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大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)355号 判決 1977年10月11日

昭和五二年(ネ)第三二七号事件被控訴人

昭和五二年(ネ)第三五五号事件控訴人

第一審原告 原梶治行

昭和五二年(ネ)第三二七号事件被控訴人

昭和五二年(ネ)第三五五号事件控訴人

第一審原告 杉本曻

右第一審原告両名訴訟代理人弁護士 長山淳一

同 長山亨

昭和五二年(ネ)第三二七号事件控訴人

昭和五二年(ネ)第三五五号事件被控訴人

第一審被告 藤原春義

主文

第一審被告の控訴を却下する。

第一審原告らの控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

第一審被告が、小倉婦美子に対する大阪法務局所属公証人松田数馬作成昭和五一年第二〇七〇号公正証書の執行力ある正本に基づき、昭和五一年一〇月九日に大阪府堺市翁橋町一丁一二一番地の六和幸センタービル地階クラブ白馬においてなした原判決添付物件目録記載の物件に対する強制執行は、これを許さない。

訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

(昭和五二年(ネ)第三二七号事件関係)

事実

第一審原告ら代理人は、主文第二ないし第四項と同旨の判決を求めた。

第一審原告らの主張及び証拠の提出・援用は、甲第一ないし第五号証を提出し、当審における第一審原告両名各本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

第一審被告は、適式の呼出をうけながら、原審及び当審口頭弁論期日に出頭せず、また、答弁書その他の準備書面の提出もしないが、弁論の全趣旨によると、本件物件が第一審原告らと小倉婦美子との共有物件であることを争っていることが窺われる。

理由

(一)  《証拠省略》を総合すると、第一審原告ら主張の本訴請求原因事実をすべて認めることができる。そうすると、本件物件は、本件強制執行をうけた当時から現在に至るまで、第一審原告らと小倉婦美子との共有に係るものであり、その持分の割合は、各人平等の三分の一宛であるといわなければならない。

(二)  そこで考えてみるに、元来、共有は、二人以上の者が何ら人的なつながりなくして同一物を共同で所有する形態であり、各共有者がそれぞれ一個の所有権を有し、それらの各所有権が一定の割合において相抑制し合い、その内容の総和が一個の所有権の内容と等しい状態にあるものであって、共有物の処分は、その共有者全員の同意がなければなし得ず、各共有者の有する持分権は、同一物上に存立する他の共有者の有する持分権によって抑制をうけつつも、共有物全体を目的とする一個の所有権なのであるから、各共有者は、他の共有者又は第三者が共有物に対して侵害を加えるときは、その持分権に基づき、単独で共有物全部に対する妨害の除去を請求し得るものというべきである。そうすると、共有者の一人に対する債務名義に基づき、当該共有者に対する強制執行として、その共有物に対し差押がなされたときは、他の共有者は、その共有物に対する侵害として、自己の持分権に基づき、単独で共有物全部につき、執行の目的物の譲渡若しくは引渡を妨げる権利を有する第三者としての異議を述べ、当該強制執行の排除を求め得ること明らかである(なお、附言するに、共有者の一人に対する債務名義に基づき、当該共有者が共有物について有する持分権につき強制執行をしようとする者は、民事訴訟法第六二五条所定の強制執行の方法を採るべきであり、先ず、当該持分権の差押をして、その強制執行を開始すべきであるといわなければならない)。

(三)  右説示の見地からすると、前記認定の本件における事実関係の下においては、第一審原告らは、民事訴訟法第五四九条第一項所定の第三者として、本件強制執行の排除を求め得るものというべく、第一審原告らの本訴請求は理由がある。そうすると、これと趣旨を異にし、第一審原告らの本訴請求の一部を認容し、一部を棄却した原判決は、その棄却の限度において不当であり、第一審原告らの本件控訴は理由があるから、右趣旨に従って、原判決を変更することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条・第八九条を適用した上、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 本井巽 裁判官 坂上弘 潮久郎)

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