大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)1094号 判決
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【判旨】三<証拠>を総合すると、(1)、明治四一、二年頃山尾民蔵、コヨは松永倉蔵から本件土地(三)の提供を受け同人の懇望に応じて同地上に(四)の建物を建築した。結局、右松永倉蔵と山尾民蔵との間で(三)の土地につき(四)の建物所有を目的とする使用貸借契約が成立した。(2)、その後山尾民蔵が死亡して山尾民三郎がその相続をし、他方、昭和一五年一月一七日松永倉蔵が隠居し、松永兼雄がその相続をした。(3)、昭和二九年山尾民三郎が死亡し遺産分割の協議により被控訴人山尾吉治が相続により(四)の建物を取得し、現在まで同建物に居住しこれを使用している。(4)、昭和三七、八年頃までは(三)の土地使用等についての謝礼の意味で年二斗の米を、山尾民三郎の妻である被控訴人山尾よりえが松永兼雄方に持参し、その頃同女が交通事故で他に転居したため、それ以後昭和四〇年頃までは被控訴人山尾吉治が右の米二斗を松永兼雄方に持参していた。(5)、昭和四一年一月一七日松永兼雄が死亡し、控訴人が相続により(三)の土地を取得した。(6)、同月二〇日頃被控訴人山尾吉治の妻が右の米二斗を控訴人方へ持参したところ、控訴人は増額を要求してその受取を拒否した。以上の事実を認めることができ<る。>
建物所有のための宅地の使用貸借の終期は、建物の所期の用途にしたがつて使用を終つた時であると解されるから(民法五九七条二項、大判昭一三・三・一〇法学七巻九四九頁)、このような場合、建物の使用が終らない間に借主が死亡しても、特段の事情のないかぎり敷地の使用貸借が当然に終了するものではない。けだし、借主の死亡による使用貸借の失効を定める民法五九九条は、使用貸借が借主その人を考慮してその人に対してのみ貸与される場合が多いことを念頭において当事者の通常の意思を推定した任意規定であるが、そのような個人的考慮を重視すべきでない建物所有を目的とする敷地の使用貸借について同条をそのまま適用するのは当事者の通常の意思に反するからである。
そして、前認定の各事実を考え併せると、本件(三)の土地は山尾民蔵が松永倉蔵から使用貸借により借り受け、ついで山尾民三郎、被控訴人山尾吉治が順次その使用借権を相続して、右倉蔵の相続人松永兼雄との間にも円満に使用貸借を継続していたことが認められる。したがつて、山尾民三郎の死亡により使用貸借は失効した旨の控訴人の抗弁を採用することができない。
(下出義明 村上博巳 吉川義春)