大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和51年(行コ)23号 判決 1978年1月31日

控訴人(原告一四〇〇名の選定当事者) 松岡与一

被控訴人(被告) 京都府知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、控訴人

原判決を取消す。

控訴人に関する部分及び選定者斉藤太四郎、同石田義一、同斉藤健一、同並河俊和、同仲野治男、同法貴治夫、同並河保、同並河鐘三を除くその余の選定者に関する部分につき、本件を京都地方裁判所に差し戻す。

被控訴人が昭和四六年一二月二八日付京都府告第七三一号をもつて公示した南丹都市計画市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画決定のうち、京都府亀岡市曾我部町全域に関する部分を取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、被控訴人

主文同旨。

第二、当事者の主張及び証拠関係

控訴人において別紙控訴の理由記載のとおり附加陳述し、被控訴人において「選定者斉藤太四郎、石田義一、斉藤健一、並河俊和、仲野治男、法貴治夫、並河保、並河鐘三の八名以外の控訴人を含む選定者が本件都市計画決定部分の区域に属する土地の所有者であることを争う。別紙控訴の理由の主張が本件都市計画決定に至る手続等に何らかの瑕疵があるとの事実の主張であるとすれば、これを否認する。」と述べたほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人の本件訴え中控訴人に関する部分及び選定者中斉藤太四郎、石田義一、斉藤健一、並河俊和、仲野治男、法貴治夫、並河保、並河鐘三を除くその余の者に関する部分は不適法として却下すべく、控訴人の本件請求中右選定者八名に関する部分は失当として棄却すべきものと考える。その理由は、次のとおり附加訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

一、原判決六枚目表八行目「本件都市計画決定」の次に「中曾我部町全域に関する部分」を加える。

二、原判決六枚目裏四行目「二のイ、ロ」の次に「、同七号証の一、同号証の二のイ、ロ、同八号証及び弁論の全趣旨」を加え、同五行目「を定めたうえ、同」を「と定められた」と改め、同六行目「するもので」の次に「あり、曾我部町全域についてはこれを市街化調整区域と定めるもので」を加える。

三、原判決七枚目表四行目「(同法三四条、四三条)。」を次のように改める。

「。すなわち、市街化調整区域内においては、同法三三条所定の基準のほか、同法三四条所定の基準に該当する場合でなければ開発許可を受けることはできず、また、開発許可を受けた開発区域以外の区域内では、何人も、原則として同法四三条一項所定の都道府県知事の許可を受けなければ建築物の新築又は用途の変更(以下、建築等という。)をすることができないところ、同条二項及びこれに基づく同法施行令三六条所定の基準に該当する場合でなければ右許可を受けることはできないのである。そして、同法による市街化調整区域の決定は、それ自体、開発行為、建築等に許可を要することとし、しかもその許可をなすべき場合を限定することによつて、当該区域内の市街化の抑制をはかろうとする完結的な行為であり、右区域決定後に行われる当該区域内の開発行為等の許可申請に対する処分等の後続する処分によつて完成される一連の手続における前提段階の行為にすぎないものと目すべきものではない。」

四、原判決七枚目表五行目から六行目「都市計画区域」を「市街化調整区域と定められた曾我部町全域」と改め、同八行目「計画決定」の次に「中曾我部町全域に関する部分」を加える。

五、原判決七枚目裏一行目冒頭から同八枚目表一行目「ならない。」までを削る。

六、原判決八枚目表二行目「本件都市計画決定」の次に「中曾我部町全域に関する部分」を加える。

七、原判決八枚目表四行目冒頭から同裏一一行目「適法である。」までを削り、同最終行「四」を「三」と改める。

八、原判決九枚目表一〇行目「都市計画」を「右」と改める。

九、原判決九枚目裏二行目「解すべきである」の次に「し、また、住民又は利害関係人が単に都市計画法一七条二項による意見書を提出したのにその意見が容れられなかつたことの故をもつて直ちに何らかの私権ないし法的利益を侵害されたとすることはできない」を加える。

一〇、原判決一〇枚目表三行目「右事実」を「曾我部町に土地、建物を所有、賃借する者であるとの事実」と改める。

一一、原判決一〇枚目表八行目「五」を「四」と改める。

一二、原判決一三枚目裏八行目「と解される。それゆえ、」を次のように改める。

「と解されるのであり、その間に、曾我部町全域を都市計画区域内にとどめて市街化調整区域に区分すべきものとした被控訴人の判断を、隣接する西別院町を都市計画区域外としたことの関連において不公平、不平等な取扱であつて違法であると評価すべき何らの事情もうかがわれない。なお」

一三、原判決一四枚目表五行目の次に、次のとおり加える。

「4なお、控訴人は、別紙控訴の理由の三、四において、本件都市計画決定中曾我部町全域に関する部分につき独立の取消理由を主張するもののようにもうかがわれるが、市町村における都市計画審議会は、都市計画法上、同法一八条一項の関係市町村の意見を付議する機関として設置することを必要とされているものでもないのであつて、特段の論証もないのに、亀岡市の都市計画審議会において曾我部町の委員が一名である(そのことの意味自体、必ずしも明確ではない。)ことが直ちに右取消理由となりうるものと解することはできないし、また、右審議会及び京都府都市計画地方審議会の委員の任命が公正を欠き、その委員が手当を支給されていることにより審議の公正が害された等の事情を認めるべき何らの証拠もない。また、そうである以上、その違憲の主張も、もとより採用する余地はない。」

一四、原判決一四枚目表八行目「六」を「五」と改める。

そうすると、原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂井芳雄 下郡山信夫 富澤達)

(別紙)

控訴の理由

一、昭和五一年五月六日、昭和四六年(行ウ)第三一号都市計画法による市街化調整区域指定処分取消請求事件の判決の書類を受領いたしました。

二、本件裁判につき選定者一三九四名は土地の所有者であり利害関係人であることを主張した結果八名だけの謄本で良いと言う事であつたので、全員の謄本を取らずに資格者の閲覧の証明書によりすると申したのに、その必要は無いとの裁判官の意見でその後当方の証拠の申立も聞き入れられず結審を申渡されたので裁判官の忌避を申立てし処、控訴において証拠の申立をする道が開かれている事を理由に忌避が却下になつた次第であります。

三、憲法第一二条、第二九条を無視なし決定されたので取消しを求めたのであります。都市計画審議委員は亀岡市においては市長の指名により、曾我部町は亀岡市の面積、人口共に約一〇分の一に該当するにかかわらず一名であり、全委員は六十数名を以て審議委員会が開催され、最初より此の委員には好意を以て手当が支給され市長の提案通り賛成される様な事で委員が指名されております。

四、京都府知事も亀岡市と同じく知事の指名による計画地方審議会の審査委員でありその審査員は公費で手当を支給され原案に賛成される委員が指名されており曾我部町民が全戸差別されこれを決められようと言う結果であつたが、数百人が此の審議会に押しかけ抗議をした結果正義の審議委員二名が原案に訂正の発言されたのみであります。

五、これがため曾我部町住民が都市計画決定前に京都学園大学周辺に宅地が造成され現在は雑草ボウボウとして使用出来ないようにしている様な結果であり、多くの社会人は宅地が無く困つているのにかかわらず、交通の便の良い社会的福祉になる土地も遊ばせ憲法に反して差別なし決定したので取消しを求めている次第であり、

六、告示前に五〇米、二五米、幼児用プール、これに附属した施設、脱衣場並びに休憩所約二〇〇坪も建設されておりますが、告示前に認可申請したのにかかわらず、認可せず、此の施設は年間約三万人の利用者もあり、無料解放されている施設であります。

七、判決について土地の所有者で無いという理由で不適格としているも口答ではあるが裁判官は都市計画法は個々につき所有謄本は必要が無いと言う事であり、尚必要なれば全員に所有謄本を取れば多額な費用が入り大変であるので、資格者において閲覧、所有証明を以ていたします。

八、以上一審においては当方の証拠の申立も用いられず、一方的に結審判決されたものでありますので控訴した次第であります。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例