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大阪高等裁判所 昭和51年(行コ)5号 判決 1978年6月30日

大阪市東成区神路二丁目八番三三号

控訴人(原告)

株式会社 下村

右代表者代表取締役

下村正治

右訴訟代理人弁護士

久保泉

同市同区東小橋北之町一丁目

被控訴人(被告)

東成税務署長

末広益男

右指定代理人検事

細井淳久

法務事務官 中嶋寅雄

大蔵事務官 筒井英夫

神崎勝

藤島満

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人(被告)

右代表者法務大臣

瀬戸山三男

右指定代理人検事

細井淳久

法務事務官 中嶋寅雄

右当事者間の更正処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

一、控訴人は、原審において、

1. 被控訴人東成税務署長が控訴人の昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の法人税につき昭和四一年一〇月三一日付をもつてなした法人税額等の更正および加算税の賦課決定のうち、所得金額の更正額につき金一八二〇万八七〇一円をこえる部分および過少申告加算税の賦課につき右所得金額に対応する加算税額をこえる部分は、これを取り消す。

2. 被控訴人国は、控訴人に対し、金四七四万八一七〇円とこれに対する昭和四一年一二月一日から支払済に至るまで日歩二銭の割合による金員を支払え。

との判決を求め、

被控訴人東成税務署長は、控訴人の同被控訴人に対する請求を棄却する。

との判決を求め、

被控訴人国は、控訴人の同被控訴人に対する訴を却下する。

との判決を求めた。

原裁判所は、

1. 被控訴人東成税務署長が控訴人の昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の法人税につき昭和四一年一〇月三一日付をもつてなした法人税額等の更正および加算税の賦課決定のうち、所得金額の更正額につき金二三三六万三二八四円をこえる部分および過少申告加算税の賦課につき右所得金額に対応する加算税額をこえる部分は、これを取り消す。

2. 控訴人の被控訴人東成税務署長に対するその余の請求を棄却する。

3. 控訴人の被控訴人国に対する訴を却下する。

との第一審判決を言い渡した。

控訴人は、右判決に対し控訴を申し立て、原判決を請求の趣旨第一および第二項と同旨に変更する。

との判決を求め、

被控訴人らは、本件控訴を棄却する。

との判決を求めた。

二、当事者双方の事実上および法律上の主張ならびに証拠関係は、左記(1)および(2)のとおり訂正するほか原判決の事実の項に摘示してあるとおりであるから、ここにこれを引用する。

(1)  「請求原因5」の第一項全文(原判決三枚目裏末行から同四枚目表六行目まで)を左記のとおりに訂正する。

「控訴人(原告)の被控訴人(被告)署長に対する請求が認容されたならば、控訴人は、法人税本税につき四二一万二二二〇円(争のある所得金額一一〇八万四八〇〇円の三八パーセント。但し一〇円未満切捨)、過少申告加算税につき二一万〇六一〇円(本税の五パーセント。但し一〇円未満切捨)、延滞税につき五三万九一三〇円(本税に対する昭和四〇年三月一日から昭和四一年一一月三〇日まで六四〇日間日歩二銭の割合で計算した額。但し一〇円未満切捨)、以上合計四九六万一九六〇円を過納したことになる。したがつて、その場合被控訴人(被告)国は、控訴人に対し右過納額から前示還付済額二一万三七九〇円を差し引いた四七四万八一七〇円をこれに対する納付日の翌日である昭和四一年一二月一日から支払済に至るまで昭和四五年法律第一三号による改正前の国税通則法第五八条所定の日歩二銭の割合による加算金を附加して還付すべきものである。」

(2)  「被告らの主張に対する認否2」の第二項全文(原判決一〇枚目表八行目から同一一枚目裏二行目まで)を左記のとおりに訂正する。

「そもそも借地権なるものは、それ自体が取引の対象となる場合が少く、設定に際しての対価の有無、多寡も千差万別で、市場価格の算定が容易でない。また、借地権の消滅に際して借地人が対価を収受し得るかどうか、収受し得るとしてもその額がどの位になるかは、地主、借地人間の特殊の個人的関係の有無、借地権設定の際の権利金授受の有無、地代の額、借地権の消滅が地主および借地人のいずれの求めによるものかなど諸般の事情に支配されることを免れぬものである。」

理由

一、当裁判所は、訴人の被控訴人東成税務署長に対する請求は、本件法人税額等の更正および加算税の賦課決定のうち所得金額の更正額につき二三三六万三二八四円(控訴人の昭和三九年度分の所得金額として争のない一八二〇万八七〇一円になお計上すべき借地権消滅に伴う対価相当額五一五万四五八三円を加算したもの)をこえる部分および過少申告加算税の賦課につき右所得金額に対応する加算税額をこえる部分の取消を求めている限度において認容し、その余を棄却すべきものと考えるものであつて、その理由とするところは、左記(1)ないし(4)のとおり附加、訂正を施すほか原判決理由中の説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

(1)  「(被告署長に対する請求について)五」の第一項の末尾(原判決一五枚目表一一行目)に続けて左の一文を附加する。

「以上の点に関し、鑑定人小野三郎の鑑定中には、本件借地附近において昭和三九年四月当時借地人が土地の賃借権を消滅させるにあたつては、事情のいかんにかかわらず対価を収受する取引上の慣行があつたとは認められないとなす部分があるが、前掲証人の証言を参酌すれば、右鑑定部分は、借地人が一方的に自己の借地権を放棄するような取引上稀な場合を想定しているものと考えられるので、本件に適切でない。」

(2)  「(同)六」の第一文(原判決一六枚目表一行目から末行の「妥当である。」まで)を削り、同個所に左記を挿入する。

「次に、本件借地権消滅の代償として借地人が地主から受け取るのを相当とすべき適正金額について、前掲乙第一号証(不動産鑑定士木口勝彦作成の鑑定書)は、これを本件借地の更地としての取引価額の五〇パーセントとなすものであるが、なお右証書のほか証人木口勝彦の証言、前掲鑑定人の鑑定の結果、上記認定の諸事実のうち、本件借地については権利金の授受がなかつたこと、本件建物が右借地権消滅当時かなり老朽化した木造倉庫で、それ自体の経済的価値がなかつたこと、右当時本件借地の倉庫敷地としての立地条件が悪化していたこと、借地権の消滅が地主の一方的要請によるものでなかつたこと、借地人が地主から代替建物の賃貸を受けていることなどの事情を総合しても、右適正代償額は、本件借地の更地としての取引価額の三〇パーセントを下るべきでない。以上の点に関し前掲鑑定人の鑑定中には、本件借地権消滅の代償額としては本件借地の更地価額の一〇パーセント程度をもつて相当とするとなす部分があるけれども、右は、個人とその個人を代表者とする会社という本件借地契約当事者間の特殊な関係からして、借地権消滅の対価として給付される額が実際には上記の程度を出ないであろうという推論の結果を表示し、または右推論の結果に準拠して適正代償額を算出すべきものとしたものと認められるのであつて、本件において問題とすべき客観的に適正な代償額の算出の根拠としては適切なものと考えられない。」

(3)  「(同)六」の第二項の六行目(原判決一六枚目裏の末行)の「代償額は」の次に「最小限」を挿入する。

(4)  「(同)七」の冒頭二行目(原判決一七枚目表三行目)の「一般的に」の次に「少くとも」を挿入する。

二、次に控訴人の被控訴人国に対する訴は、本件の法人税額等の更正および加算税の賦課決定が取り消されることによりはじめて発生する過納金とこれに対する法定の還付加算金の支払義務の履行を求めるものであるから、将来の給付を求める訴と解されるところ、国税通則法五六条一項、五八条によれば、右決定が取り消された場合遅滞なく同被控訴人から控訴人に対しその任意支払がなされるものと予想されるので、控訴人において予めその請求をなす必要があるとは考えられない。よつて控訴人の被控訴人に対する訴は、その利益を欠き不適法として却下を免れないものである。

三、してみれば、以上と同旨に出た原判決は相当であるから、民事訴訟法三八四条に従い本件控訴を棄却することとし、なお、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 朝田孝 判事戸根住夫および判事畑郁夫は転任のため署名押印することができない。裁判長判事 朝田孝)

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