大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)2106号 判決 1979年10月19日
控訴人
森忠司
右訴訟代理人
徳田勝
被控訴人
糠野喜美恵
被控訴人
小田静技
右両名訴訟代理人
森川清一
同訴訟復代理人
柴山正美
主文
原判決を取消す。
本件訴を却下する。
訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人らはいずれも訴外京都製氷冷蔵株式会社の株主でないことを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。<以下、事実省略>
理由
控訴人の本件訴は、控訴人が訴外会社の株式総数五万株中四万七五〇〇株を有する株主であることを前提として、被控訴人らを相手どり、被控訴人らが右会社の株主名簿の記載にかかわらず、その株主でないことの確認を求めるものである。
ところで、確認訴訟は、原告の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不安定が存在し、これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが法律上必要かつ適切であり、訴訟物たる権利又は法律関係を判決により確定することによつて、原告の有する権利又はその法律上の地位に対する危険又は不安定が法律上即時に除去される場合に限り許されるものであるが、たとえ、本件訴につき請求認容の判決が確定しても、請求の趣旨から明らかなように、控訴人・被控訴人らの間において控訴人がその主張のように右会社の四万七五〇〇株を有する株主であることが確定するものでない(この点において、最高裁昭和三五年三月一一日判決・民集一四巻三号四一八頁は事案を異にし本件には適切でない)し、また、このような訴に対する判決は当事者でない右会社に対し効力を及ぼさないので、被控訴人らが右会社に対し自己が同会社の株主である旨を有効に主張することを妨げず、本件訴は控訴人の主張する株主の地位に対する危険ないし不安定を法律上即時に除去しうるものではないといわなければならない。
したがつて、本件訴は訴外会社の株主の地位をめぐる関係者間の紛争解決のため有効適切なものではなく、即時確定の利益を欠き、不適法な訴として却下を免れないものである(最高裁昭和四二年二月一〇日判決・民集二一巻一号一一二頁参照)。
よつて、これと趣旨を異にする原判決は相当でないので、これを取消し、職権をもつて本件訴を却下し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(仲西二郎 高山晨 大出晃之)