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大阪高等裁判所 昭和54年(行コ)30号 判決 1980年6月27日

控訴人(附帯被控訴人、以下たんに控訴人という)

浜田送風機株式会社

右代表者

浜田三郎

右訴訟代理人

柴多庄一

大野康平

被控訴人(附帯控訴人、以下たんに被控訴人という)

東淀川税務署長

大室勝

右指定代理人

上原健嗣

外三名

主文

一  本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一<省略>

二控訴人は、本件和解金一、五〇〇万円は本件土地の取得価額に算入すべきではなくて、損金に算入すべきである旨反論するので、判断する。

およそ裁判上の和解は、私的紛争について当事者双方の互譲により成立するものであり、土地の売買契約による代金の一部未払の場合における土地所有権の譲渡の成否をめぐつて紛争となつた訴訟の係属中において成立した和解であつても、その和解金は常に固定資産たる係争土地の取得価額であるとは限らないけれども、和解において、係争土地の所有権を取得時効により終局的確定的に当事者の一方たる買主に帰属させることによつて、多年にわたる紛争をすべて解決するため和解における所有権帰属者が相手方に和解金を支払うのと引換えに、相手方が係争土地の右時効取得を原因とする所有権移転登記手続をする旨の和解が成立し、和解条項が履行されたような場合には、その和解金はその不動産取得の対価としての取引代金それ自体ではなく、不動産の帰属に伴う紛争解決のための費用を包含するものであるけれども、なお不動産取得に付随する費用として支出したものであり、法人税法二二条二項にいう益金に該当するものと解すべきである。これを本件についてみるに、<証拠>により認められる、控訴人が訴外渡辺らの先代との間に昭和一八年六月一四日成立した本件土地の売買契約による売買代金二万円のうち金一万円を支払つたのみで、残代金一万円の支払をしないまま長期間経過し、本件和解時たる昭和四八年一一月一日に至つた事実、別件訴訟の控訴審判決及び本件和解裁判所の原審判決において、控訴人が本件土地の所有権を時効により取得した旨認容された事実、右売買契約の当事者ないしその承継人間において本件土地をめぐる多年の紛争を本件和解により解決することとし、その方法として本件土地を控訴人の完全な、かつ終局的な所有に帰属させ、訴外渡辺らにおいて支出した固定資産税等の清算をする意味も含めて、控訴人が訴外渡辺らに本件和解金一、五〇〇万円を支払うのと引換えに右訴外人らから本件土地の所得権移転登記手続をうける旨の本件和解が成立しその履行を終つた事実、昭和四五年九月当時において控訴人が本件土地を買取るものと仮定した場合の適正価額が金三、七九二万余円であつた事実等、本件和解に至るまでの経緯に本件和解条項を合わせ考えると、本件和解金(ただし、前認定の固定資産税等の換算額を控除した後の金額)は損金ではなくて、資産たる本件土地の完全かつ確定的な譲渡をうけるために支出した益金であると認めるのが相当である。

なお、控訴人は、本件和解金のうち本件土地について訴外渡辺らにおいて支払つた固定資産税等の額を、本件和解時の額に換算する方法としては、固定資産税標準額の変動率によるべきである旨反論するけれども、右反論のような方法によるべきことの法的根拠がないから、合理的にして相当と認められる方法であれは他の方法によることも許されると解すべきであるところ、固定資産課税標準額は徴税目的のために決定される額であり、その変動上昇率は現実の土地価額や一般物価の変動上昇率に比例するものではなく、その限りにおいて消費者物価指数による変動上昇率の方が合理的妥当性があるから、被控訴人の採用した消費者物価指数比率方式が不当であるとはいえない。

従つて、控訴人の反論はいずれも失当であつて採用できない。<以下、省略>

(下出義明 村上博巳 吉川義春)

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