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大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)1303号 判決 1978年12月13日

控訴人

甲田正男

控訴人

甲田秋子

右両名訴訟代理人

曽我乙彦

外二名

被控訴人

甲田はるこ

右訴訟代理人

北尻得五郎

外五名

主文

原判決を取消す。

本件訴を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。

事実

第一  申立<省略>

第二  当事者の主張、証拠

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  控訴人らの主張

控訴人らは、昭和五三年七月二七日協議離婚の届出をして本件取消請求の目的たる離婚を解消させた。婚姻取消と離婚とは婚姻を解消させる効果では同一であつて取消を求める必要性は消滅したから、被控訴人の本訴請求は却下すべきである。

二  被控訴人の主張

控訴人らが昭和五三年七月二七日協議離婚した事実は認める。

三  証拠関係<省略>

理由

一<証拠>によると、次の事実を認めることができる。

1  被控訴人と控訴人甲田正男は、昭和三二年六月三日離婚届出をして夫婦となり、右両名の間には昭和三二年九月二日長女夏子が、昭和三五年二月二二日長男正一が出生した。

2  控訴人甲田正男は、昭和四七年三月二一日大阪市阿倍野区長に対し被控訴人との協議離婚届を提出し、受理された。

3  控訴人らは、同年七月二二日同市東区長に対し離婚届を提出し、受理された。控訴人らの間に昭和四八年五月四日長男伸一が出生した。

4  被控訴人は、前記2の協議離婚は無効である、すなわち、被控訴人は控訴人甲田正男に欺罔されて昭和四七年二月一四日ごろ離婚届用紙に署名捺印して同控訴人に渡しその後欺罔されたことに気付いて同月二二日控訴人に対し離婚の意思及び離婚届の委託を撤回したのであるが、同控訴人はこれを無視して右離婚を提出したものであると主張して、昭和四八年ごろ大阪地方裁判所に対し離婚無効確認の訴を提起したところ(同庁昭和四八年(タ)第一五八号事件)同裁判所は昭和五〇年六月一〇日被控訴人の右主張を認めて被控訴人と同控訴人の協議離婚が無効であることを確認する旨の判決を言渡した。同控訴人は、右判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したが(同庁昭和五〇年(ネ)第一一五四号事件)、同裁判所は昭和五二年一月二八日控訴棄却の判決を言渡し、さらに最高裁判所に上告したが(同庁昭和五二年(オ)第五九二号事件)、同裁判所は同年九月二六日上告棄却の判決を言渡し、同日前記協議離婚無効の判決が確定した。

5  被控訴人は同年一〇月一五日確定判決に基づいて戸籍訂正の申請をし、被控訴人を同控訴人の妻として回復する戸籍の記載がされた。

6  控訴人らは、昭和五三年七月二七日長男伸一の親権者を被控訴人甲田秋子として協議離婚の届出をした。

以上の事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

二ところで、重婚の場合に後婚が離婚によつて解消したのちでもなおその取消を請求することがきるかどうかについては明文の規定はないが、民法七四八条一項によると婚姻取消の効果は将来に向つて生ずるにとどまるので、後婚が離婚によりすでに解消しているときは取消を請求する利益はないものと解すべきである。

これを本件についてみると控訴人甲田正男は被控訴人と婚姻中であるにもかかわらず重ねて控訴人甲田秋子と婚姻したのであるから、被控訴人は控訴人らの後婚が継続していた間は民法七四四条二項、七三二条によりその取消を請求することができたのであるが、控訴人らの後婚が協議離婚によつて解消した昭和五三年七月二七日以降はその取消を請求する利益を失つたものといわなければならない。

三そうすると、被控訴人の本件訴は不適法として却下すべきところ、これと異なる原判決は不当である。よつて本件控訴は理由があるから、原判決を取消して被控訴人の訴を却下し、本件記録によれば、原判決が言渡されたのは昭和五三年七月一八日であり、控訴人らの協議離婚はそののちにされたものであるから、訴訟費用は民事訴訟法九六条、九〇条、九三条により第一、二審とも控訴人らに負担させることとし、主文のとおり判決する。

(川添萬夫 吉田秀文 大石一宣)

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