張は理由がない。
2 次に、抗告人は、原審判は昭和五〇年一二月一一日に、その更正審判は同月一七日に、封筒に発信人・野村健と記載した家庭裁判所でない者によつて、それぞれ送達を受けたが、右各送達は違法であるから、原審判は告知の効力を生じていない旨主張するけれども、原裁判所では、家事事件の非公開制に鑑み、送達郵便物が直接当事者本人以外の者に受領されても当事者本人に無用な心配・迷惑をかけないようにとの配慮から、送達郵便物の封筒裏面発信者欄に、原裁判所の所在場所・電話番号・郵便番号のほかは、事件担当の裁判所書記官の個人氏名だけを記載する方法を実施しているものであつて、右のような送達の方法は、通常当事者本人にとつて望ましい方法であり、その利益にこそなれ決して不利益となるものではないから、是認すべきものであつて違法のいわれはなく、本件記録によると、野村健は本件担当の大阪家庭裁判所書記官であることが明らかであるから、前記各送達はいずれも有効であるといわなければならない。
したがつて、抗告人の右主張もまた理由がない。
3 原裁判所が調査の結果により認定した事実関係に基づき、抗告人に婚姻費用分担の義務があるとした判断は正当として是認でき、抗告人提出の資料によるも右認定判断を左右するに足りない。
よつて、原審判は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(斎藤平伍 仲西二郎 惣脇春雄)
別紙 抗告の趣旨<省略>