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大阪高等裁判所 昭和54年(く)140号 決定 1979年12月07日

住居

京都市山科区御陵鴨戸町四〇の一 コーポみくら一階一号

調理師

魚住邦雄

右の者に対する刑執行猶予言渡取消請求各事件(大阪地方裁判所(む)第五五一号、五五二号)について、大阪地方裁判所が昭和五四年一一月二八日にした各取消決定に対し弁護人から各即時抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告をいずれも棄却する。

理由

本件各抗告の趣旨は、弁護人高木清作成の即時抗告申立書(二通)に記載のとおりであつて、要するに、昭和五一年五月一七日言渡しの刑執行猶予を取消した点については、被請求人の遵守事項不遵守の情状は重いといえず、昭和五〇年一二月五日言渡しの刑執行猶予を取消した点については、刑法二六条の三にいう「取消シタルトキ」の要件が充たされておらず、かつ、被請求人に対して口頭弁論の機会を与えられていない、というのである。

そこで、まず昭和五一年五月一七日言渡しの刑執行猶予に関して調査するに、被告人は、無免許運転の罪により同日懲役三月、四年間刑執行猶予、保護観察付の刑を言渡されながら、昭和五三年一月二一日再び無免許運転に及んでいわゆる引き逃げを伴う業務上過失致死傷事件を惹起したほか、その前後にも無免許運転をし、未確定ながら懲役刑の実刑判決を言渡されるに至つたものであり、しかも、保護観察当初から担当保護司宅を訪問せず、再三の指示にかかわらず指導監督の呼出しにも応ぜず、無届けの転居を繰り返していたのであるから、執行猶予者保護観察法五条所定の遵守事項に違反し、かつ、その情状が重い場合に該当することは明らかである。

次に、昭和五〇年一二月五日言渡しの刑執行猶予に関して検討するのに、刑法二六条の三の趣旨に徴すると、同条による刑執行猶予取消決定が効力を生じるには刑法二六条又は二六条の二の規定による刑執行猶予取消決定の確定を待たなければならないが、その決定を行うこと自体は必ずしも刑法二六条又は二六条の二の規定による取消決定の確定を待つ必要はなく、これと同時に行うことも許されると解するのが相当である。また、刑法二六条の三の規定による取消決定をするについて口頭弁論を経る必要のないことは、刑事訴訟法三四九条の二の規定に照らして明らかである。なお、この事件に関しても被請求人の意見が徴されていることは、記録上明白であるから、この点を論難するかのごとき所論は失当である。

よつて、本件各抗告はいずれも理由がないので、刑事訴訟法四二六条一項により主文のとおり決定する。

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