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大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)1272号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

六次に被控訴人の控訴人らに対する保証金返還請求について判断する。

1、前記一の(二)(3)および(四)の事実によれば、前記本件作業契約の解除によつて、控訴人岡本は(控訴人小川の連帯保証の点はしばらく措く)、すでに受取つた保証金三〇万円の返還義務を有するものと一応解せられないでもない。<中略>

2、しかし乍ら、本件においては左の事実が存し、これらを総合勘案すると、被控訴人が契約解除権を行使して保証金残金等の支払義務の拘束から脱することができるのは当然としても、そのうえ、右保証金の返還を求めるのは、信義則上これを許すことができないものとしなければならない。

(1) 右保証金返還約定は、契約当事者間においては、本件作業契約が順調に運ばれて、契約の目的を達して終了する場合のことを念頭においた定めであると解せられること、

(2) 本件作業契約の履行不能(場所提供義務の履行不能)は前記(四の1の(二)および(四))のとおり債務者たる控訴人岡本の責に帰すべきものといえども、そうなつたのは、偶々被控訴人の保証金支払時期が当初の約定より大巾に被控訴人に有利に延伸され、ために被控訴人が当時において右保証金残金の不払につき、これを法律上遅滞の責を問われずに済んだが故でもあること、

(3) 他方前記(四の1の(四))のとおり、被控訴人も、黄からの契約解除を防ぎ、本件作業契約の履行不能を招来しない手段を講ずることが可能であつたこと、

(4) しかるに被控訴人は、敢えてそうせずに、控訴人岡本の責任に甘んじて、契約終了の途を撰び、自ら先にした三〇万円の投資を事実上無駄にしていること、

(5) 一般に法が契約解除権に制限を加え、一旦成立した契約関係の濫りな破壊を好まないことに照らせば、履行不能が債権者の責に帰すべき事白にまでは当らなくても、債権者にその履行不能の招来の防止を期待できるのにこれがなされなかつた場合においては、債権者に契約解除権を与えて、双務契約上の債権者の債務を免れしめる反面、或る場合には、その原状回復請求権を制限する等によつて、右債権者の履行不能防止への非協力に製肘を加えることが衡平に適すると考えられること、

(6) もともと控訴人岡本としては本件作業契約により相当の利益(被控訴人から得る採集料と黄へ支払う賃料の差額)を得ることが可能であつたのに、うかつにも控訴人小川が、保証金支払期日の猶予を求める被控訴人に好意を示しこれを容れてしまつたため、事実上黄への賃料支払資金に窮し、その契約解除を受けて本件履行不能を招くと共に右将来利益を喪失したのであるから本件保証金内金三〇万円を控訴人岡本に領得させても、強ちこれを不当ということもできないこと。

3、よつて、被控訴人の控訴人らに対する保証金返還請求は、控訴人小川につき連帯保証の成否を問う迄もなく、失当として排斥を免れない。

(山田義康 潮久郎 藤井一男)

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