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大阪高等裁判所 昭和52年(く)25号 決定 1977年3月31日

少年 D・H(昭三二・九・一三生)

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

記録によれば、本件抗告を申し立てたI・Y子は少年の母であり、同付添人弁護士○山○洋は原決定後の昭和五二年三月二八日右I・Y子によつて選任されたものであつて、少年法三二条は保護処分の決定に対し抗告を申し立て得る者を保護処分を受けた少年、その法定代理人および付添人に限つているところ、ここに法定代理人とは、民法上の法定代理人、すなわち親権者および後見人をいうが、少年は昭和五一年八月二六日M・N子と婚姻の届出をなしていて民法七五三条により成年に達したものとみなされ、もはや親権(後見)に服する余地はなくなつているから(同法八一八条一項、八三八条一号)I・Y子は少年の法定代理人とはいえないし、実父母といえども親権を有しない者は法定代理人ではないから抗告権を有しないといわざるを得ず(最判昭和二六年四月一〇日刑集五巻五号八二〇頁、最決昭和三〇年四月一一日刑集九巻四号八三六頁参照)、I・Y子の本件抗告申立は不適法といわなければならない。かつまた、ここに少年のため独立して抗告をなし得る付添人は、原審における付添人をいい、原決定後に選任された付添人は独立しては抗告をすることができず、弁護士○山○洋の本件抗告をI・Y子の任意代理人としてなしたものと解しても、右にみたようにI・Y子自身に抗告権が認められない以上右○山○洋の本件抗告もまた不適法といわなければならない(最決昭和四四年九月四日刑集二三巻九号一〇八五頁参照)。結局本件各抗告の手続が規定に違反したことに帰する。

よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により本件各抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢島好信 裁判官 吉田治正 朝岡智幸)

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