大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

大阪高等裁判所 昭和52年(ラ)383号 決定 1978年9月04日

抗告人 井上善雄

相手方 関西電力株式会社

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨と理由は、別紙(一)(二)記載のとおりであり、これに対する被抗告人の意見は別紙(三)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  記録によると、抗告人は昭和五二年五月二八日原裁判所に対し、別紙(四)記載の文書について同記載の理由により文書提出命令の申立をしたのに対し、原裁判所は同年九月一二日の本案第一一回口頭弁論期日において、右申立は主張事実との関連性が乏しいとの理由で却下した事実が認められる。

2  文書提出命令の申立に対する却下の裁判は、右文書が民訴法三一二条各号所定の文書に該当しないとき、又は、右文書性の有無にかかわらずその提出を命ずる必要がない(同法二五九条)ときのいずれかにおいてなされるものである。そして、右前者の判断についてはこれによつて不利益を受ける申立人において同法三一五条により即時抗告を申立てることができるが、一方、後者の判断については即時抗告をもつて不服を申立てることはできないものと解する。すなわち、

文書の提出命令の申立は、書証の申出であつてその必要性の有無については当該本案事件の審理裁判をなすべき裁判所が事案の内容、事件の具体的進行状況に則して判断のうえ決定すべきものであり、これに対し抗告をもつて不服を申立て得るとすることは、元来受訴裁判所が右判断に基づいてなすべき証拠の取捨選択につき上級裁判所が制肘を加えることを認めるもので、受訴裁判所の自由な心証の形成を妨げることとなり許されないものと解する。そして、右証拠の採否についての不服は民訴法三六二条、三九六条により本案判決に対する上訴によつてこれをなし、その判断は右判決の当否についての判断の中でなされるべきものである。

してみると、本件文書の提出命令の申立については、前記認定のとおり、原裁判所において、右文書が民訴法三一二条各号所定の文書に該当し被抗告人においてこれが提出義務を負うか否かにかかわりなく、右文書は本案訴訟の証拠資料としては関連性が乏しく、これを取調べる必要性に欠けるとして右申立につき却下決定をしたものであるから、右決定に対し即時抗告をもつて不服を申立て得ないものといわねばならない。

3  したがつて、本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、抗告費用は抗告人の負担として、主文のとおり決定する。

(裁判官 村瀬泰三 高田政彦 引重一明)

(別紙)(一)(二)(三)(四)<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例