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大阪高等裁判所 昭和51年(ラ)125号 決定 1978年1月14日

抗告人 広田義和(仮名)

相手方 広田清志(仮名) 外二名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨と理由は別紙(略)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

当裁判所も被相続人亡広田祥治の遺産を原審判のとおり分割すべきものと判断する。その理由は、次に付加訂正するほか、原審判説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原審判三枚目表一〇行目の「相手方みち子」から同一三行目までを次のとおり改める。

「被抗告人みち子は相続分を放棄し、これを他の相続人らにおいて平等に分けて欲しい旨述べているが、同人は民法九一五条により相続の放棄をしていないから、右意思表示によつて相続放棄の効力を生じないし、また本件物件以外に相続分相当の財産の生前贈与を受けているので本件物件について権利がない旨主張するものでもないから、右物件についてその相続権を失うものでもない。しかし、同人の右意思表示は相続放棄の期間を経過して相続した遺産に対する自己の相続分の権利を放棄(もつとも右のような放棄は相続の放棄と異なり第三者に対抗できない。なお、本件においては前認定のとおり遺産には債務はなく、積極財産のみである。)し、遺産を放棄しない相続人においてその相続分に応じて遺産分割をなすことを裁判所に委ねているものと解することができるから、このような場合遺産分割の審判をするについては、一旦相続した被抗告人みち子にその相続分に応じた遺産分割をすることなく、直ちに抗告人、被抗告人清志、同功司の各相続分を三分の一あてとし、被抗告人みち子の相続分を零として遺産分割の審判をなすべきである。」

2  抗告人は、現在船員で不在地主になる被抗告人清志及び現在タクシー運転手で農業に必要な機械設備を持たない被抗告人功司に対し農地を取得させることの不当と農地全部を抗告人に取得させ被抗告人清志、同功司に対して価格を金銭で補償させるべきであると主張するが、被相続人の遺産が不動産のみであること、抗告人が専業農家でないこと、従来の調停審判の進行の経緯からして、現物のみの分割としたのはやむを得ないところであり抗告人の主張は理由がない。

よつて、原審判に対する本件抗告は失当であるからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村瀬泰三 裁判官 高田政彦 弘重一明)

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