大阪高等裁判所 昭和51年(ネ)2073号 判決 1977年3月01日
控訴人
東邦産業株式会社破産管財人
今中利昭
右訴訟代理人
原田弘
外二名
被控訴人
大和鉄芯工業株式会社
右代表者
藤野四朗
右訴訟代理人
後藤陸朗
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者が求めた裁判
一、控訴人
1 原判決を取消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。
二、被控訴人
主文同旨
第二 主張 控訴人の別紙準備書面陳述のほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
第三 証拠<略>
理由
一請求原因事実は当事者間に争がない。
二相殺の抗弁について。
破産管財人が破産財団所属債権を自働債権とし破産債権を受働債権としてなす相殺は、特別の事情のないかぎり許されないと解するのが相当である。けだし、破産債権の弁済は破産手続によらなければ許されないのに、右相殺は管財人が破産手続によらないで臨時破産債権の弁済をするのと同一の結果となるからである。
本件において右特別の事情は認められないから、控訴人主張の自働債権である不当利得返還請求権の有無につき判断するまでもなく、相殺の抗弁は採用できない。
三控訴人は、「事前配当を受領した被控訴人には本件確定の訴の基本たる権利はない。」と主張するが、控訴人のいう事前配当は本件手形とは別個の手形に関するものであるから、右主張は採用できない。
四よつて、本訴請求は正当として認容すべきであり、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり判決する。
(小西勝 和田巧 蒲原範明)