大阪高等裁判所 昭和52年(ラ)527号 決定 1978年3月14日
抗告人 山本太一
主文
原審判を取消す。
抗告人の氏「山本」を「大木」に変更することを許可する。
理由
一 抗告の趣旨及び理由は、別紙のとおりである。
二 本件記録によれば、抗告人は父内田良男と母稲村左知子との間の非嫡出子であるが、幼時山本荘吉、同おせん夫婦の養子となつて山本の氏となり、その後更に昭和三二年六月二〇日に大木幸夫、同栄夫婦と養子縁組して大木の氏となり、それ以来大木の氏を称してきたものであるが、昭和五二年八月二三日付でその養子縁組を協議離縁により解消したため、もとの山本の氏に復したものであること、右協議離縁は養親との間に格別不和、反目を生じたからではなく、養父大木幸夫は学友内田良男が死亡し遺児となつた抗告人に同情し、これを引取り実子との間に区別なく育てるために養子としたが、成長して抗告人が○○工業高校を卒業し、二級建築士の資格を得て建築関係に勤め、昭和五二年一〇月三日婚姻し、独立生活するのを機に協議離縁するに至つたのであつて、相互に今後とも親交を望み、特に抗告人は大木幸夫に対し恩義を感じ「大木」の氏を名乗つて名をあげ恩義に報いたいと思つていること、抗告人は八歳のときより二〇年余「大木」の氏を名乗り、前記学校卒業後勤めた○○建設株式会社やその後転職した○○工務店での営業関係は「大木」の氏でとおり、離縁により復した「山本」の氏では、これまでの社会的活動の継続に困難を感じていることが認められる。
右事実によれば、抗告人は離縁によつて復氏した「山本」の氏は幼時に使つたに過ぎず、右山本の氏より、幼時から長年月にわたり名乗つてきた「大木」の氏に改めることに切実な必要を持つており、しかも「大木」の氏を名乗ることについてもと養親の意に反することもない。本件申立にはやむを得ない事由があるということができる。
よつて、これと異なる原審判を取消し、本件申立を認容することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 村瀬泰三 裁判官 林義雄 高田政彦)
抗告理由書<省略>