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大阪高等裁判所 昭和51年(ネ)480号 判決 1977年4月13日

控訴人 宮園優

右訴訟代理人弁護士 加藤謹治

被控訴人 佐々木保

右訴訟代理人弁護士 高藤敏秋

主文

原判決中控訴人の敗訴部分を取消す。

被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人は、本件控訴を棄却する、控訴費用は控訴人の負担とする、との判決を求めた。

当事者双方の主張は、次に付加訂正するほかは、原判決事実欄に記載のとおりである。(但し、原審相被告山之口、同東洋紡不動産株式会社関係の部分を除く。)

1  三枚目表九行目一字目の「院、」の次に「右入院期間を除く」を、四枚目表九行目の「七月」の次に「二〇日」を、同一〇行目の末尾に「そして売却後は控訴人が右事故車を使用したことはない。」を各挿入する。

2  当審に於て控訴人は次のとおり抗弁した。

昭和五一年四月末日原審相被告山之口香は、被控訴人に対して金二八七万円を弁済し、損害賠償の残額債務は同人に対してのみならず、控訴人に対しても免除することを約した。

3  被控訴人は、山之口より金二七八万円の弁済を受けたこと、山之口に対してその余の残債務を免除することを約したことは認めるが、その余は否認する、と述べた。

(証拠関係)《省略》

理由

一、本件事故発生の状況に関しては、当裁判所の認定も原審と同じであるから、原判決五枚目裏一一行目より六枚目裏四行目までを引用する。(但し、五枚目裏一一行目の「乙一号証の」の次の「一」を削除する。)《証拠省略》によれば、被控訴人は右佐野弘光運転のマイクロバスに同乗していて右衝突による衝撃により左棘上筋腱断裂の傷害を受けたことが認められる。

二、責任

被控訴人は控訴人に対して、控訴人が山之口香運転の本件事故車を右山之口と共有し、自己のため運行の用に供していたとして、自賠法第三条による責任を問うところ、《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。

(1)  控訴人は右事故車を所有していたが、昭和四八年七月二〇日頃これを代金一一万円で山之口香に対し売渡し、代金支払については月賦払を認め、本件事故は月賦金一万円を受領しただけの時点(同年八月四日)で発生したのであるが、所有権留保の約定はないこと。

(2)  控訴人の妻と右山之口香の妻とは異母姉妹で、山之口は農閑期の出稼ぎ労働のため昭和四八年一月頃大工職の控訴人をたよって来たもので、控訴人の下働き人夫として働き控訴人より日給を貰っていたが、控訴人方の近くにアパートを借りて住んでいたこと。運転免許を有する山之口は右買受前より控訴人のために右事故車に控訴人やその他の職人を乗せて仕事場への往復を運転することがあり、買受け後にも同様のことがあったが、買受けた後は控訴人方より自己のもとえ引取って管理し占有していること。

(3)  本件事故は山之口が姉とその子を大阪より乗せて帰る途中の事故であること。

以上の事実によれば、山之口運転の事故車は売買によって所有権は同人に移転し、控訴人が同人と共有していたものとは認められず、売渡し後に控訴人がこれに同乗して仕事場へ行くことがあっても(その瀕度も不明)、そのことだけで仕事上の関係に於て控訴人が右事故車を自己のため運行に供用していたものと認めるには足らない。まして本件事故は仕事を離れ山之口の私的用向に供している際の出来事である。そうすれば、控訴人が本件事故当時右事故車の保有者であったと云うことはできない。

三、右の次第であるから、被控訴人の控訴人に対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく失当である。

よって本件控訴は理由があるから、右と異なる原判決の一部を取消し、被控訴人の請求を棄却し、民訴法第九六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 喜多勝 裁判官 林義雄 楠賢二)

<以下省略>

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