大判例

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大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)649号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。

訴外福井佐兵衛は、かねて本件店舗(床面積10.11平方メートル)をその所有者である訴外盛岡清孝外一名から賃借していたが、盛岡らの承諾を得ることなくこれを控訴人会社に転貸していたところ、控訴人会社は福井の同意のもとに昭和四四年二月二一日被控訴人に右賃借権を代金三〇〇万円で売渡しその代金を受領したこと(右賃借権の売買と代金授受の事実は当事者間に争いがない)、そして被控訴人は前同日あらためて福井の代理人九鬼某と本件店舗の賃貸借契約を結び期間は同四七年二月二〇日まで三年間、賃料月額四万五〇〇〇円、保証金一五〇万円と約定し、将来大阪市の施行する都市計画による市街地開発事業が行われるときは本件店舗を無条件で明渡すが、同事業により新ビルが建築されたときは再契約をするとの特約を付したこと、ところで、控訴人会社とその代表取締役をしていた控訴人松浦及び福井の代理人九鬼は、被控訴人に対する前記賃借権の譲渡ないし同店舗の賃貸にあたり、本件店舗が盛岡らの所有であることを知りながらこれを秘し、その所有者が福井であるかのごとく装つていたので、控訴人はこれを信じ右各契約をしたこと、被控訴人はそのころ福井に前記保証金を支払つたうえ控訴人会社から本件店舗の引渡を受け、同所で「大人のおもちや」の店を開き、その営業を始めたが、その後盛岡らは昭和四五年一〇月ごろ本件店舗の無断転貸の事実を知り、直ちに被控訴人に対し右店舗の明渡を求める訴訟を提起し、一、二審とも勝訴しその判決が確定したこと、ところが強制執行まではされなかつたので被控訴人はその後も引続き右店舗で前記営業を継続していたところ、その間、前記市街地開発事業が進められ本件店舗が撤去されることとなり、被控訴人は昭和五〇年一二月末日ごろ同店舗から退去したこと、ところで同人は同店舗につき、所有者に対抗できる賃借権を有していなかつたので、同店舗跡地付近に新築されたビルに入居する資格を取得することができず本件店舗から退去したが、その際大阪市から立退料の名目で六九〇万円の支払を受けた(被控訴人が本件店舗を退去するにあたり、大阪市から立退料として六九〇万円を受領していることは当事者間に争いがない)こと、なお右日時ごろにおける新築さるべきビルの建物賃借権価格は3.3平方メートル当り二〇〇万円と評価されていたこと、がそれぞれ認められる。

<証拠判断略>また、本件店舗を被控訴人に賃貸したことにつき、前記盛岡らから黙示の承諾を得たとの控訴人らの主張を認めるに足る証拠はない。

二被控訴人は、控訴人らが本件店舗の所有者を詐り同店舗の賃借権を譲渡したため、被控訴人は同店舗の賃借権を取得し得ず右店舗の賃借権の買受代金三〇〇万円相当の損害をこうむつた、と主張するので検討する。

相手方の欺罔によりかかる瑕疵のある賃借権(転借権)を譲受けた者が、所有者に対抗できないため最初から貸借建物に入居できないような場合は、右賃借権の譲受代金全額が譲受人の蒙つた損害であるというべきであるが、本件のように譲受人が一たん賃借建物に入居した後これを明渡すにつき立退料等の名目で金銭の支払を受けたような場合は、特段の事情のない限り右賃借権の譲受代金(瑕疵のない賃借権価格)から右立退料等の名目で支払を受けた代金を控除した金額がその損害であると解すべきところ、さきに認定したように被控訴人は控訴人から本件店舗の賃借権の譲渡を受けて直ちにこれに入居し、その後昭和五〇年一二月大阪市の施行する大阪駅前の市街地開発事業の実施のため右店舗建物が撤去されるまで七年近くの間右店舗を使用して収益を挙げたのであり、しかも所有者に対抗出来ない賃借権であるため新築されるビルに入居することができなかつたとはいうものの(若し入居資格があつても新築ビルでは「大人のおもちや」販売のような営業は到底許されないであろう)、右店舗からの退去に当り大阪市より立退料の名目で当時の新築ビルの正当な賃借権価格に相当する六九〇万円の支払を受けたのであるから、被控訴人には結局損害はなかつたことに帰するものというべきである。

三以上のとおりであるから、被控訴人の本訴請求は理由がないので失当としてこれを棄却すべきである。

よつて、右と結論を異にする原判決を取消し、被控訴人の本訴請求を棄却し、民訴法三八六条、八九条、九六条を適用して主文のとおり判決する。

(谷野美俊 首藤武兵 丹宗朝子)

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