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大阪高等裁判所 昭和53年(行コ)39号 判決 1979年2月27日

神戸市兵庫区上沢通一丁目三番三号

控訴人

樫本定雄

神戸市兵庫区水木通二丁目一番四号

被控訴人

兵庫税務署長 倉松常雄

右指定代理人

平井義丸

塩津英雄

上田富雄

竹見富夫

角田則彦

平木正行

吉岡和彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  本件を神戸地方裁判所に差し戻す。

との判決。

二  被控訴人

主文同旨の判決。

第二  当事者双方の主張は、次のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

一  控訴人の主張

控訴人は、所有不動産について本件賦課決定処分された税金滞納による差押を受けているので、本件につき国税不服審判所長に審査請求をしていると延滞税がかさんで著しい損害を蒙ることになるから、本件は国税通則法一一五条一項一号、三号所定の審査請求についての裁決を経ることを必要としない事由がある場合に当る。

二  被控訴人の主張

本件は準備手続を経ており、控訴人の右主張は準備手続において提出されていないから許されないし、控訴人主張の右事情は国税通則法一一五条一項一号、三号には該当しないものである。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件訴は、いずれも不適法であるから、これを却下すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり訂正、附加するほか、原判決理由に説示するところと同じであるから、これを引用する。

1  原判決五枚目表五行目の「そうすると」以下八行目までを削除する。

2  同五枚目表五行目の次に以下を加える。

控訴人は、本件につき国税通則法一一五条一項一号、三号所定の事由が存する旨を主張する。

被控訴人は、右主張は準備手続において提出されていないから許されない旨主張するが、右主張は職権をもって調査すべき本件訴の適法要件に関するものであるから、被控訴人の右主張は採用できない。

そこで控訴人の右主張の当否について判断する。

控訴人は、本件賦課決定処分に対して審査請求をしていないのであるから、同法一一五条一項一号所定の事由がある場合に当らないことは明らかである。また、控訴人主張の、所有不動産について本件賦課決定処分された税金滞納による差押を受けているとの点は、賦課決定処分に対する審査請求がされると、同法一〇五条一項但書により、差押財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立についての裁決があるまですることができないこととされているから、所有不動産の差押を受けたからといってこのことだけでは審査請求についての裁決を経ることによって著しい損害を生ずる場合には当らず、同法一一五条一項三号に該当しないものというべきである。次に、控訴人主張の、延滞税がかさむとの点は、本件賦課決定処分に対する審査請求により右処分取消の裁決がなされれば、延滞税が賦課されることもないのであるから、このことも同条同号に該当する事由にならないことも明らかである。そうすると、他に同法一一五条一項但書所定の控訴人が本件賦課決定処分に対する審査請求についての裁決を経ることを要しない事由があったことの主張のない本件賦課決定処分取消の訴は、不適法であるといわねばならない。

二  よって、控訴人の本件訴をいずれも却下した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 唐松寛 裁判官 山本矩夫 裁判官 平手勇治)

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