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大阪高等裁判所 昭和53年(行コ)49号 判決 1982年3月10日

控訴人(被告) 堺市長

訴訟代理人 高須要子 外四名

被控訴人(原告) 日本絨氈株式会社

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決に対する訂正、付加

1  原判決二枚目表九行目の「二四」の次に「の土地(地積四七〇二・三〇平方メートル、以下「本件土地」という。)上に」を加え、同裏六行目から七行目にかけての「その敷地(四、七〇二・三〇平方メートル)」を「その敷地である本件土地」と改める。

2  同三枚目裏三行目の「本件建物の」の次に「敷地である本件土地の」を、同四行目の「貸付けを受け」の次に「、本件土地とともに本件建物を右事業の用に供し」をそれぞれ加える。

3  同四枚目表二行目の冒頭から同三行目の「(事業所用家屋)」までを「旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号にいう当該事業の用に供する施設とは、事業に係る事業所税の課税客体である事業において当該事業の用に供する施設(工場等の建物又はこれらの付属設備)」と、同四行目の「建築」から同五行目の「建築」までを「取得、設置されたものをいうのであつて、その施設が高度化資金の貸付けを受けて取得、設置」と、同六行目の「条項」を「施設」とそれぞれ改める。

4  同四枚目表八行目の「課税容体」から同九行目の終りまでを「課税標準が資産割にあつては事業所床面積のみであつて、」と改める。

二  当審における控訴人の主張

1  控訴人は、原審において、被控訴人の「本件土地は、被控訴人が訴外日本敷物団地協同組合を介して訴外中小企業振興事業団から中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ所定の資金を借り入れて取得したものである。」との主張を認めたが、右は錯誤に基づくものであり、かつ真実に反するからこれを撤回する。

2  本件土地は、右組合が中小企業近代化資金等助成法(昭和四二年法律第五六号による改正前のもの。以下助成法という。)に基づき大阪府から貸付けを受けた資金により取得したものであり、被控訴人は、右組合から貸付けを受けた金員を組合に完済するまで本件土地を組合から無償で借受けているところ、旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号は中小企業振興事業団法に基づく高度化資金の貸付けを受けて当該事業を実施する場合における当該事業の用に供する施設につき事業所税を非課税としているのである。したがつて、助成法に基づく高度化事業に対する貸付けによる場合は、右地方税法の条項に定める非課税範囲には該当しないのである。

三  当審における被控訴人の主張

1  当審における控訴人の主張1の自白の撤回には異議がある。

2  同2のうち本件土地が訴外日本敷物団地協同組合において助成法に基づく貸金資金により取得したものであるとの事実は認めるが、その余の主張は争う。

3  そもそも本件の問題点は、右組合が本件土地取得に関連して中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ所定の資金の借入れを受けたか否かという点にあるが、右組合は、本件土地を含む工場等集団化事業のため団地用地の取得に伴い、昭和四三年大阪府から上下水道敷設、汚水処理施設等の工事費として右イ所定の資金の借入れを受けているのである。

4  旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号が定める非課税の要件は、要するに、(1) 中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ又はロの中小企業構造の高度化に寄与する事業で政令で定めるものを行う者が、(2) 都道府県又は中小企業振興事業団から同号イの資金の貸付けを受けて当該事業を実施する場合の二点につきるわけであり、前記二二号にいう「当該事業の用に供する施設で政令に定めるもの」とは事業所税の課税標準が資金割にあつては事業所床面積であることに対応せしめたものであり、政令が同号の施設を「工場、店舗、倉庫若しくは共同計算センターその他の共同施設又はこれらの附属設備で中小企業振興事業団法二条に規定する中小企業者の事業の用に供するもの」としたことをもつて本件建物の全床面積が非課税床面積に該当しないとする控訴人の主張は誤りである。

四  当審における証拠関係<省略>

理由

一  請求原因(一)及び(二)の各事実については、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件建物の右床面積が事業に対して課する事業所税(事業に係る事業税)の資産割での課税標準となる事業所床面積に該当するかどうかについて検討する。

1  本件建物は、被控訴人が民間金融機関から借入れた資金で建築され、被控訴人の事業の用に供されているものであること及び本件建物の敷地である本件土地そのものは、訴外日本敷物団地協同組合が助成法に基づき大阪府から貸付けを受けた資金により取得したものであつて、右取得が中小企業振興事業団法に基づく資金によるものでないこと、以上の各事実については当事者間に争いがなく(これと異る本件土地の取得及びその資金についての被控訴人の主張に対して、控訴人は、原審で自白し、当審で右自白の撤回を求めるところ、右自白が真実に反することは、原本の存在と成立に争いのない乙第一五、第一六号証、当審証人木村孝之助の証言と右当事者間に争いのない事実に徴してこれを認めることができ、また右認定事実から右自白が錯誤に基づくものであることもこれを推定することができるから、控訴人の右自白の撤回は許される。)、同組合は、本件土地を含む工場等集団化事業のための団地用地の取得に伴い、昭和四三年に大阪府から上下水道敷設、汚水処理施設等の工事費として高度化資金の借入れを受けていること及び被控訴人は、同組合から貸付けを受けた金員を同組合に完済するまで本件土地を同組合から無償で借受けていること、以上の各事実については、原本の存在と成立に争いのない乙第二一、第三七、第三八号証、前記証人木村孝之助の証言に弁論の全趣旨を併せて、これを認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。

2  右判示事実を前提として、控訴人は、本件建物自体が高度化資金の貸付けを受けて建築されたものでない以上、本件建物の床面積は右課税標準となる事業所床面積に該当する旨主張するのに対し、被控訴人は、前記組合が本件建物の敷地である本件土地を含む同組合の団地用地の取得に伴う上下水道敷設、汚水処理施設等の工事費用として高度化資金の貸付けを受けていることを事由に、本件建物が旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号に規定する非課税施設に該当する旨主張する。しかして、旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号は、「中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ又はロの中小企業構造の高度化に寄与する事業で政令で定めるもの(以下高度化事業という。)を行う者(以下高度化事業者という。)が、都道府県又は中小企業振興事業団からイ又はロの資金の貸付け又は施設の譲渡しを受けて当該事業を実施する場合における当該事業の用に供する施設で政令で定めるもの」にかかる事業所床面積及び従業者給与総額に対しては事業に係る事業所税を非課税とする旨規定しているが、これを中小企業振興事業団法二〇条一項二号に照らしてみると、右規定は、要するに高度化事業者が都道府県又は中小企業振興事業団から同号イの資金の貸付けを受け、又は同号ロの施設の譲渡しを受けて高度化事業を実施する場合における当該事業の用に供する施設で政令に定めるものにかかる事業所床面積及び従業者給与総額に対しては事業に係る事業所税を非課税とする趣旨であるから、同号イの資金の貸付けを受けた高度化事業者も同号ロの施設の譲渡しを受けた高度化事業者も右非課税取扱いについては同等同列とされていることが明らかである。すると、高度化事業者が都道府県又は中小企業振興事業団から譲渡しを受けた同号ロの施設のうち高度化事業の用に供する施設で政令で定めるものを用途非課税施設としていることに対応し、高度化事業者が都道府県又は中小企業振興事業団から同号イの資金の貸付けを受けて高度化事業を実施する場合においても、当該事業の用に供する施設で政令で定めるものそれ自体が右貸付けを受けた資金で設置されたものである場合に限り用途非課税施設となるものと解するのが相当である。

3  ところで、被控訴人は、訴外日本敷物団地協同組合が本件土地を含む工場等集団化事業のための団地用地の取得に伴う上下水道敷設、汚水処理施設等の工事費用として大阪府から中小企業振興事業団法二〇条一項二号イの資金の貸付けを受けている旨主張するが、旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号にいう高度化事業の用に供する「施設で政令で定めるもの」とは、同法施行令五六条の三四第二項によると、「工場、店舗、倉庫若しくは共同計算センターその他の共同施設又はこれらの附属設備」で高度化事業の用に供するものであることからすると、要するに、建物又はその附属設備であるから、右組合が大阪府から前記イの資金の貸付けを受けたとしても、本件建物が右資金の貸付けを受けて設置されたものでない以上、本件建物は事業に係る事業所税の非課税施設ということはできない。

4  そうすると、本件建物が旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号に該当する施設でないとして、同法条による非課税の扱いをしないでなした控訴人の本件更正処分は、正当であり、右更正処分の取消を求める被控訴人の請求は、理由がないから棄却すべきであり、右請求を認容した原判決は、失当であり、本件控訴は、理由がある。

三  よつて、原判決を取消し、被控訴人の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 朝田孝 富田善哉 川口冨男)

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